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魔王少女はそうとは知らずに騎士になる  作者: ユタニ
第一章

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41.留守番のハナノ(8)


第二団がウルフザン討伐に立ってから15日目の朝、白く輝く伝書鳩がハナノのルームメイトであり友人のローラ宛にやって来た。

 

「三日後、無事に帰ってくるらしいわよ」

 ほわっと伝書鳩を開けて文面を読んだローラがハナノに伝えてくる。

 

「帰ってくる? 誰が?」

 歯を磨きながらハナノはローラに聞いた。帰ってくるといえばこの場合、第二団に決まっているのだが一人ぼっち生活にすっかり慣れたハナノはそこには思い当たらなかった。ローラが呆れて答える。


「第二団に決まってるでしょう?」

「ええっ、ほんとに! あっ、今の伝書鳩って」

「フジノからよ。ハナに魔力がないから連絡は私宛に飛ばすって言ってたじゃない」

 ハナノがローラと同室だと聞いて、フジノはローラに頼んで伝書鳩にローラの魔力を登録してもらっていたのだ。


「すっかり忘れてた。えへへ、でも帰ってくるー、良かったあ」

ハナノはにへっと笑う。

 ぼっち生活には慣れたけれど、やっぱり自分の団が帰ってくるのは嬉しい。それに剣の魔法の補強の事を伝えられると思うとワクワクする。皆、きっと喜んでくれるに違いない。


「良かったわね、これで獣舎にも通わなくてよくなるわね」

「それはちょっと残念かなあ、ルクルードさんには大分慣れてきたから、そろそろ竜馬の獣舎にも入れてくれるって言われてるの、非番の日に行ってもいいか聞かないとな。嫌がられそうだなあ」

「ハナ、そんな事よりルクルードさんにも三日後には第二団帰ってくる事言って、ちゃんとお世話になりましたって挨拶しておくのよ」

 実家の母みたいな事を言い出すローラ。世話焼きのいい子だな、とハナノは思う。

「大丈夫。ちゃんと挨拶する」

 ハナノはそう言って、午後、さっそくルクルードに第二団帰還の旨を伝えた。

 

「と、いう訳で毎日来れるのは明後日までになります」

 ルクルードがぎろりとハナノを睨む

 ひゃあっ。

 いつもより機嫌が悪いようだ。


「入らんままでいいのか」

 ルクルードが竜馬の獣舍の方を指差して言うので、竜馬に会わないままでいいのかという意味だとハナノは理解した。

「いえ、それはもちろん、入りたいです」

「なら非番の時にでも来い。儂ならいつでもいる」

「えっ、いいんですか? お邪魔では?」

 ルクルードの方からの提案にハナノは驚く。ルクルードにとってのハナノなんて、置いてけぼりで可哀想だから仕方なく面倒を見てる、くらいの存在だと思っていたのだ。非番の時に顔を出していいなんて嬉しい。

 ハナノの言葉にルクルードの不機嫌具合が上がり、ぎりぎりとハナノを睨んでルクルードは言った。


「儂が、いつ、お前を、邪魔だと、言った」

「…………お邪魔ではない?」

「…………いつも助かっている」

 ぶすっとしたままルクルードが言う。ハナノはにんまりと笑ってしまった。


「良かった。ちょくちょく顔を出しますね!」

「ちょくちょくは出さんでもいい」

「……たまには出してもいいんですよね?」

 ちょっと攻めてみる。

「ふん、構わん」

 そう答えたルクルードは心なしか、照れてるようにも見えた。


 その日は雑木林でラグノアにも会えたので、ここに来る頻度が下がる事をラグノアにも伝える。

「サボる口実がなくなってしまうな」

 眩しく笑うラグノア。サボる事に全く罪悪感はないらしい。

「ほどほどにお仕事もしましょう?」

 ひょっとすると、自分のせいでここの所のラグノアのサボりの頻度は高かったのではないかと思うと、ラグノアの職場の皆さんには本当に申し訳ない。

「努力はしてみよう。ハナノがここに来れば精霊達が教えてくれる、たまにこうして会おう」

「はい、また会えると嬉しいです」

 ハナノはにっこりしてラグノアに一旦の別れを告げた。



 

***


 きっちり三日後の昼、第二団が帰還した。

 出迎えたハナノは他の騎士達にもみくちゃにされているフジノを見て驚愕する。

(フジノが皆と仲良くなってる!)

 おまけに、もみくちゃにされ、弄り倒されながらフジノもあんまり嫌そうではない。ウルフザン討伐で何があったのかは、ファシオがニヤニヤしながら教えてくれた。

 

「そしてハナノ、お前、愛されてるなあ!」

「兄からのあの愛は重たくないか?」

「大丈夫か? あれはお前、結婚とか出来ないんじゃないか?」

 野営地での祝宴の際にフジノがハナノの名前を呟きながら涙していた事についても聞かされ、それについてはフジノだけでなく、ハナノも散々弄られることとなる。


弄られながらハナノはドン引きだ。

「……フジ、勝手に名前呼んで泣かないでよ」

ぶすっとしているフジノに抗議する。

「知らないよ。無意識なんだ。夢でハナがひどい事したんだろ」

「いや、だからって泣かないでよ。ていうか普通に結婚とかはするからね」

「は?誰と?何と?」

一気に鬼気迫る双子の兄。誰と、はともかく、何と、はないと思う。

「誰とかはまだ分からないけどさ、その内にするでしょ」

ハナノには今のところ結婚願望はない。でも先輩の女騎士には結婚している人も多いし、将来は自分もするんじゃないかなあ、くらいのものだ。


「その程度の心構えで結婚とかするなよ。少なくとも僕より強くないとハナの相手になんて認めない」

「父親じゃあるまいし、フジの許可はいらないよ」

「ハナ、うちの父親は底抜けののんびりだよ?父さんの許可なんてあって無いようなものだからね」

「フジより強い人なんてあんまりいないよ。そんな人探すの面倒くさいでしょ」

「ハナ、探すのが面倒なくらいなら、誰かのものになるなんて止めなよ。僕がいる」

「うへえ!」

ハナノが悲鳴をあげると、周囲の騎士先輩方も「うへえ!」と悲鳴をあげた。


 フジノの事は無視する事にして、ハナノは「ところで!」と騎士達にサーシャに言われた剣の魔法の補強の事を伝えた。何人かの騎士がさっそく剣を確かめてくれて、確かに補強がかかっているようで驚きと喜びで目を丸くした。


「マジかあ、これは嬉しい」

「やるなあ、ありがとう」

「すごいな! これは錬金術部門からスカウト来るぜ」

 心からのお褒めの言葉とお礼をもらい、ハナノはとても嬉しかった。



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