災いを求める者 4
災いを求める者四話目となります。
いよいよホビット大陸のラスボスに向けて両勢力が取引に入ります。
では本編へGO!
此処で動いて奴を拘束することが果たして簡単かと言えば、正直に言えば簡単ではないだろう。
無関係の人間が多すぎるのだ。
そして、厄災のホビットと思われるフードを深めに被っている人物はこちらを見て口元だけを晒した状態でニタリと口元を歪ませる。
どうやら俺達が敵意を抱いているという事だけは気が付いたようだが、これだけの呪いだどうして他の人間は気が付かない?
ナーガ人なら気が付いて同然なはずだが、俺以外のナーガ人はまるで気が付いていない。
これ以上近づくと何をしでかすか分からないが、同時に逃げ出すとこいつ自身が逃げて隠れる可能性がある。
俺がそっちを見て初めて気が付いたという事は何かしらの仕掛けを施しているのだろうが、あっちは双星のホビットに気が付いたのだろうか?
「ジャックお兄ちゃん…どうする?」
「此処から離れるのも危険だが…近づくのも危険だ。明らかに人通りが多いこの場所を利用している。下手をするとあの人物は此処から動く気が無いかもしれないな。だが…」
「何をしているのかな? 商品を売っているように見えるけど…あれは?」
「電子タバコという奴だな。俺は吸わないが…健康に良い電子タバコもあると聞いている。今の所パッと見える形で呪いを販売しているわけじゃ無さそうだ」
「じゃあ…どうしてあんなものを…」
メロンはベル広場が良く見える丘の一番端にある柵に両手を掛けて体重を少し載せながら眺めていたわけだが、その右隣にノルヴァスがやってくる。
「で? どこにいる?」
メロンはまっすぐに紫色のネイルの縫っている右人差し指を向けると、フードを深めに被っている怪しい人物を見つけ出した。
その近くにはジャックがまっすぐに見ているわけだが、確かにフードの人物は恐ろしい量の呪いを身に纏っている。
しかし、分からないことが一つ。
「どうしてあの量の呪いを身に纏っていて誰も分からない」
「濃すぎるのよ。濃すぎて一般的な人にはまるで判断が付かないレベルなのよね。あの濃度の呪いなら認識することすら難しいわ」
「…人通りが多いな。ボスからのオーダーは一般人を巻き込まないことだ。今ここで派手に動けば今後の計画に支障が出る」
「私は賛成。巻き込めば面倒になるわ。今ここで追っ手を受ければ間違いなく作戦を引き延ばすしかない。なのに、ボスはもう邪核を飲んでしまっている」
「ああ。後戻りは出来ない。飲んでしまった以上は此処で確実に目立たない様に厄災のホビットを処理する必要性がある。もう、既に教会撲滅の作戦は作られている。今更…」
「人避けを使う?」
「それを相手が考えていないとは思えない。恐らく対策はしているはずだ。それを搔い潜るだけだが。先ずはジャック・ロウと取引だな」
真直ぐに相手を見ていると後ろからノルヴァスの気配を感じ取り、振り返ろうと腰を捻る瞬間、ノルヴァスの「こっちを見るな」という声が掛かる。
「私達の正体を厄災のホビットへと漏らしたくない。取引をしよう。この場所だけでいい」
「お前達を信じろと?」
「信じてもらうしかない。でなければ多くの人が犠牲になるだろう。私達も厄災のホビット自体は処理をしてしまいたい。とりあえず共通の目的を持っていると思うが?」
「お前達が多くの人の犠牲を避ける理由はなんだ?」
「別に良いんだぞ? 目立ちたくないという理由なだけだ。お前達が共闘出来ないなら派手にするだけだ。どうせある程度の対策を相手はしているだろうしな」
ノルヴァスを信用することは難しいが、だからと言ってここで手をこまねているわけにはいかない。
何より俺達を見つけているという状況が悪い方向へと物事を向かわせる可能性がどうしても脳裏を離れてくれない。
「分かった…ただし。俺の仲間への手出しはこの場所においてはしない。それも約束しろ」
「良いだろう。では取引成立だ。奴が動くとすれば間違いなく明日の夜行われるパレードだろう」
「パレード?」
「明日。ホビット大陸の首都で行われる双星祭というお祭りが行われる。丸一日かけてのイベントだ。詳細は自分で調べることだな。そこまでお前達と一緒に行動するつもりはない。どのみちここで奴を捉えるのは難しいだろう」
「分かった…ただし。この街の人達になるべく被害が行かない方法を取る事。それも…」
「ああ。条件だ。では。明日」
気配がスッと消えていき、俺とメイビットは視線を合わせて頷き合うとその場を歩いて移動することとした。
今は見逃すしかない。
厄災のホビット…いるだけで不幸をもたらす存在なのは間違いが無いだろう。
双星祭。
双星のホビットが遥か昔このホビット大陸において厄災のホビットを打倒して首都を作った功績から丸一日を掛けて行われる一大イベントらしく、朝から街の彼方此方で露店などが建ち並び、夕方から明日の朝までにかけて旧市街地から新市街地へと向かってパレードが行われるらしい。
政府主導で行われるイベントだけあって、多くの人がこのイベントに参加しており、中には他の大陸からわざわざ参加する人もいるぐらいだ。
俺達事態は参加するつもりは無いが、それでもこうなった以上は参加するしかない。
しかし、双星祭を狙っているという事はやはり狙い自体は双星のホビットという事になる。
多分この双子の姉弟を狙っているのだろう事は間違いが無い。
出来る限り単独行動をさせず複数人で動いたほうが良いだろう。
だが、それで宿泊先を襲われたのではたまったものではないので、明日は一日で歩いたほうが良いと判断した。
少なくとも俺とメイビットは見られているわけだし、狙われる可能性は十分にある。
ノルヴァス達がどうやって厄災のホビットを殺すつもりなのかは疑問だが、この場合競争し合っている場合ではないのだろう。
誰でもいい…厄災のホビットを確実に殺すことだけを考えなければいけない。
呪いを振りまく存在を…これ以上見逃すことは俺には出来そうになかった。
どうでしたか?
次回はいよいよジャックとアンヌの関係が分かります。
では次は双厄のホビット第三十五話でお会いしましょう!




