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狂った物語 8

狂った物語八話目となります。

厄災のホビット戦が終わり彼にとってのエピローグです。

では本編へGO!

 ジャックが死んだ厄災のホビットを見下ろしていると、厄災のホビットは最後に力の無い笑いを浮かべながら「そんな顔をするんだな」と言う。

 ジャックからすれば自分がどんな顔をしているのか、どんな顔をして彼を見下ろしているのか自分ですら分からない。

 だが、聞こうとは全くジャックには思わなかったのだ。

 厄災のホビットを憐れんでいる自分が此処にいるかとジャック自身が思ってもそんな彼は此処には居ない。

 厄災のホビットがしてきた事を思えば決して許されざることで、それを受け入れてもいけない。


「お前達一族は受け入れたかっただけじゃないのか?」

「そんな簡単に切り捨てるな。私の闇は私達一族の闇だよ。受け入れられない世界なんていらないと切り捨てたのは初代だ。私は私が生まれた理由を知りたかっただけさ。このトラブルも所詮はそれが理由だ」


 生まれた時より呪われた存在として、周囲を不幸にし続けてきたわけだが、そんな自分はこの世界に生まれた理由が在るのではと思っていた。

 たとえどんな方法を辿っても厄災のホビットが幸せになることは無い。

 だから知りたいと願って戦い続けてきたわけだが、最後までその問に対する解が出ることは無かった。

 だが、死にゆく今となって厄災のホビット自身としてはどうでも良いと思ってしまっていた。


「あの…きっと私達の祖先は…貴方達の初代に嫉妬をしていたんだと思いますよ?」

「はぁ?」

「私ならきっとそう思うから…だってなんでも一人で出来る天才。それに対して私達は二人で一人です。二人で無いと何でもできないから」

「そうか…だから私は孤独なのか」

「アンタさ…誰かに頼れば良かったんじゃない?」

「ふ…それが出来ていれば呪われていない。結局他人を遠ざけていた時点で人生の負け犬か…」


 ジュアリーが黙って近づいてきて整った顔立ちを厄災のホビットの方へと向け、同時にそっと座り込んで話しかけた。


「そういえばアンタ…どうしてそこまでの事を知っていたの? 初代から託された書物があるんじゃない?」

「フン…あるさ」


 厄災のホビットは自らのポケットから小さいメモ帳のような冊子を取り出してジャックへと渡す。


「お前達の一族も何か託されているはずだぞ。それだけは絶対だ。答えはその冊子の最後のページにある」


 ジャックは手渡された冊子を開き最後のページを開く。


『たとえ語り継がれる真実が歪もうと、呪いが終わろうと我々の一族だけは真実を語り継がんことを…願わくば呪いが解かれないことを』


 ジャックはその一ページを見て右手の平をそっと厄災のホビットの何もない顔へと向けた。

 そして、意識を集中させるとジャックの勇者の刻印が再び発光していく。

 まるで何かを払うように、そして温かい光は周りにも広がっていき光が収束していくと最終的に厄災のホビットの顔がそこに現れた。

 何処か童顔に見えるような大人しい顔立ち、決しておかしな顔ではない。


「何のつもりだ? こんなことをしても今更私が死ぬという結末は変わらない」

「最後ぐらい顔が見たいと思っただけさ。それだけだよ…特に意味は無い。でも…これで最後の約束は果たされただろう?」

「クハハ! 面白い男だな…なら最後に呪いを解いてくれたお節介に対するお礼をするか。お前が知りたい情報の内私が知りうる情報。お前の妹の話だ」

「何を知っている?」

「お前をナーガの勇者とする一方でお前の妹を使ったヒューマン族の悲願を果たす為だ」

「何の話だよ? ヒューマン族の悲願って」

「ヒューマン族は代々短命だ…百年程度しか生きられない。ナーガやドラゴンの五分の一、ホビットやオーガの三分の一だ」

「要するにそれを克服させる方法って事?」

「そういうことだ。お前の妹が誘拐されたのをお前の父親ははじめっから知っていたし、お前の邪神討伐と彼女の誘拐を同じ時期にしたのもはじめっから計算された居たことだ」

「どうして? アンヌお姉ちゃんに…」

「覚醒にはどうしても必要だったんだ。ヒューマン族をナーガ並みの寿命を手に入れさせるためにはな…」

「面倒な事ね…なんでそんなことをするわけ?」

「知るか…だが…子供に長生きをしてほしいという気持ちに理由以上にそれ以上の理由が必要か? 生きて欲しかったんだろう? そして、兄に寂しい思いをしてほしくなかったんだろう? 私には理解できない感情だけどな」


 厄災のホビットは穏やかな表情を浮かべていた。


「まあ、こんなものは私の勝手な推測だ。だが、元よりヒューマン族の中に長命種達と同じ寿命が欲しいと考えている一派は存在する。長年の命題だったしな」

「そうなんですか? ジャックお兄ちゃん」

「ああ。それは聞いたことがある。そもそも教会が存在している理由だしな」

「まあ…後はお前達の代で何とかしてみるんだな。もう姿を消しているが、あの男達の一派。この先貴様の戦いにおいては障害そのものだ。私なんかとは比べるまでもな程に…」


 ジャックは先ほどまで一緒に戦っていたドドナとヴェルズリが居た場所をジッと見る。

 もうすでに彼らは離脱済みであり、恐らくアンヌ達の方でも既に撤退している事だろう。


「そうだ…消える前にもう一つ。ドラゴン大陸での最高司祭の役目を知っているか?」

「知らん。だが、何処に向かうのかは予測できる。内地の方だな。ドラゴン大陸はオーク大陸と同じで内地の方にドラゴン族は基本住んでいて、他者を受け付けないと聞く。そもそも旅をしているドラゴンが稀だ」


 ジャックは内心「あれはドラゴン族の姿をしたヒューマン族のエロおやじだ」と突っ込んだ。


「だから辿り着いたら大陸の中心の方へと進めば自ずと答えは見つかるだろう。結局で歴代の勇者と同じなのだから。お前は歴代の勇者の中でも沢山の旅路が待っている。かつて女神がしたように…各大陸の仲間を集め、災いを超える為に勇者の刻印と勇者の剣を覚醒させなければならない」

「刻印を集めるって何をするんだよ」

「………そのままの意味だ」


 最後に厄災のホビットは笑いながら消えて逝った。


「最後に…自分を許せたかな?」

「許せたよ。姉ちゃん」

「なら良いな…きっと私達の一族も受け入れてくれるよね? あの人達の一族を…」

「そうね…私の一族も…きっと……」

「俺達も現実に戻ろう。ここは…俺達のような現代人が手を付けていい場所じゃ無いさ。皆の所に帰ろう」


 ネリビットとメイビットはジャックの左右に分かれてその手を取る。

 するとジュアリーだけがはっきりと見えた…勇者の刻印が優しい光を一瞬だけ放つところを。

 その光はきっとこれからもあの二人を守っていくだろう。

どうでしたか?

双厄のホビット編は残り二話となります。

どうか引き続きよろしくお願いいたします。

では次は双厄のホビット第四十九話でお会いしましょう!

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