俺と私の真実
今回はアンヌとの語り回がメインとなります。
では本編へGO!
アンヌ達が海から上がるのを待ってから俺達はそのままファリーダと共に夕食へと向かい、そのまま本日止まる予定だったホテルへと直行、そこでアンヌ達にも明日の朝一番で出てそのままダンジョンへと向かう運びであることを告げると、案の定アンヌ達は不満げな表情で俺達を迎え撃った。
しかし、そんなことで時間を取りたくないので流石に俺は引く事はせず、そのまま意見を押し通す。
どうやら抵抗の余地が無い事が分かると三人は大人しく従う気にはなったようで、その日はそのまま寝ることにしたが、その前に俺はアンヌはホテルの屋上にある無いとプールへと誘う事にした。
ディラブとメイビットには事前に説明してあるので、二人からリアンとネリビットに向かって説明してもらい、俺とアンヌは水着に着替えてからナイトプールへと入った。
流石に到着して直ぐに話すのでは味気ないと思い、多少は遊んでからにしようとさっさと白と黒の縞々柄のトランクスタイプの水着に着替え、上にはパーカータイプを羽織ってからナイトプールへと出る。
此処のホテルは横幅にも大きく作られており、ちょっとしたバーも併設されており、ナイトプールと言うだけあり大人達がお酒を飲んで楽しんでいた。
ネリビットは多分来たがるのかもしれないが、残念なことにあの二人は完全に未成年なのでここには入れないだろう。
強いて言うならリアンとディラブだが、流石に大人の二人が空気を読まないで来るとは思えなかった。
俺は近くのバーのカウンター席に座ってから適当なお酒を注文し出てきたピンク色のお酒を一口だけ飲んでからふとプールの方を見る。
綺麗な色で水を明るく照らし、その周りも雰囲気を崩さないような色合いで暗すぎず明るすぎない丁度いい色合いで照らされている。
そんな中、俺はふと周りを見回していると、出入口が騒がしいと思いふとカクテルを飲みながらそっちを見ると、出入口で揉めているアンヌを発見した。
内心「あ~」と思いそのまま立ち上がり、止めている警備員に「彼女は成人しているよ」と告げ、驚かれながらアンヌは憤慨しつつ中へと入っていく。
「バーで飲むか?」
「ううん。先に泳ぐ!」
「まだ? 海で泳いだろう? 十分じゃないか?」
「良いでしょう? 聖女として活動していた時期はこんな風に遊べなかったんだもん」
どうやら今やっていることは聖女時代のストレス発散が目的であるらしく、俺はカクテルをもって近くのビーチチェアーで腰を掛けてアンヌが一通り遊んでいるのを待っていると、三十分ほどで戻ってきて青色のカクテルをもって右側のビーチチェアーに座る。
漸くゆっくり話が出来ると思ったが、その先言葉が出ない。
話す内容は色々あるが、俺は此処で俺とアンヌの関係を放そうと決めていた。
今後の事を考えると、やはり教会に関する内容をいつかは話をしないといけないわけだが、その為にはドライ最高司祭と俺達の関係は避けては通れないだろう。
どう言い訳をしながら話をするかで悩んでいると、アンヌが口を開いた。
「言い難い事なら喋らないで良いわ。アンタが苦しみながら話してほしいわけじゃないし。まだ勇気が無い。まだ覚悟が無いのなら良いわ。聞きたいわけじゃないし。それはアンタが私を思ってくれることで、話せば私達の関係が変わるかもしれない事。それで、それはきっと…貴方にとっては下らない事…でしょ?」
にっこり笑いながら俺の方を見るアンヌに対し俺は苦笑いを浮かべながらため息を吐き出した。
内容までを見抜いているとは思えないが、それでも凡その事は察しているようだ。
「だから、言い難い案件だけ覗いて話をして。突っ込んで聞かないから」
俺は俺とアンヌの関係を省いてから現状を凡その形で話した。
教会の現状と今後の可能性、そしてその先にある教会の未来を…簡単に。
「そっか…零巻ね…私ねそれが隠されている場所知っているわよ。見たことは無いけどね」
「なんで知っていながら見ていないんだよ?」
「隠されている場所の候補があるというだけよ。多分とか凡そとか…そんな感じ。前にドライ最高司祭がその隠し部屋へと向かうのを見ただけ。周りを確かめるように入っていくのを見たから知っているだけよ。多分本来の原本はあの先でしょうね…ねえ、ジャックは教会をどうしたいの?」
アンヌはまるで意を決したように俺に問いかける。
その問いかけの意味をしっかりと考えてから結論付ける。
「正直に言えばどうでも良いというのが俺の意見だ。壊れるなら壊れるでいい。でも、その先を今のうちに考えないといけない。俺とお前にはその資格と責任がある」
「そうね…その通り。でもね…私は…その責任を背負う事だけは嫌なの…縛られているようで…私は自分の生まれを知らず、誰かに利用されて生きてきた…その上で言える。今すごく楽しい。知らない種族の人達と一緒に冒険して、時に不満を言って、その上で時にこうして遊ぶ。それがすごく楽しい。でも、教会の事を考えると私は仕事をしている感じがして…嫌」
「逃げても仕方がないことはある。何時かは…何時かは…」
「ジャックだって嫌でしょ? 私達は…教会が嫌い」
否定しない。否定できない。
俺もアンヌも教会が嫌いで、大っ嫌いで、出来る事なら距離を開けて生きていきたい。
何度そんな話をしてきたのか、ずっと前からだ。
でも、俺達は教会と向き合わないといけないんだ…俺とアンヌの父親はドライ最高司祭なのだから。
逃げても仕方がないことがある。
そして…俺が考える限りドライ最高司祭が勇者の剣の製造過程を知っていることも、勇者を選別で来た理由もそういう事なら何となくわかりそうなのだ。
「何時かは向き合う必要があるんだと思うんだよ。それに今なら向き合えると思う」
「どうして?」
「言わないと分からないか?」
俺は疑問を問うと言っている意味がやっと分かったのか、ぎこちない笑いを浮かべながらもどこか心から微笑を見せる。
「何時か皆と一緒に中央大陸を回りたいよね? 回るなら何処を回る?」
「う~ん…東方人街の蘭央とか良いよな~あそこ結構好きだな。それ以外だと…」
「私は芸術の街『メルト』とか行きたいなぁ~」
「ああ。でも、俺はあそこ硬すぎて苦手だな」
「えぇ~それが良いんじゃない。それに良いじゃない。私達観光客は関係ないし」
「俺の村にも皆に泊ってほしいよな。それ以外にも俺とアンヌが一緒に通った学校がある学芸都市ドートノットとかな」
「フフ。それこそメイビットとネリビットが楽しめそうな場所だよね? ディラブは暇そうな場所ばかりだけどねぇ~」
俺は今なら言えるかもしれないと口を開こうとしたその瞬間、アンヌは「止めて」と止めた。
「何となく分かっているの。私もねその可能性をずっと考えていたの、ドライ最高司祭が私を自由にさせている理由、ジャックを追い出した本当の理由、こうして旅をして、まるでドライ最高司祭の軌跡を辿る様に旅をしている理由。嬉しいとか悲しいとかは無い。多分私はそれに対してはどっちでも良いの。でもね…私はそれはジャックからではなく本人から聞きたい。でもね…私はずっと前から何となく思っていたんだよ?」
「なんで?」
「だって…私達誕生部一緒だったんだよ?」
含みがあるような笑顔を俺に向けたアンヌだった。
どうでしたか?
次回からいよいよダンジョン突入です!
では次は円環のドラゴン第七話でお会いしましょう!




