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OVER  作者: 多趣味な金龍
序章
1/24

LIMIT0:プロローグPart1

 人気(ひとけ)の途絶えた夜、日本のある港には、満月に照らされながらコンテナ上で金属音を鳴らす人物が2人。

 彼らはガントレットとトンファーを激しく打ち付け合っており、ガントレット使いは180cm以上で総合格闘家より筋肉質な日本人で、トンファー使いは200cmは優にありながらプロレスラーのようにどっしりとした体型の黒人だった。


 そんな2人は既に10分近くの長期戦を繰り広げており、まもなく勝敗が決しようとしていた。 


「フッ!」


 ガントレット使いが右ストレートを打つ!


「グゥッ!」


 相手は左トンファーで防ぎ、すかさず右トンファーを回転させてリーチを伸ばし、左脇腹に当てる!


「チィィヤッ!」「ヒュッ!」


 ガントレット使いはその攻撃を意に介さず、軽く息を吐き出すと、右脚でボディに蹴りを入れる!


(危ねぇ!)


 すんでのところで、トンファー使いは後ろへ跳躍して回避!

 あとほんの少しでもトンファーの振りが速かったならば、回避の予備動作が間に合わずにこの一撃でK.O(ノックアウト)されていただろう!


 そして、両者はしばらく向かい合い、互いにこれからどう動くか探り合う。

 ガントレット使いは余裕を持った表情で、トンファー使いは険しい表情で。

 

 しかし(このままじゃ時間の無駄だな)とでも思ったのか、ガントレット使いが相手に話しかける。


「おっさん、アンタそろそろ疲れたんじゃないか? 今ならまだ軽傷で済むから大人しくしとけ」

「へっ、クソガキが……テメェこそ……俺のトンファーが効いてるんだから……大人しくしろ……」


 先の攻撃は確かに当てられていたはず。

 ただそれでも、ガントレット使いは脂汗ひとつかかずに不敵に笑い、未だに疲れた素振りすら見せない。


 対して息切れしているトンファー使いは、致命的一撃を辛うじて【賜物(タマモノ)】と得物で防ぐ事に精一杯で、たとえ反撃をしても大抵は潰されるために思うように動けない。

 だからトンファー使い、もといハードテイストは怒りと興奮が溜まりつつあった。


(さっきから人を小馬鹿にしたような言動をしやがって……いちいち(かん)に障るガキだ。しかもあいつ、おれのカウンターにうめき声ひとつもあげねぇときやがる……が、久しぶりにミンチのしがいが有る奴が来たんだ……四肢を破壊するなり気絶させるなり、後でじっくり楽しんでやるとしよう)


 そして、ハードテイストは息を整えつつ右腕を上げ、低く構える。

 打撃の当たる面積を小さくして的を絞らせ、相手の攻撃を確実に受け止め、カウンターで渾身の一撃(フィニッシュブロー)を打ち込むために。

 

 これに耐えた者は、今まで戦ってきた相手の中で1人もいない。

 更にダメ押しにと言わんばかりに、トンファーを腕ごと【賜物(タマモノ)】で硬くさせる。


 ハードテイストの名前の由来はここにある。

 彼は常人にはない【賜物(タマモノ)】と呼ばれる力で自身の体、もしくは所持品の硬度を通常時の最大5倍にまで上げられ、その状態で原型を留めないほどにまで相手を痛めつける趣味(テイスト)を持っている所から、【教団】内では他の教徒からハードテイストと呼ばれるようになったのだ。


(さぁ来い、小僧。これで終わらせてやる)


 普通の武闘家ならここで馬鹿正直に突っ込みはせず、ハードテイストが痺れを切らすまでじっと堪えるだろう。


 実際に今現在、攻撃を当てる前に潰されるか当てても効かない今の状況への憤慨、相手をミンチにしたい欲求、これら2つは表情に出ずとも、彼の放つオーラから感じ取れるまでに達しているのだ。


 しかし、真正面からねじ伏せる事が最短最速の方法だと、効率を重視するガントレット使いは判断した。


「フー……」


 息を吸い込む。右足に極限まで力を溜めるために。


      《ドッ!》


 コンテナに穴を開けるほどに強く蹴り込む!

 ハードテイストとガントレット使いとの距離、僅か10m!


 (速いがタイミングさえ合わせればなぁ……)


 9m、8m、7m、6m、5m、4m、3m、2m、1m……


「なんてこたぁないんだよボケェ!」


   《ガァン!!!》


 鈍い金属音が鳴り響く……

 ハードテイストのフィニッシュブローは綺麗に決まり、頭蓋骨が割れる感触がトンファーを伝って感じ取れた。

 傷口からは鮮血が激しい勢いで噴き出し、彼の顔を赫に染める。


「ゲヒャヒャヒャヒャヒャ!!!  ざまぁねぇな! 俺をバカにするからこうなるんだよ!」


 だが、その喜びも束の間!


「何が……『ざまぁねぇな』だって?」


 ガントレット使いの体に黄色いスパークが纏わり始め、奇妙な風が舞い上がる!

 頭を垂れていた血はみるみる内に乾いていき、傷口は跡も残らずに癒えていく!


「馬鹿な!? 確実に頭は砕いたはず! なんで意識がある!?」


 驚きのあまり、ハードテイストは一瞬固まる!


「今度は、こっちの番だ……覚悟しろ」


 ガントレット使いはその隙を見逃さずに《ガシッ》とハードテイストの頭を掴んで引き寄せる!

 彼は必死にその手を外そうと、トンファーを手放し、ガントレット使いの腕を掴む!


「んだよこのパワー!? さっきとは比べ物にならん! 外れねぇ!」

「それじゃァ……歯ァ食い縛りな!」


(ヤバい! コレはヤバい! マジでヤバい!)


「憤ッ!!!」


 ハードテイストが立っていた部分が《ガギャッ》と凹む音が遮られ、代わりにド派手な音が響き渡る!


            《ゴッガァァァン!!!》 


 それ程までにガントレット使いの鋭い頭突きの威力は絶大な物で、それ故にハードテイストは咄嗟(とっさ)に腕で頭を覆い、硬化を全身に掛けるも、全て無意味に終わった。


「フゥ……とりあえずこれで済ませとくか……ってこれじゃ聞いてねぇな」


 体の力を抜いた青年の目には、泡を吹きながら白目を剥くハードテイストが映っていた。







 しばらくして頭突きの反動が若干ながら落ち着くと、耳に付けた小型無線機を使い、ガントレット使いは本任務の責任者に連絡する。


千紗(チサ )さん、【賜り者(タマワリモノ)】1名確保。迎えをコッチによこしてください」


 話しながら専用の捕縛道具をハードテイストに押し当てると、機械部分から発射された光線が輪を形成し、彼の腕と胴体をまとめて縛った。


『もう送っている。まもなく着く予定だ、(エツ)君』

「ありがとうございます」

『それと1つ』

「なんですか?」


 (エツ)と呼ばれたガントレット使いは、自身より一回り年上の女性の話を聞きながら、コンテナの縁に腰をかける。


『あまり自分の【能力】を過信するな。分かってはいるだろうが、君の()()は他の【能力者】の物とは何もかもが違うんだ。暴発でもされたら洒落にならない』

「すいませんね。相手が思ったより硬くてどうしても手こずったんです」

『だったら仕方無いとしてもだ。君の戦闘スタイルは自傷行為に等しくて冷や冷やする。まだ若いんだからあまり無茶はせず、帰ったらゆっくり休んでおけ。良いな?』

「了解です。それでは」


 話が済むと無線を切り、越は静寂の中で大きく息を吐く。

 そして夜空を見上げると、こうした激動に身を任せるようになった出来事を思い返す。

どうも初めまして、多趣味な金龍です。

僕の人生で初めて書いた小説、いかがでしたでしょうか。

ここまで読んでくださった皆さんに感謝します。


さて話は打って変わりますが、ここまでにいくつもの疑問が湧いているかもしれません。


【教団】とはなんだ? 【賜り者】とは何者なんだ? なぜ18歳の青年が軍用機を駆り出せるような組織に所在し、そのような輩と闘う?


それらについては次回からの話に全て書いてますので、このまま楽しんじゃってください。

それでは皆さん、また後で!

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