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勇者の剣を求めて 3

勇者の剣を求めて三話目となります。

では本編へGO!

 アンヌから「温泉は男女で入る時間を区切ります!」と自己宣言されたわけだが、そこには例外としてリアンも男子と一緒に入る事と命令が下った。

 リアンが死ぬほど嫌そうな顔をしていたのだが、アンヌが絶対に譲るつもりが無かったのか、最後には根気負けして俺達は先手をアンヌ達に譲ることにした。

 その間俺達は外で待っていることにし、和風な街並みを楽しんでいることにし、歩いて周りを散策してみようと提案する。

 屋根は瓦の綺麗な並びで作られており、木を使った建物は風情を感じさせるのだが、こういう風景をわびさびというのだろうか?


「和風な街並みは久しぶりにみたのう。中央大陸では東側に多い風景じゃしな。向こうでは東方なんて言い方もあるぐらいじゃし」

「東方って何? ジャック兄ちゃん」

「東の方って意味だよ。中央大陸でも東側はこういう和風な造りの建物が多くてそっちの方を纏めて『東方』と呼ぶんだそうだ。俺も何度か足を運んだが事があるけどな。あっちは温泉も豊富だし。同時に食べものも少し変わっているんだよな。素材そのままを楽しむような感じの料理が多いイメージかな」

「場所によるがのう。煮込み料理もあるぐらいじゃし」

「全員お風呂が上がったら食べ物を見て回るか? それとも宿で貰うか?」

「せっかくだし見て回ろう。デザート系も多そうだしな。東方系なら抹茶か?」

「アンヌは抹茶が好きなのか? あれは甘いというより苦いイメージなのじゃが?」

「本場はそうだろうけど。デザートなら甘い感じがするイメージだぞ」


 ネリビットがテクテク歩き出していき抹茶のソフトクリームを買って舐め始めているのだが、俺達の話をキチンと聞いてはいなかったようだ。

 まあ、アイス一つ分なら良いかと思い敢えて口には出さない。

 舐めていると「甘い」というので本場の苦い感じとはやはり違うようだ。

 まあ、デザート系で抹茶を頂くと本場の苦さはあまり無いとは思うけど。


「武器やが多いのかと思ったが、意外とそうでもないのか? 基本は鍛冶産業が発展しているようだな。鍛冶屋が沢山ある」

「金物が多いのじゃろうな。包丁系から鍋などの金物まで色々と作って居る様じゃな」

「金物って鍛冶産業か?」

「というよりは熱を使った加工技術全てがこの集落ではあるんだと思う。ガラス細工なんかもありそうだし。風鈴がある!」


 風鈴という単語に聞き覚えが無いようでディラブは首を傾げながら俺の方へと向き「ふうりんとはなんだ?」と聞いてきた。

 喋り方が片言っぽかったのでマジで知らないようだ。


「東方なんかでは良く見られる装飾品みたいなものかな。風で揺れて中の鈴が鳴るんだ。『チリン』ってな。夏の時期になると風が吹ている証拠で見ているだけで涼しく感じるんだ」

「??? 何故?」

「もうお前には何も言わない。後は自分で考えろ」

「根性論みたいな話だろうか?」


 ネリビットとリアンも心底残念そうな顔をしているのだが、こいつはマジでどういう生き方をすればこんな性格になるのだろうか?



 温泉にしっかり浸かっているアンヌとメイビットはふと夕刻を迎えそろそろ本格的に夜へと変わりつつある時間の中、体の芯まで温かくさせていた。

 体が小さいもの同士広々と使える温泉で敢えて隣り合わせで座り込んでいる。


「アンヌお姉ちゃんって元々は体が大きかったんだよね? 今の体嫌じゃない?」

「そうでもないよ。体が大きいと色々と不便だしね。頭は良くぶつけるし、かわいい服は似合わないって言われるし、今の方が可愛い服も着れて私は好きだよ。時折ジャックが鬱陶しいぐらいに体が大きい自慢してくるのが難点だけど」

「昔はジャックお兄ちゃんの方が小さかったんだよね?」

「うん。とはいってもそこまで小さいわけじゃないけどね。昔は良く弄って遊んでいたな」


 メイビットは心の中で「その時に弄ったから弄り返されているだけじゃ」と思ったが、空気を読んでぐっと飲み込んだ。


「幼馴染?」

「ううん。学校が同じだっただけ。でも、そこで私が聖女として選ばれて、その直後に勇者が同じ学校に居たからその関係でね」

「そうなんだ」


 メイビットは正直に言えばその話はきっと逆だと考えていた。

 勇者がそこにいると思っていたからやってきたら聖女を見つけたという話なのだろうと。

 だが、教会のドライ最高司祭はどうやらこの話を逆にして聞かせているようだ。


「アンヌお姉ちゃんの家族って?」

「知らないの。孤児院の出身でね。学校は勉強も運動も出来たら特別枠での推薦で入らせてもらったの。福利厚生も充実していて、学費も事実上免除だったから。ジャックも同じなんじゃないかな? 辺境の村出身で基本はお金が無いって聞いたから」

「温泉のある村なんだよね?」

「そうそう。私も聖女時代に何度か足を運んだことがあるけど。風情が在って私は好きだな。ジャックも何度か自慢話みたいに語っていたけど。本当は帰りたいだろうって思うけど…我慢するから」


 それはメイビットにも分かる話で、ジャックが本当は故郷に帰りたいと思って行動している節があると。

 同時にそれを隠しながら普段から戦いを挑んでいるのは誰もが分かっている。


「そういう意味では教会が私の故郷なのかな? 学校を卒業してからは聖女として中央大陸中を巡って仕事をしていたよ。ジャックとも何度も共闘したけど、あれは誰でも共闘するから意外と顔が広いし」

「そうなんだ…でも、今のジャックお兄ちゃんは周囲から疎まれているんだよね?」

「でもね。信じている人も居るんだよ。ジャックに助けられた多くの人は信じて待っているの。ジャックは人を救う優しい人なんだって」

「だと良いな。優しい人だったから。私ね…あの村の人達が嫌いじゃないの。本当は…呪われても、殺されそうになっても私にとっては大事な故郷だったから」

「そうなんだ…」

「ネリビットはそうじゃないみたいだけど。でもね…同時にそれを決して許してはいけないってことも分かっているの」

「無理をして答えを出す必要も無いとは思うけどね。私は色々と見て世論を知ってきたつもりだけど、今まで勇者様だって散々頼ってきて、今更掌を返す人が多いヒューマン族に正直失望している部分はある。でも、そんな中にも優しい人達がいることも事実。私の中では正確に答えを出せてない。でも、ゆっくりでいいかなって」

「そうか…そうだよね。ゆっくり答えを出せばいいんだよね?」

「ジャックの様におおらかにそういう事を受け流す人も居れば、私みたいに受け止めようとする人もいる」

「ジャックお兄ちゃんは気にしていないって事?」

「そうね。ジャックはそもそも人助けは趣味でしているだけで、それで他人から評価されたいとは思っていないんだよね。それもそれで私は問題だって思うけど。趣味で体を張って守られて「ありがとう」の一言も言わせず去って行く人の気持ちになってほしいよ」


 アンヌにはそんなことを言う人間を何人も見てきた。


「ジャック様に助けられたけどお礼も言わせて貰えなかったです」


 そんなことを言う人達も何度も見てきて、同時にそんな人達には決まり事を返すだけ。


「私の方から言っておきますね」


 その言葉を吐き出すたびにジャックの事を思い出し、会って言う度にそっけない「そうか…」としか返さないジャックを見るだけ。

 報酬やお礼を期待しているわけじゃないから基本人を助けても感想なんて何もないのだ。


「だからね…私は何か隠しているって分かると何度も思うの…私を信用してくれないの? って」


 メイビットは言えなかった。

 ジャックが「アンヌとは兄妹かもしれない」という事を証明しようとしているなんて。

 言えるはずが無かった。

どうでしたか?

ゆっくりとお話を進めていきますね。

では次は双厄のホビット第二十五話でお会いしましょう!

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