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7.稀有な才能の少年

視点が変わります。


帝国騎士団入団試験会場となっている勇者の広場。その試験本部となっている広場のカフェの一室に、ラッシュは足早に向かっていた。

 騎士服の上に団長の証しである深紅の飾りマントが翻る。


 向かう先には、今回の試験で平然と炎の竜巻を出したという受験生が待っているはずだ。炎と風の二属性を掛け合わせ、しかも竜巻にして出現させた受験生は15才の少年らしい。

 受験票によると受験生の名前はフジノ・デイバン、地方の男爵家の四男。国の魔法使いの名簿にも登録されておらず、これまで全くの無名の少年だった。


 通常ならあり得ない事だ、帝国内の一定以上の力を持つ魔法使いはそのほとんどが年齢に関わらず国に把握されている。6才の神殿での魔力測定で規定値の300以上を示した者は国の名簿に載るし、幼い頃から魔法を使うような才能のある者も報告があれば登録される。そして彼らは、よほどの例外以外は帝都の魔法アカデミーに通うのだ。


  炎の竜巻という二属性の大がかりな魔法は魔力を数百は消費するはずで、フジノの魔力が300を切ることは考えられない。それならば、6才の神殿の測定で引っ掛かっているはずだ。

 

 魔力が300を越えるような稀有な才能の少年が見過ごされていたのはおかしい。


 (万が一、神殿でスルーされたとしても、とんでもない魔法を使うなら、普通は師匠や両親が報告するよな)

 ラッシュは、短く切り揃えられた赤茶色の髪の毛を手でがしがしとかきながら考える。


 魔法使いは重用される。国に登録してその保護下に入れば本人や家族は手厚い保証を受けられる。登録するにあたって特に義務や制約は課しておらず、得しかない。それだけ魔法使いは貴重だ。


(登録もなく、全くの無名はおかしいだろう)

 ラッシュは緑色の瞳を細める。

 田舎には魔法使い自体が身近にいない事もあるので、デイバン家が魔法使いの扱いに疎いとしても、フジノの魔法の師匠が報告を薦めるはずで、それを拒む理由はない。

 

 ラッシュの元へ報告に来た騎士は、フジノ・デイバンという少年が上級の魔物である可能性を疑っていた。

 上位の魔物には人語を介し、人に変化する奴もいるし、頭と精神を乗っ取る奴の存在も知られている。フジノが人ならざる者である可能性は否定できない。

 それくらい、炎の竜巻は異様だった。

 入念に準備した結果や、戦闘で後がないような局面ならともかく、入団試験で片手間にそんなものを出せる魔法使いは帝国内に数人しかいないだろう。

 

 そういう訳で、フジノの事は今年の入団試験の現場責任者であったラッシュまで報告が上がり、ラッシュ自らが今から面会しようとしている。


 ラッシュの()()を使えば、フジノ・デイバンが魔物かどうかの判別はつく。洗脳や乗っ取りの類いであっても魔力の流れくらいなら()()()のできっと分かるだろう。


(しかし魔物だった場合、どうするんだ)

 ラッシュは帝国騎士団第四団の団長を勤めている。それなりの腕はあると自負しているが、人語を操るほどの上級の魔物に遭遇した事はない。それはもはや最上位のドラゴンのクラスだ。


 ラッシュよりずっと経験豊富な第一騎士団長によると「魔物の存在自体が悪なのではない。人とは感性が違うが、上位の魔物は理知的ですらある。話が出来ない訳ではないぞ」らしいのだが、果たして本当だろうか。

 第一騎士団長は、あれはあれでラッシュとはずいぶん感性が違うのだ。


(最悪、戦闘になるにしても、この会場では避けたいな)

 上級の魔物は通常は人里離れた自らの縄張りでひっそりと過ごしている。彼らは人が多いのを嫌う。話が通じるなら穏便にお帰り願うか、場所を移してくれるよう頼みたいところだ。


 そして、フジノがただの見過ごされていた才能溢れる少年だった場合。その場合は何が何でも帝国騎士団に入れておきたかった。久しぶりの逸材なのだ、城の魔法塔には取られたくない。


「何にせよ、会うしかねえなあ。魔物でないといいんだが」

 ラッシュはそう呟いて目的の部屋へと向かった。


 部屋に着いて、軽くノックをして扉を開ける。

 小さな部屋の椅子に柔らそうな茶色い髪の毛の少年がゆったりと座っていた。顔には少しあどけなさが残るその少年は焦げ茶色の瞳でラッシュを見上げてくる。


 ラッシュはすぐに唯一使える魔法を発動させて、フジノを念入りに視た。


 


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