エピローグ:小さなホビットの旅立ち
双厄のホビット編最終話です。
実は前回から今回の更新までに二週間も開けたのは喉風を引いたからです。
すっかり全快したのでもう大丈夫です。
では本編へGO!
ドラゴン大陸のリゾートの街『デルカ・アル・フォース』行の船に乗る為にリンカーンシティーの隣町である港町でもあるボルまでやってきたジャック一行。
搭乗手続きを済ます為にジャック達はとりあえずフェリー乗り場まで移動する。
リンカーンシティーから港町までは列車で一本であり、高台からはっきりと見えていただけあって基本的にそこまで遠くない。
ただし、ボルの最終到着駅からフェリー乗り場までは歩いて二時間は掛かる道のりであり、直線距離ではそこまで遠くは無いが、複雑に作られた街並みと曲がりくねって進む必要がある為結果時間が掛かる。
細道が多く大きな通りは基本荷物を運ぶトラックが頻繁に出入りしており、今は首都の復興の為にと様々な人々が行き来をしていた。
ジャック達が駅から出てくるとネリビットが手元の地図でおおよその場所を指さし、道案内を元にフェリーまで歩くことになった。
「メイビットは地図は苦手かい?」
「はい…ネリビットの方が得な方で…私が使うとどうにも…どっちを歩いているのか分からなくなってしまい」
「姉ちゃんは方向音痴だもんな。あの村の中ですら良く迷子になるし」
「でもこの街は観光でやってきた人が簡単に迷子になりそうな街並みをしているよね…」
アンヌがわき道をそっと身を乗り出して眺め、そのまま通り過ぎては次のわき道を除く。
わき道一つでも奥に分かれ道が存在しており、街の区画の斜めに進んだり直角に進んだりで複雑だ。
「この街大通りだけを歩いて移動した場合歩いて何時間かかる?」
「然程変わりませんよ…多分ですけど。でも最短ルートよりは大通りを通った方が良いかも」
「それよりバス内の?」
「またアンヌは…偶には黙って歩くこともしたらどうだ? 不満を口にせず」
「なんで皆歩くことに躊躇い無いわけ!? 現代っ子なら乗り物に乗って移動したいって思わない?」
メイビットの方は「まあ…分かるかな」程度の反応だが、残りメンバーはとくには気にしない。
歩きでしか行けない場所だってあるわけだし、楽をしたいという気持ちが在れば、特に苦労してでも行きたい場所があるという気持ちも彼等には理解が出来てしまう。
「秘境に乗り物であっという間に行けたらつまらんだろう? 時に苦労していきつくことで達成感が得られると思うが?」
「おっ! ディラブが良い事言ったぞ」
「ねえ! ジャック兄ちゃん! 俺も感心しちゃった!」
「ほれ…アンヌがドスの聞いたような睨むような眼で見ておるぞ」
「そんなことよりこっちで合ってるの?」
ジャックは心の中で「アンヌが脱線させているような…」と思ったが、トラブルになるだけなので敢えて口には出さない。
ネリビットは「大丈夫だって」と言いながら曲がり角を右へと曲がり、今度は細い道を右へと移動、一旦陸橋のような橋を渡り今度は右へとさらに進んでいく。
ジャック達もいよいよ目的地に真っ直ぐに進んでいるのか分からなくなっていた。
「そういえばジュアリーさん…いつの間にか居なくなっていましたね。もう故郷に戻ったんでしょうか?」
「仕事じゃないのか? 多分じゃが…」
「仕事だろう。あれは女優なんだから。撮影で何処か出かけたんだと思うがな? そっちが本職だろう?」
「え? 暗殺業が副業なの? そっちが本職だと思った?」
「両方本職で良くないか? どっちも片手間で出来ることじゃ無いと思う。良く分からんが」
「ディラブ兄ちゃんの感覚からすればそんな感じだよね。でも、素っ気ないよね? 一緒に戦ったんだし、それに親戚だって分かったんだからもうちょっと仲良くなっても良いのに」
「苦手なのじゃろう? あまり仲良く話を聞くタイプではなさそうじゃしな…何時か出会える」
少しづつ緩やかに下っていくと目の前に見晴らしのいい広場が出てきて、広場からは少し先にあるフェリー乗り場までがはっきりと見えていた。
「この先か?」
「うん。後は…右にある階段を下って真直ぐだって」
「途中から迷子かなと思ったが…何とか行けたか」
「信頼無いなぁ~姉ちゃんじゃ無いんだから迷子にならないって! 信用しろよ!」
「はいはい。さっさと行こう。もうこのホビット大陸でやるべきことは無い」
ジャックが手を叩いて場を収め、そのまま一行は歩いてフェリー乗り場まで移動した。
到着すると同時にジャックがまずフェリーの搭乗手続きをしに入っていく。
他のメンバーは外で待機していると、他の人達がヒソヒソと彼らを見ているのが誰の目にもはっきりと分かった。
「やっぱり私達目立つよね? なんというか…あらゆる種族が一緒に行動しているんだもん」
「まあ、基本他種族同士で行動する事が無いからのう~」
「珍しいのかもしれないですね(笑)」
「良いじゃん! 険悪で行動したり、同種族同士でしか行動しないとか詰まんない!」
「同じ意見だ。それに、俺達がこうして行動していれば真似をして他の種族同士で行動しようと動く者が現れるかもしれない」
「だとしたら素敵ですね。現れると良いなぁ~」
メイビットはふとホビット大陸の中心の方へと向かって体を向け、どこか切ないような瞳で見つめる。
「やっぱり寂しい?」
「…少しだけ。でも、今はこの世界を旅してみたいっていう気持ちの方が勝っている感じです。皆と一緒ならきっと何処に行っても楽しんだろうなって!」
「俺も! 俺も! 此処まで楽しかったし! ジャック兄ちゃんが居たら退屈しないよね!」
「あれでもマシになったのよ? 昔は何かあるたびに単独行動なんだもん。絶対に群れない」
「と言うよりは勇者という役目に巻き込みたくなったんじゃないのか? その辺りは後悔だと本人も言っておったよ」
「成長で良いだろう? それよりドラゴン大陸についたらまずどうする?」
「え? 遊ぶんじゃないの!? だってリゾート地なんでしょ?」
アンヌとリアンが「うん!」と同意しているのに対し、苦笑いを浮かべるメイビット、ディラブはディラブで黙り込むだけだった。
「多分ジャックお兄ちゃんはすぐにでも次の目的地へと進みたいんでしょうけど…」
「このメンツは引き下がらんな…」
ディラブとメイビットは「やれやれ」と言う顔をしながら苦笑いを浮かべ、ジャックはそんな彼らの元へと帰ってくる。
「手続きが終わったぞ…ってなんだ?」
メイビットが代表して説明していると物凄い嫌悪感を現したような顔立ちで見つめるジャック。
しかし、引く気が無いその顔を見て抵抗するのも疲れると思い「勝手にしろ」と言ってフェリーへと足を進めていく。
内心「俺だけでも探るから良いし」と諦めているのは黙っていた。
目的地であるデルカ・アル・フォース行のフェリーに乗り込むと同時に、メイビットとネリビットが振り返り手を握り合って共に呟く。
「「行ってきます!」」
小さな双子の大きな冒険が幕を開けた。
どうでしたか?
次回からドラゴン大陸編となります。
サブタイトルは『円環のドラゴン』となります!
では次は円環のドラゴン一話目でお会いしましょう!




