見得ぬ思惑 2
円環のドラゴン編第九話目となります!
では本編へGO!
女神も元勇者なのだろうという推測事態は俺ジャック・ロウもまた割と早い内に推測として考えていた仮説だったわけだが、やはりそれで正解だったようだ。
最もファリーダ曰く証拠がしっかりと残っているわけじゃ無く、語り継がれてきたドラゴン族の伝承の中にそれは残っているのだとか。
それは流石に見せて欲しいと言うとファリーダは「良いですよ」と笑顔で答えた。
俺は断られると思っていたので意外そうな顔をしてしまったが、幸い俺の頭部の事情上バレることは無かったが、アンヌだけは俺の表情を呼んだのか代わりに「意外そうな顔をしているでしょ?」と聞いてくる。
言わなければバレないのにと不満げにして明後日の方向へと顔を向けつつ歩いていると、ディラブはモンスターを探すようにキョロキョロしている姿を発見してしまった。
探すな。探すな。
探して突っ込んでいこうとするな。そして、大斧を振りかざして人一人分のトカゲ型のモンスターの体へと振り下ろすな。
なんでそんなに元気一杯なんだよ…あの密林を歩いてどうして元気なんだ?
「本当に元気よね…別に良いけど。あの様子なら当分は一人で暴れ回っているんじゃないかしら?」
「じゃったら儂等は暇させてもらおう。手こずったらジャック辺りが手伝いに行くじゃろうに」
「俺一人に押し付けるなよ。他にも行けよ…」
大きな山、真ん中が綺麗に真っ二つにされているようで、その間に細い川が通っているのだが、正直に言えば川が山を割いたとは思えなかった。
俺は魔術で『遠視の術』を使って双眼鏡替わりに山肌を観察する。
何か攻撃で割いたにしてはそのような感じはしないが、しかし、荒れているあの断面の様子では川で削ったわけではなさそうだ。
やはり先頭の結果なのだろうか?
と言うか、ドラゴン族通しが本気を出した喧嘩をしてああなったのならと考えた所で俺は足元から感じる魔力をはっきりと感じた。
どうやらこの足元にダンジョンがあるようで、この辺りがダンジョン化している理由もこの地下が理由なのだろう。
俺は足元を何度か靴で叩きながら衝撃を使った広範囲索敵魔術を使って足元を探って絶句する。
その結果足を止めてしまったので、先んじてモンスターと戯れているディラブ以外が俺の方を見る。
アンヌが代表して「どうしたの?」と聞いていた。
「この地下…規模の大きい迷宮型のダンジョンがある。結構大きいぞ」
「在りますよ。良く分かりましたね。流石ナーガ族。この地下にはホビット族と共同で作った採掘場の跡地を利用した修練場があるはずです」
「え? ホビット族ってここに来たことあるの?」
「ええ。はい。ホビット族は至る所の至る歴史に名を残していますよ。物作りと言えばホビット族以外に居ませんからね。多分関わっていないのは中央大陸ぐらいでしょう」
「ディラブには内緒よ。行くとか言い出したら面倒だから」
「大丈夫ですよ。出入口は全く別の所にありますから。この辺りのダンジョン化の原因ではあっても出入り口までがこの場所にあるわけではありません」
「ならじゃが、あの山もそのダンジョンが原因かのう?」
「はい。あの山の中もダンジョンになっているそうで、昔は何か兵器を作っていたと聞いています。もう使えなくなってしまっているそうですが」
「そう考えるとさ…俺達ホビットが言ったらいけないんだろうけど、馬鹿げたものを作ったよな~」
「ねえ~私やネリビットがこれを作れって言われたら絶対嫌だもん。ていうか無理だと思います」
馬鹿げた建築物を作る辺り流石昔のホビット族なのだと感心しつつ、俺は再び歩き出し、ディラブはそんな俺達から離れすぎないようにと絶妙な距離感を維持しつつ戦っている。
まあ、あいつが戦っている間に俺達は一歩でも前に進ませてもらおう。
「本当にオーガって…皆あんな感じで戦闘狂なのかしら?」
アンヌが呆れているような声を発するが、流石にそれは無いだろうと俺は否定しておいた。
ていうかお前はオーク大陸でオーガ達を見てきただろうに…すっかり脳裏から忘れているようだ。
まあ、興味の無い大陸や趣味に合わない場所を積極的に記憶しようとはしていないだけなのだろうけれど。
「意外と早く進んでいるので夕方には到着できそうですね。ディラブさんが周りのモンスターを駆逐してくれているので余計に早く出来そうです」
「ジャックが魔術で自動迎撃してくれたら更に早くなりそうじゃな」
「爺を攻撃対象に入れても良いのならやろうか?」
「ごめんなさい」
「楽をしようとすんなよな~爺ちゃん」
「着いたらまず長老さんにお話を聞く感じですかね? 流石に今日いきなり勇者の剣を完成させる儀式のようなものは出来ないでしょうし」
「出来ない事はありませんが、まあ明日の朝一番に行うのが一番だと思います。これは私も参加しますので」
「どんな儀式なんだろうな~ちょっと気になるかも」
「説明が難しいんです。すみません」
「ネリビットは無理言わないの! すみません」
「いいえ。ただ…皆さん何かしらの形で聞いたと聞いていますが、武具には領域と呼ばれる次のステージがあることは知っていますよね?」
「はい。でも、伝説級クラスの武具しか出来ないんだしたっけ? この中だとディラブお兄ちゃんとジャックお兄ちゃんの二人だけだとか?」
「ええ。勇者の剣の領域を解放する手続きです。最もそれが出来るのはジャック様だけですが。今までの勇者の剣の最終工程とは違いますので」
「まあ、私達はその間に観光でもしてましょう。暇だし」
良い笑顔だなぁ~と思いながら俺はジッとアンヌの方へと妬みを含めた視線を送るのだが、まるで気が付く素振りを見せないアンヌ。
すると、大興奮のディラブが戻ってきた。
「この辺のモンスターは良いぞ! 歯ごたえがある!」
「そ、そうか…俺達は楽が出来るから良いけどな」
「だが、戦う度に思うのだが、モンスターの種族と言うか属性? それに違和感がある。トカゲとか爬虫類系やオオカミのような哺乳類系しかいないのに、攻撃手段は幻影を使った攻撃が多いイメージだな」
「フム。やはりこの地下に関係しているのかな?」
「そうですね。多分ですけど。この地下にあるダンジョンは幻属性の敵、ゴースト系が多いのでしょう」
「ふぅ~ん…アルネット城塞跡地みたいな感じ?」
俺がアンヌからの問いに「だな」と返すと、ディラブが「何の話だ」と聞いてくるので先ほどまで語っていたこの地下の事を話したが、ディラブが聞きたかったのはアルネット城塞跡地の事が聞きたかったようだ。
「アルネット城塞跡地…私達が今まで見てきた中で多分最高規模を誇る最大級のダンジョン。上層十五階。下層十五階。最下層十五階の合計四十五階の最難関ダンジョン。五年に一度ダンジョンの相当と祭りを合わせた行事があるの」
「なんと!? 中央大陸ではそのようなお祭りが!?」
「ああ。在ったのう。儂は苦手な祭りじゃな。可愛い女子なんて現れん。屈強な男やムキムキの女ばかりが集まんじゃもん」
「そういうお祭りだしな。まあ、俺も参加したことは無いんだよな。アンヌはあるんじゃなかったか? 教会から強制参加させられたと聞いた」
「聞かないでよ。上層辺りで適当に呆けていただけで、特に何もしていないわよ。下層までしか行けず。最下層はお祭りでも解禁されていなかったようだけど」
「行ってみたい。参加してみたい」
「他の種族が中央大陸に行けるようになったら参加規模が凄いことになりそうですね」
「でも、面白いお祭りじゃ無さそうだよ。姉ちゃん。俺達みたいな戦闘苦手組は特に…」
「私は少し参加してみたいですね」
意外なことにファリーダはそんなことを言いながら俺達に笑顔を向けてきたわけなのだが、戦闘好きなのかもしれない。
そんなことを考えながら俺は頭の中でそういえば来年だったなと考えていた。
どうでしたか?
もう少しダンジョン話が続きますが、少しずつですが物語が進んでいきます。
では次は円環のドラゴン第十話でお会いしましょう!




