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見得ぬ思惑

円環のドラゴン編八話目となります!

では本編へGO!

 鬱陶しい密林もようやく終わりが見えてきたわけだが、しかしここまで一切モンスターに合わなかったというのは僥倖と呼ぶべきものだろう。

 お香のお陰で小さい虫もまたやってこなくなったので、一回一回処理しないで済んで良かった。

 ネリビットは最後まで俺の後ろに隠れて鬱陶しかったが、まあ年相応なのだと納得するとしてディラブだけはモンスターが出てこなかったことに不満を抱いていた。

 まあ、この辺りはディフェンダーがモンスターを駆逐してしまっているのだから仕方がない話ではある。

 正直に言えばあの遺跡がどうしようもなく気になってしまうわけなのだが、俺は考古学者ではないので遺跡のルーツなんて見ただけでは分からない。

 知り合いにも考古学者なんていないから本当に困るわけで、念の為に脳裏の端っこにでもしまい込んでおこうと決めた。

 遠くに見えてきた景色はどうやらあまり緑の多い風景には見えず、同時に奥に薄っすらと見えている小高い山が二つ、まるで双子の様にも見える。


「あの双子みたいな山が次のダンジョンなんですか? ファリーダさん」


 メイビットは不思議そうな顔をしながらファリーダに尋ねると、ファリーダは「そうですよ」とニコリと笑ってメイビットの方を見ると、その山に大きな両翼を羽ばたかせる鳥類のモンスターが見えた。

 体長は横幅だけでも五メートルはありそうに見え、ファリーダ以外の足が止まるわけだが、ディラブは物凄くテンションを爆上りさせていた。


「キタな!! これでこそダンジョンだろう!?」

「俺の方に向かってワクワクしないでくれないか? ワクワクされても困るし…荒れ果てた荒野…でもないな」

「そうですね。あそこは『双山』と呼ばれている山で、元々は一つの山だったものが、あるドラゴン族の癇癪が真っ二つにされたと聞いています」

「嫌な癇癪じゃな…何をそこまでさせるのじゃろうか…」

「お爺ちゃんも似た事出来るでしょ?」

「誰かさんも出来ると思うけどな…誰かとは言わないが…」


 俺の言葉にアンヌと俺以外が一斉にアンヌの方を見ると、アンヌは大きな声で「出来るわけないでしょ!?」と叫ぶ。

 皆で無視してそのまま歩いていくとジメジメした空気が一気に変わり乾ききった空気に変わり果てた。

 毛の短いオオカミ型のモンスターからサイ型のモンスターまでが住み着いており、場所も大きな山を除けば草木はそこそこ生えているが、所々では草木が生えていない場所も多い。

 だが、やはりどこか空気が乾いているような気がする。


「ダンジョンが連続が存在している事自体がおかしいんだけど…中央大陸では聞いたこと無いわよね?」

「無いな。と言うか、今の所他の大陸でも聞いたことが無い。だから、ドラゴン大陸ならでは何だろう」

「そうですね。ドラゴン族の中でも半分ほどはダンジョンの中で暮らしています。ダンジョンがそこまでデメリットにならないのでこうして隣接していても困らないんです」

「そうなのか…ダンジョンの中に住むって嫌だよな…」

「ジャック兄ちゃんが言うんだからよっぽどだよな…でもこの辺りは虫が少なそうだし…」


 俺は視界の端に薄っすらとサソリ型が見えた気がしたが、言ったら面倒な気がしたので黙ることにした。

 しかし、そのサソリ型に気が付いてワクワクさせているメイビットが見えた気がしたが俺は黙って無視することに。

 アンヌも気が付いたが、そもそもアンヌはその辺りは苦手意識を抱いていないので表情には出ない。

 ディラブとリアンも同じように特に大丈夫なようだし、このまま進んでも良さそうだ。

 俺は改めて日本の勇者の剣を取り出し大太刀の方の刃を抜き出してそのままそっと眺める。


「それが勇者の剣ですか…私は幼いので歴代の勇者の剣は見ていませんが、今代の勇者の剣はまた変わった形をしているようですね。ナーガの勇者は基本王道とは違うようですね」

「そのようだな。俺も歴代の逸品を見せてもらったが、ナーガは邪道、ヒューマン族は王道が多いみたいだ。勇者に精通した一族という事は君達は勇者の事もある程度知っているという事か?」

「ええ。ある程度は」

「じゃあ…先代の勇者の話は?」

「そこまで詳しいわけではありませんが…ある程度は…皆さんももう既にご存知と思いますが、基本ヒューマン族の勇者は失敗しています。ヒューマン族の勇者が失敗しナーガの勇者が成功する。これは決まったルーティンと言っても良いでしょう」


 実際ヒューマン族の勇者が失敗して死ぬと、そのままナーガの勇者が選ばれた戦う。

 たとえ成功したとしても勇者の刻印がある限り短い寿命しか得られない。


「そうです。ヒューマン族の勇者は基本長く生きられず、むしろナーガは長生きが出来る。それは元々…」


 アンヌが代わりに口を出した。


「勇者の刻印はナーガ用に作られて、ナーガの為に作られているだけで、そんなものを寿命が短いヒューマン族が運用したら肉体が持たない」

「その通りです。ヒューマン族は他の四種族とは違い基本肉体が劣っているという弱点がある。そんな勇者に無理矢理遣わせたら…死にます。分かっていて使っていたんです」

「じゃろうな。察するに勇者の刻印の運用を調べ、同時に本当に現れる真の勇者の為の調整じゃろう?」

「だな。そして、真の勇者こそが…ジャック。そして、その真の勇者が現れると、同じように現れるわけだ。かつて女神と共に戦った者達の末裔が。赤鬼のオーガ。双星のホビット。そして…君が円環のドラゴンの末裔と言うわけだな」

「…流石ですね。ジャック様のお仲間もまた素晴らしいお方ばかりですね」


 ディラブの言い分は正しいらしく、俺は今まで偶然の様に出会ったディラブやメイビットやネリビットの出会いは偶然であると同時に必然でもあったわけだ。

 それが本当に良く分かった。


「じゃあ…一つだけ教えてください。もしかして…女神もまた勇者の力を持っていたんじゃありませんか? だから死んだ?」

「………」


 ファリーダは言う…彼女ははっきりと言う…「はい」と。

どうでしたか?

女神も元勇者の一人、その辺りの設定は後に重要だったりするので覚えてくださるとうれしいです!

では次は円環のドラゴン第九話でお会いしましょう!

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