新たな出会い 3
円環のドラゴン編四話目となります。
では本編へGO!
ドラゴン族の政府トップと階段の場を持つというのはこれから考えるとして、これからの行動パターンとしては勇者ゆかりの地へと向かい、勇者の剣の最終工程を行うという事で良いだろうという事になり、その瞬間にアンヌとネリビットとリアンはうずうずし始めていることに気が付いた。
俺は大きめにため息を吐き出してから「どうぞ」とジェスチャーで合図を出すと、三人は再び海へと向かって駆け出していく。
それを残り三人で遠い目をしながら見守っていると、ディラブが首を傾げてふと呟いた。
「あんな塩辛いだけの水の塊で泳いで何が楽しいんだ? 海辺なんて痛みやすいし良いこと無いだろうに」
「私も正直泳ぐことが苦手なのであまり好きじゃないです…ジャックお兄ちゃんは泳ぐことは出来ますか?」
「出来るが…得意じゃ無いな。と言うよりは好きじゃ無いな。足が地につかないという状況がすっきりしない」
「明日の朝出発しましょうか。此処から出発するとダンジョンを二つほど超える必要がありますし」
「? ドラゴン大陸はもしかしてダンジョンの宝庫なのか?」
「凄くワクワクしているな。鍛える事だけ考えている奴だ。まあ…俺は構わないが…ドラゴン大陸はあまり大陸全体がきちんと整備していないのかもな。必要もなさそうだが」
「そうですね。基本強く逞しく個で生きることが多いのでダンジョンを整えるような、そんなことはしませんね。ナーガもしないのでは?」
「ナーガは社会秩序を優先するからそこら辺は基本きちんと整えているさ。ダンジョンから魔物が街に向かったら大変だしな」
「ドラゴン族はその辺に疎いのかもしれませんね」
「そうですね。ドラゴン族は単一で種族を増やすのであまり家族や集団での行動が得意ではありませんね。我々の集落など一部はそういう生活をするものは多いですが、今でも一部では山奥や森の奥、洞窟の奥などに引っ込んで生活するドラゴン族は多いです」
ドラゴン族がそういう側面があるという事はずっと前から知っていたが、やはり一筋縄ではいかないようだ。
教会も勇者の剣の最終工程を行えれば十分だと考えているのだろう。
しかし、俺が今一番気になってしまっているのはこの街のにぎやかさである。普段からこの調子と言う話だが、中央大陸でもこの街ぐらい賑わっている街は見たことあるが、それでも日中賑やかというのは中々見ない。
「ドラゴン族は基本こういう場所には来ないのか? あまり人込みの中に紛れるイメージは無いが」
「そういうわけではありませんよ? まぎれてこういう場所で働いている人はいますし、金持ちの中にはこの街の別荘区画に住んでいる人もいますし。そこは臨機応変ですね。個性とも言いますが」
「あまり見ないというより、聖術で普段から人にバレない様に工夫をしているのかもな。リアンはその辺り元ヒューマン族だからこだわりが無いのかもな」
「私もありませんね。それも基本はドラゴン族次第ですから。ドラゴン族はナーガ族と同じで強靭で長生きですから。ナーガとは違う方法で再生能力がありますし」
それを聞いた俺達は黙って海でナンパしているリアンの方を睨みつける。
あいつ…自分の再生能力がありながら俺達を盾としてつかっているのか?
それを俺達に喋らないってどういう事だ?
「しかし、それでもナーガほどの再生速度ではありませんが」
「ナーガは再生能力が強い代わりにドラゴン族程肉体が強いわけじゃないし…ドラゴン族は並大抵の攻撃は傷一つつかない。本来ならあの爺を盾に使いたいんだ。でも、あの爺そこまで上手く使えないと文句を言うから今の所我慢しているだけだ」
「今の所という事は…その内盾として使うという事か」
「ドラゴン族ってあまり見ないのでリアンおじいちゃんみたいな感じかと…皆」
「あれは比較対象としてそもそも間違っているから。あれは中身は元ヒューマン族のエロ爺だ。まあ、明日から出発するとして俺達はどうする? 俺は泳ぐつもりないが?」
ディラブとメイビットも泳ぐつもりが全くないらしく、首を傾げて少し悩む素振りを見せていると、ファリーダが持っていた携帯電話が鳴り響いた。
それを取り出して誰かと少し話していると、若干しかめっ面をしたのち電話を切りこちらに向く。
「別荘地にいるドラゴン族が勇者に会いたいと言っているんですが…」
「ええ…金持ちってあまり良いイメージが無いんだけど。どんな人?」
「変わり者ってイメージですね。でも、政治に関わったことがある人で、もしかしたら今のトップについて詳しいかもしれませんね。少なくとも悪い噂は効かない人です。長老とも知り合いだったと記憶しています。いざとなったら相談してみると言いと聞いていますよ」
「じゃあ。行ってみます?」
俺は「そうするか…」と仕方なさそうに席を立ち歩き出す。
バスに乗って別荘区画の近くまで移動、そして歩いて別荘区画の入り口を守っている警備員に説明、中に入れてもらいそのまま目的地の別荘前まで辿り着いた。
インターホンを押して中に入れてもらうと、出てきた人物はぱっと見は中年女性と言った感じのドラゴン族の女性。
「良く来たのう。入ってもらおうか勇者の始祖よ」
勇者の始祖? どういう意味だ?
「勇者の始祖ってどういう意味ですか?」
「儂からは話せんな。自分で調べるといいじゃろう。お前は自分が思っている以上に重要なのだと理解するべきじゃな」
「あの…そういう話は…」
「フフ。そうじゃな。お前さん達の一族の役目。漸く果たせるというわけじゃな? まあ、入ると言い。飲み物は何が良いかな? ウイスキーからジュースまで色々あるぞ」
中へと案内されてそのまま入っていくと、何十畳もあるのかいう広さのリビングが姿を現した。
フワフワのソファに座ると同時にメイビットが腰回りに気にし始める。
ディラブがメイビットに対して「どうした?」と尋ねると、何かしゃべり難そうにしてもじもじして後喋りだした。
「いえ…結構古いソファなのに長持ちだなって…素材とか少し気になって」
「ファファファ。君の祖先が作ってくれた品物じゃよ。結構頑丈でな。メンテナンスが無くても二百年もつと言われておるよ。勝ったのは百年前じゃが、フカフカじゃろう? さて、お酒を飲むものは誰じゃ?」
俺達がお酒を飲むことを前提に語られている気がする…まあ良いけどさ。
俺とディラブがお酒、メイビットとファリーダはジュースを注文した。
「おや? ファリーダとやらは未成年か?」
「え? あ、はい。まだ成人していませんから」
「そうか。そうか。その話は聞いておらんかったのう。さて…勇者の始祖よ…知りたいことは凡そ知っておるよ。政府のトップの事じゃろう?」
「ええ。貴方は繋がりがあると聞きます」
「とはいってもそれは先代とのつながりでな? 今のトップは儂は直接の繋がりは無いわい。何せ、儂の一族は代々政府の相談役。それなりに信頼もあったのでな。今のトップからは遠ざけられておるが」
「それが分かりません。どうして遠ざけるんですか? 普通相談役に何か問題があるのならわかりますけど、そうでもないとしませんよね?」
「ファファファ。儂に問題があるかと言われるとそれは否定するが、今のトップの問題はあいつ個人の問題じゃ。儂は就任する際に「止めて置け」と止めたのじゃがな…本当に欲が強いくせに精神的に脆い奴じゃ」
「? 話を聞く限りだと失踪した原因はやはりトップ自身に問題があるというパターンか?」
「そうじゃ。ドラゴン族は基本単一で子供作る為兄妹は少ないし基本居らん、その上恋愛などまずせん。じゃが…」
「恋をしたわけだ…だが、政府のトップになろうというドラゴン族が恋愛をしたというスキャンダルを嫌がった奴は相手を捨てたわけじゃ。その上自分で振ろうとすらせず、他人を利用してのう。相手はそれが納得できなかったわけじゃ。自分を捨てながら、付き合っていたことを恥じ、勝手に振りながら他者を蹴り落としてトップに立ちながらその上それを後悔する。それを癒してもらおうと近づいてくる」
「まさしく身勝手だな…」
どうでしたか?
ドラゴン大陸の政府に関連するお話はどうするか正直今でもまだ迷っています。
では次は円環のドラゴン第五話でお会いしましょう!




