狂った物語 4
狂った物語四話目となります!
今回のホビット大陸のお話は世界の謎に少し進むことになります。
では本編へGO!
厄災のホビットが目指した最奥、それは中央庭園に隠していた双星のホビットが作り上げし最高傑作と言うべき品物の世界である。
双星のホビットがかつて錬金術師達の祖先に説いた錬金術とは、という問いに対する答えは「自らの世界」と「その創造」を行う事が出来るのかどうか。
結局で不可能すら可能にする術も「自分がそれを出来ると思っている」のか、そして「それを自分がしたいと思っている」のか、そのうえで「自分はそのイメージを持っているのか」ということ。
双星のホビットは二人でどんな不可能すら可能にして見せた。
出来ない事なんて存在しないのだと、彼らは自らの錬金術でそれを証明し続けてきた。
だから厄災のホビットの一族は彼らを目の敵にし続けてきたのだ。
結局で厄災のホビットの本当の意味での正体を知っているのはかつての双星のホビットだけであり、その正体を知っても良いのは現代においてはジャック・ロウ一人だけだった。
命を超えて、可能性を弄び、不可能を可能にしようと試みて、その全てを台無しにしてしまった失敗作の一族。
ジャックは四つ目の鏡の中へと入りながら、厄災のホビットの事ばかりを考えており、厄災のホビットは正直に言えばジャック・ロウと戦う事だけは避けたいと考えていたのだ。
双星のホビットだけなら脅威とは言い難いが、ジャック・ロウだけは違う。
彼は知っている。
勇者とは何か。何故勇者などというシステムが存在しているのか。彼は何故役目を終えてなお勇者であり続けるのか。
彼はジャック・ロウという男が勇者の役目を終えてなお勇者の刻印を持っているという噂話を聞いた時点で「自分にとって恐れていた事態が起きた」と判断した。
だから、双星のホビットを先に殺そうと双子のホビット狙う様に動いたが、ジャック・ロウを巻き込む形になってしまった。
「あの時…あの最高司祭を殺しておけば…」
そう、ドライ最高司祭を彼は知っている。
彼が初めてこの街にやってきたとき、厄災のホビットはそれを見ていたのだから。
ドライ最高司祭が何かをしにこの町にやってきたという事も、同時に不思議に思った事。
本来であれば勇者の剣を製造するのは最高司祭の人間の役目なのに、彼はそれを絶対にしようとしなかった。
だが、全ての真実を知った今分かる。
「ドライ最高司祭は完成させたかったのだ。不滅の勇者の剣を。勇者が血によって受け継がれるシステムが完成した今。もはや私達の一族が勇者に勝てる見込みは無くなった。なら…」
せめて双星のホビットだけでも殺す必要がある。
ジャック・ロウが『本当の勇者』として目覚めた以上、これから彼は順序良く過程を踏む必要があるのだ。
今はまだ第一段階。
かつて女神事初代勇者と共に旅をし世界再創生と救済を行った三つの一族の末裔を探し出し、同時に勇者の剣を完成させる。
このホビット大陸の状態であればまだ抵抗できると踏んだからこそ。
ドライ最高司祭が敢えてジャック・ロウを追い出したのも、彼に自分の痕跡を探そうとさせているのも、勇者の剣を自分で作るようにしているのも、必要な過程だからだ。
赤鬼のオーガ、双星のホビット、円環のドラゴンの三つの『仲間の一族』を探させるわけにはいかない。
自分の目的を今ここで達成できない場合、たとえ生き残ったとしても呪い返しがやってくる。
勇者の完成とは結局で厄災のホビットの終わりを意味している。
自らの敗北を受け入れる前にやるべきことはきちんとやっておきたいのだ。
負けると分かっている戦いでも厄災のホビットは自らの戦い方を変える事は出来なかった。
ジャック・ロウは結局で厄災のホビットがどんな人間なのか、それは本当の意味では理解できていた。
ホビット族は代々二つの種族をもって生きており、背が小さい代わりに手先が器用で賢い種族、体が大きい代わりに素早く人の持つ身体能力を超えることが出来る種族。
同時にホビット族はどの種族も基本『魔力を宿さない』という共通点がある。
ヒューマン族ですら多少なりは魔力を有しており、オーガもドラゴンもナーガも大小あれど魔力は有するが、ホビットは『絶対に魔力は持たない』という点で他の種族とは異なる点がある。
これは同時に魔力に対する一定の耐性があり、同時に危険な錬金術での錬成に対するデメリットを相殺できるのだ。
錬金術はいわば正しく運用しても、錬金術が作り出す大量の魔力で形成されたいわゆる『魔素』が生まれるのだ。
魔素は本来空気に蒔かれた段階であっという間に消えていくわけなのだが、大量に吸い込むと魔素中毒と呼ばれる症状を引き起こす。
いわゆる廃人化である。
魔素に対する耐性があるのはホビットとナーガだけであり、ホビットとナーガでは魔素に対する耐性の方向性が異なるのだ。
ナーガは自分で魔術を行使するため体内で魔力を無制限に製造する過程で『魔素に対する耐性が出来た。
それに対しホビットは魔素を作る錬金術の過程で身を守るために進化を遂げたわけだ。
「ねえ、知っていたっスか? 邪断の元勇者ジャック」
「俺に話しかける気持ちがあったのか?」
「あそこの馬鹿オーガと一緒にしないで欲しいっスね。厄災のホビットの正体。知らないとは言わせないっスよ? アンタとそこにいるジュアリーと言う女の人。アンタたちは気が付いているはずっス。厄災のホビットが所謂『双星のホビットの親戚』という事には。結局で錬金術はその才能を遺伝で受け継ぐっス」
「らしいな。あの二人だって遺伝で受け継いでいる」
「自分だって同じっすよ。ホビットは遺伝で才能を受け継ぐっス。厄災のホビットが呪いに手を出したとは言っても元をただせばそれが出来るほどの天才っス」
「双星のホビットもまた天才だった」
「ルーツを辿れば同じ場所に辿り着くっス。で、厄災のホビットはきっと女神の目に止まらなかったっス。女神は一人で天才と言われた人物より、二人で天才と呼ばれた方を選んだっス。厄災のホビットはそれが気に入らなかったっス」
「妬みか…俺からすれば下らない感情だな」
「自分もそう思うっス。正直自分が楽しければそれでいいっスからね。でも、女神に認めてもらえなかったという負い目、それは厄災のホビットに『失敗作』と呼ばせるに至ったっス」
「それが呪いに手を出した理由か…」
「そうっス。結果呪われて呪いに対する耐性を付けた。元々自分達ホビットは魔素に耐性を持っているっス。それだけに呪いに耐性を付けてもおかしくないっスから。でも、多分今日までっス…」
その言葉の意味を今のジャックが知ることは無かった。
どうでしたか?
そろそろ勇者の謎やヒューマン族だけ短命な理由について語りたいなと考えています!
では次は双厄のホビット第四十五話でお会いしましょう!




