災いを求める者 5
災いを求める者五話目となります。
いよいよ主人公とヒロインの関係が明らかになります。
では本編へGO!
ノルヴァス達と取引をするという事自体危険を伴う行為ではあるが、それを実行しなければ危うい事態でもあるという事は元勇者ジャックにも判断で来た。
厄災のホビットという名と共に語り継がれている伝説、それを知りたいと考えていたジャックはメイビットと共に隣町にある図書館でドライ最高司祭の本を調べる片手間で見つけることにした。
その為に地下鉄で移動しようとした際、ホビット政府の最高権力者である大統領から「本をこちらで用意している。お話をしませんか?」と提案を受ける。
二人で返答を悩んでいると、女性にナンパをして失敗しているリアンを発見した。
話しかける事すら躊躇うジャックに対し、メイビットは躊躇することなくリアンを大きな声で話しかける。
リアンもジャック達に気が付いたのか「何じゃ?」と声を出しながら近づいてきた。
ジャックとメイビットは先ほどの電話の内容を教えると「何故?」と疑問顔をされてしまう。
「何故躊躇うんじゃ? お前さんの知りたい真実がそこにあり、それを知る機会があるのなら躊躇う必要性は無かろう?」
「まあ、そうだけど…ホビット政府に俺の目的が知られているのがどうにもな…」
「私も同じ意見です。今は体裁とか信頼とかは別にして話をしにいくべきです。何より先ほど起きたことを話すべきです」
「何じゃったか? ノルヴァス達との取引じゃったか?」
「それもそうだな…」
ジャック達はそのまま大統領官邸へと足を運ぶことにし、地下鉄に乗って移動する。
大きなビルディングに囲まれた場所から少し外れた場所、そこに三階建ての建物へと入っていく。
秘書の女性に案内されて一階の一番奥、木で出来た両開きのドアを開き奥にいるホビットの男性を視界に入れる。
口ひげを蓄えたダンディな人物であり、彼はジャック達を手招きして室内に入れソファへと座らせる。
ジャック達対面には彼が座り改めて挨拶をした。
「初めまして。大統領の『デルマー』と申します」
「初めまして。ナーガ十将軍長『ジャック・ロウ』です。こちらはネリビットとリアンと言います」
「初めまして。ネリビットと言います」
「リアンじゃ。久しぶりじゃのう…お前さんがまだ大統領補佐官時代に会ったのう」
「ええ。リアン様。変わり果てたとお聞きしましたが、お元気そうで何よりです」
「ハハハ。むしろ女性になって助かっておるよ」
豪快な笑いを見せるリアンにクスリと笑うデルマー大統領、途端に真面目な表情をしてジャックに一冊の本を差し出す。
「これを。ドライ最高司祭がかつてこの地に来た際、「もし勇者ジャックが訪れることがあったら渡してほしい」と頼まれました」
「なんじゃと? ドライがか?」
「はい。何やら深刻そうな表情をしていましたのでよく覚えています」
「でも、どうして?」
「分かりません。ですが、私はその約束を果たすべく貴方が到着するのを待っておりました。それと…ナーガ政府から「貴方がこの本を求めているはず」と聞き厄災のホビットに関する書物も」
ジャックは心の中で「なんでそのことを…」と突っ込みまずはドライ最高司祭の本を手に取り中を開き詳細を見始める。
浮き彫りになる文字を一字一句しっかりと見極めるとジャックはため息を深めにつきながらその本をそっとテーブルに置く。
するとメイビットが代わりに本を手に取って中を見始める。
「やっぱりか…くそ! 母さんも父さんも知っていたのか!?」
「ジャックお兄ちゃんとアンヌお姉ちゃんは実の兄妹。ジャックお兄ちゃんが兄みたいだね」
「フム。その後直ぐに息子であるジャックを勇者として選び、アンヌの方を聖女として選んだ。そして…推測通り兄の方も姉の方もナーガの血が所々現れた。勇者として選んだジャックならば勇者としての役目を終えた後にナーガになると読んだわけじゃな」
「なるほど。それをジャック様に確実に知らせる為に私に託されたと…」
「はい。詳しくは掛かれていませんが…この様子ならやっぱりジャックお兄ちゃんのご両親も…」
「知っておったんじゃろうな。母君は少なくともジャックの母親で在っておるようじゃしのう。アンヌの奴には言うのか」
「………今は言わない。言うかも決めてない。最悪は言わないかもしれない。だから…」
「分かりました。ホビット政府代表として他言しないことを誓わせていただきます。その代わり今ホビット大陸で起きているトラブルを解決していただきたい」
「厄災のホビットじゃな?」
大統領は神妙な面持ちで黙って頷き、ゆっくりと口を開き始めた。
「厄災のホビット…その名はその書物の中に描かれていますが、要約すると呪いに手を出した一族の事を指す言葉です。双星のホビットは女神との冒険後二人でその厄災のホビットへと挑んだと聞いています」
「双厄のホビットという名に聞き覚えは?」
「ホビット大陸中で聞くようになった新しい名ですね。そのような名前が出てきている書物は見つかっていません。無論、政府が管理していないようなマイナーな書物かもしれませんが、少なくとも重要な書物には」
「あるんですか? 政府が管理していないような書物。私達ホビットにとって本は貴重な物です。どんな本でも初版本どころか原本すら管理しかねないのに」
「双星のホビットのレシピ本だけは一族だけが管理しているはずなのでありませんが、それ以外はそうですね。なのでありえない可能性だと考えていただければ…」
「フム。となるとやはりノルヴァス達との取引が重要になりそうじゃな」
そこでジャック達は先ほどのノルヴァス達との取引の詳細を語った。
「なるほど。分かりました。私達も何が起きてもいいように各勢力に言い聞かせておきます。ですが…たばこのような物ですか」
「何か心当たりは?」
「ええ。最近旧市街地で流行っている『魔道タバコ』ですね。消耗しない、火を使わないでストレスを発散できると噂になっているんです。でも…これ自体は個人販売ではなく大手が販売しておりますし、レシピも政府にはきちんと提出しているはずなのですが…」
「取り締まるわけにもいかないだろうな。何せ理由が俺達が遠くから見ているだけなんだから」
「そうじゃのう。しかし、大手が販売していた奴を厄災のホビットと思われる人物が販売しているのじゃから警戒はしておくべきじゃろうよ」
「ですね。あの…できればレシピと現物はありますか?」
「後で調べさせて提出させます。この地で起きている呪いにまつわるトラブル…どうかお願いします!」
深々と頭を下げる大統領に合わせるように頭を下げるジャック達だった。
どうでしたか?
主人公とヒロインの関係はずっと考えていました。
この世界の今後についてこの二人の関係は意外と重要なファクターとなります。
では次は双厄のホビット第三十六話でお会いしましょう!




