災いを求める者 9
災いを求める者九話目となります。
いよいよホビット大陸編ラストダンジョンです!
では本編へGO!
ジュアリーに誘われる形でジャックとネリビットとメイビットは翌朝朝食を食べた後、双星のホビットが作ったとされる展示会へとやってきていた。
四つの三階建ての建物、色がそれぞれ異なり『赤』『青』『緑』『紫』の四つに分かれており、正面玄関から入ってまず正面には赤い建物がある。
そこから時計回りに『青』『緑』『紫』と中庭を囲むように建物が作られているが、ジャック達は入ってすぐに赤い屋根の建物へと入っていく。
しかし、入った所でジャックの足が止まりふと上を見上げると、先頭を歩いていたジュアリーが忌々しそうな顔をしながら「何?」と聞いてきた。
ジャックは小さく「何でもない」と言って入っていき、四人で正面に置かれている金属の大きな窯を見てみる。
「これ何? うちの家にあるけど…使ったこと無いし」
「ええ!? あるよぉ! 練った生地を入れるだけで理想のパンを作ることが出来る魔法窯だよ! ホビット大陸のパン屋の一部は今でもこの魔法窯を使って焼いているんだよぉ!」
「…君達の家にあるの? これ…基本的にパンを焼く以外に役に立たないわよ」
「昔っからあるから分からないの。いつ買ってきたのか…」
「………買ったんじゃないのかもな」
「どういう意味?」
ジャックの喋った言葉に対しジュアリーが「どういう意味」と喋ろうとしたが、途端理解して黙り込む。
そう、ジュアリーだって分かっていた事、この双子の姉弟は現代の『双星のホビット』なのだと。
ジャックがこの場所に行きたがっていた二人に同行したのも、もしかしたら襲われるかもしれないパレードを仲間たちに任せたのも全てはこの場所に敵が居るかもしれないと感じたからだ。
他にも色々と候補があるのだが、ジャックが大統領から貰った資料の中で双星のホビットが直接かかわるようなレベルの場所は此処しか無かった。
だからジャックは此処だと判断して朝一番にやってきていたが、入った瞬間に一番上の階から邪悪な気配を感じ取ったのだ。
入った瞬間に「出ていけ」という力強い意思と同時にネリビットとメイビットの二人へと向けられた「殺意」である。
「明確な殺意を感じるわね。この建物だけなのか…それとも四つの建物すべてに同じことをしているのか…たばこを蒔いているのよね?」
「ああ。あれがそうだったという事は間違いが無い。そのうえで奴があれ以降姿を消しているんだ。それと気になる事が…」
「街の治安でしょ? どの大陸の首都といえ基本治安が悪い部分はある。この街にも半グレと称される違法集団はいる。しかし、ここ数か月ドンドン数が減っているのよ」
「ああ。気になるだろう? あの男が何かに利用していると思うとしっくりくる」
前を歩くネリビットとメイビットの後ろをしっかりとついていくジャックとジュアリー、階段を上って一つ一つ見ていくと、やはりどれも二人には身に覚えのある道具ばかりだったようだ。
だが、中にはそれを発展させたような道具もあり、色々と話し合いながら二人は楽しそうに三階までやってきた。
一番奥のドアを開けると、そこには大きな姿鏡が立てかけられており、異様なことに人が誰も居ない。
しかし、ジャックにははっきりと感じ取ることが出来た邪悪の気配をあの鏡の奥から感じる。
奥と言うと何か違和感を感じるが、ジャックには鏡の奥に世界がありそこから邪悪な気配を感じ取れた。
「何だろう…あの姿鏡…」
「なあ、二人の一族にあるレシピにあの鏡は無いのか?」
「ううん。聞いたこと無いよ」
「なら。初代双星のホビットが厄災のホビットに何かしらの手を打つ際に作り出した品物で、他の方法において役に立たないからレシピには残さなかった…」
「かもしれないな。問題はどうしてこの部屋中に見えない文字で術式を書いているのも気になる。どうやらあの鏡に細工をしているようだけど…」
「ねえ。なら残り三つの建物も同じようにしているのかしら?」
「だと思う。入らないと気配を感じ取れない様に部屋に細工をしているみたいだし…」
「ねえ。ジャック兄ちゃん何の話なの?」
ジャックは代表して二人にジュアリーと共にこの建物に来た理由を話した。
二人難しい顔をしながら話を最後まで聞いて姉のメイビットが聞いた。
「ねえ。私達が双星のホビットの子孫だから厄災のホビットは襲おうとしているの?」
「…それも理由かもしれないが、多分大元は違う」
「ていうか…多分だけど、貴方達は邪魔だからが理由じゃないかしら? ズレた世界を使ったテロも今思えば元勇者がやってきたと知ったから策を打った可能性があるわ」
「だな。目的はあくまでも国家転覆かもしれないな。種族全てに対しる復讐。ホビットと言う種族を滅ぼそうとしているのかもな」
「なら。あの鏡は…」
「厄災のホビット絡みの錬金術で作った道具。それを使って何かをしでかそうとしている…いや、もう何かを起こしているのかもしれないな」
「鍵じゃない?」
ジュアリーは部屋前にある廊下の先、中庭側へと移動してそっと見下ろす。
中庭には豪華絢爛な庭と噴水が作られており、その噴水も淡いピンク色の光を放っている。
「四つの建物に展示してある道具で鍵をしているんじゃない? こういう場合はそんな感じじゃない?」
「だとしたら厄災のホビットは中庭に居るという事だ。鏡の奥へと向かうしかないみたいだな」
ジャックがまず先にと部屋へと入っていき鏡に手を突っ込んでみると、鏡の表面が波打ち右手が入っていく。
ゆっくりと手を突っ込んでいき、最後には身を乗り出して鏡の奥へと入っていく。
鏡の奥の世界は薄暗く最低限だけの蝋燭の火が壁についているだけ。
一本道の廊下の先に何があるのか分からないまま、ジュアリー達も入ってくると奥から化け物のような咆哮がジャック達の耳を襲う。
「化け物が徘徊しているんでしょうか?」
「その辺で拾ったモンスターなら良いけどな。最悪の予想があたるパターンがあるから…」
ジャックの脳裏を過る一つの予想、廊下を歩いていくと一つのドアの前に爬虫類を思わせるような見た目の化け物。
身の丈は成人男性程度の大きさ、長い尻尾は一度地面に打つたびにヒビが入りそうなほど、体に生えている緑色の鱗はまさしく爬虫類。
しかし、ジャックには分かってしまった。
「一般人を化け物に変えたわけだ。呪いで…!」
どうでしたか?
ラストダンジョンでは意外なメンバーで挑むことになります!
では次は双厄のホビット第四十話でお会いしましょう!




