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勇者の剣を求めて 6

勇者の剣を求めて六話目となります。

では本編へGO!

 温泉から出て浴衣に着替えた状態で夜の街へと繰り出していく俺とアンヌとメイビットの三人、とりあえずまだ開いている鍛冶屋に首を突っ込んでいきながら品定めをしていくのだが、結局でアンヌが納得できるレイピアは無かった。

 というのも聖女時代にアンヌが使っていたレイピアは特殊合金で作られたしなやかで頑丈な金属、それを二年かけて加工し続けた逸品である。

 魔石を散りばめて作られたレイピアはアンヌの聖術を強化して使う事が出来る仕組みで、柄の部分もアンヌの手のサイズに合わせて細かい調整を繰り返して作られているのでまさしく逸品の品物である。

 あのレベルの商品なんてその辺を適当に歩いて見つかるのなら誰も困りはしない話絵で、やはり一から作らせた方が良いだろう。

 すると俺はある鍛冶屋の前で足を一瞬止めてしまった。

 店構えは何処にでもあるボロイ店構えで、店に飾っているのもよくある包丁から刀剣などが所せましに飾られている。

 アンヌやメイビットと共に中へと入っていくと、ぶっきらぼうな中年ホビット男性店主が迎えてくれるわけだが、ぶっきらぼうなので愛想が非常に悪い。

 しかし、俺は中に入る前からこの店に何か引き寄せられるものを感じてしまった。


「アンタ…そこの小さい女。お前…レイピアを持っているな? 見せてみろ」

「え? あ、はい…」


 アンヌはそのあまりにも愛想が無いぶっきらぼうな男に対してゆっくりとレイピアを手渡し、男はアンヌが持ち歩いているレイピアを品定めでもするようにジッと見つめていた。

 最後にはそれをテーブルの上に置きながら大きくため息を吐き出してこちらを見る。


「駄目だな。このレイピアではお前さんのパワーを受け止め切れていない。見た目はまだ大丈夫だが、中はズタボロだ。これは最近購入した品だな?」

「はい…」

「手の握りも合っていないし…君の聖術の使い方にレイピアが悲鳴を常に上げているような状況だ。これでは近いうちに破損するぞ」

「良いレイピアを探していまして…」

「フム…」


 男はそう言うと奥へといったん消えていき、アンヌが持っていた小さめのレイピアと同じぐらいのサイズのレイピアを取り出して差し出した。


「これならどうだ? きっと君が昔使っていたであろう聖術に耐えられる聖女が使う専用のレイピアと同じレベルの品物だ。最もこれは失敗作だが」

「どうして失敗作なんですか? 私が見てもこれはいい出来ですが」

「ホビットのお嬢さん。それはただのレイピアという一点から見ればだろう? 私が求める最高のレイピアを鑑みればまだまだ改良の余地がある。聖術を十二分に発揮し、同時にまだまだ軽くなる余地があると思っている。問題は柄の部分だ。これは剣の部分と柄の部分を分離して考えている」


 メイビットと男性店主は何やら専門用語で話をしているようで、俺達にはまるで理解できない範疇。

 するとメイビットは魔法のポーチから何か手のひらサイズの小さい真っ白な石を取り出して差し出す。


「これならこのレイピアの規格に合いませんか? それと聖術を取り込むのならこの魔金属ならどうですか? これは錬金術で作った特殊製となっています。市場には出回っていない品物で、まだテストをしていないので何とも言えませんが…」

「この魔金属とか言ったか? これは君が?」

「はい…」

「これだけの金属を錬金術で作ることが出来てどうして今まで無名のままで居たのかが理解できないな。これは良い金属だ。これなら…明日勇者の剣を手に入れる為に神殿に行くと言っていたな? ギリギリ間に合わないか」

「だったら私が此処に残ります。調整するのに私がいるでしょう?」

「なら私も残ります。アンヌお姉ちゃんの手伝いが出来ると思いますし」


 俺が会話に入らないまま話がまとまっていくのだが、まあ後で追いかけてくれるのなら大丈夫かと高を括って俺は一人店を出る。

 俺が去る際にアンヌに聞こえない様に店主に何かを話しているメイビット、すると立ち去ろうとしていた俺に近づいてくる男性店主、俺の両手を揉み揉みしてサイズを確認してからまた店中へと戻っていく。


「え? 何々? 今何をされたの?」


 唖然としたまま店先で立ち尽くしていたが、良く分からないまま再び歩き出した。


「ジャック兄ちゃん! 助けて!」

「??? どうしてネリビット」

「爺ちゃんが!」


 ネリビットがとあるお店の前で立ち尽くしており、店先の看板にはお酒の絵が描かれているところから酒屋であることは間違いが無い。

 バーかもしくは居酒屋と言って風貌であり、お酒の販売もしているようで俺は恐る恐ると言った感じで覗き込むとホビットの二十代前半の女性三人を相手に酔っぱらっているドラゴン族の女を見つけた。

 俺はそれを見て遠い目をしながらネリビットに「諦めて向こう行くぞ」と進める。


「ああいうのは無視しているんだ。全く…子供を連れて行く店じゃないだろうに」

「姉ちゃんとアンヌ姉ちゃんは?」

「鍛冶屋。明日は一緒には行けないってさ。後で追い作って言っていたから信じて俺達は神殿に行こう」

「何してんの?」

「武器作りだよ。ほら、アンヌの武器はそろそろ限界だからさ。もしもに備えておかないとな。アンヌの武器が戦闘中に壊れたらそのまま命を落とす危険性だってある」

「ふうん。武器ね…アンヌ姉ちゃんって聖女っていうんだっけ? 聖女ってなにすんの?」

「基本は上位や中位の危険なダンジョンのモンスターの鎮圧、聖術による怪我人などの治療を目的とした巡礼だな。時折共闘していたら見たことは何度かあるよ。最も…今やアンヌが最後の聖女だが」

「聖女って生まれてくるものなの? 頻繁に?」

「分からないんだよな。聖女って生まれつき能力…アビリティを持っているらしくてさ。パッと見じゃ気が付かないらしいから。アンヌの時だって多分偶然分かっただけな気がするし」

「アンヌ姉ちゃんを迎えに来たら勇者を見つけたっていう話だっけ? 本来は逆なんでしょ? アンヌ姉ちゃんは知らないみたいだけど」

「ああ。俺の予想だけどな。俺を迎えに来たらアンヌを見つけたっていう話だから。教会でも聖女の総数は分かっていないらしいし。ああいうのは辺境の地で生まれると死ぬまで気が付かないらしいから」

「そういうもん?」

「そういうもんだよ。勇者とは違って分かり易いランドマークがあるわけじゃないしな。ほら、勇者の場合は刻印があるから」


 俺はネリビットに両腕にある勇者の刻印を見せる。

 肩から腕の甲まで伸びている刻印。


「ぱっと見じゃ気が付かないんだよね? じゃあどうやって見抜くの?」

「中央大陸にはアビリティや能力を鑑定してくれる『鑑定士』という人達が居るんだよ、その人達に幼い頃に見せる場合がある。その時に発覚するんだよ。もしくは、何かしらの職をその身に宿そうとしたところで気が付く場合がある。アンヌや俺の様に生まれつき宿している人間は転職は出来ないから」

「転職って…嫌な響き」

「他の種族には分からない感性だよな。そういう俺も良くは分からないんだよな」


 二人でそのまま街中へと繰り出していく。

どうでしたか?

次回からいよいよ勇者の剣製造へと移っていきます。

では次は双厄のホビット第二十八話でお会いしましょう!

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