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リアーナ視点より。
私はリアーナ。この国の女王だ。
幼い頃から周囲の魔物がこのラバニール国への侵入し、民も疲弊・衰弱していった。国境の整備や衣食住の確保など安全面を徹底させるように父に遠回しに助言した。しかし守るだけでは到底太刀打ちできない。ついには王都内にも魔物が現れ混乱の中、国王が亡くなった。
大惜しみなんてしてられない。私は国を民を守る決意をした。
◇◇◇
私は別の世界の知識がある。そこでの生活は理解できるが、別の世界で生きていた実感はなく知識として私の頭の中には詰められていた。
誰かに話しても信じてもらえないだろう。
頭の良い大人びた子供と認識されていたが、なんとも言えない孤独感がそこにはあった。父母には愛されていたが、私のする事に一線置き、遠くから見守る姿勢がそこにはあった。やはり私を他の人とは違うと無意識的に区別していたのだろうか。それは薄い壁を作り私はずっと孤独感を抱えていた。良い子を演じていた…。
ひたすら屋敷にある本を読み漁り、魔術の習得をした。前の世界では科学はあるが魔法はない。そのため魔法は私も初心者だ。属性は氷・光と生まれつきだが、魔力量や技は私の努力だ。魔術は魔法陣の構築などで努力し、磨けば磨くほど上達した。属性の関係性や応用は前世の記憶と通じる部分もあり没頭していった。
◇◇◇
その中で王都を中心に8つの光の柱を立てれば、結果となり魔族を断てるのではとの憶測の元研究を重ねた。
しかし8つの結果を国の周りに置くことは容易なことではなかった。出発する前には新たな魔法陣を考え、効率的に魔力を流すにはと日々頭を悩ませた。
準備に時間はかかったもののなんとか魔法陣を完全させた。父は騎士団に掛け合い、私の周辺警備の為十数名と共に国中を駆け回った。騎士団も半分は冗談かと、まともに話を聞いてくれなかったらしいが、十数名も居れば上出来だ。
至る所に魔物がいたが私も氷魔法を使える為、何匹もの魔物を容赦なく倒す。
普通女性がズシ!バシ!ドスドス!!と魔物を木のようには倒さないだろう。
周りの護衛は1歩2歩と下がり、引いていたようだが私は気にしない。そんな中1人の男性からキラキラした眼差しを向けられている事に気がついた。
彼はルベラルと言う。長髪の黒髪を三つ編み垂らした後ろ姿、薄い金色の瞳、高めの身長に、整った顔立ち、防護服上からでも分かる均衡のとれた筋肉。
な、なんてカッコいい。頬に熱が集まる。
だめだイケメンとは目も合わせられない。
なんて考えていたら、ボコボコっ!!と地面から魔物が現れた。私の氷魔法は間に合わず身構えると、ルベラルが私の肩を引き寄せ火の矢で魔物を倒していた。
その瞬間私は……見事胸のハートを射止められた。
ドキドキドッドッドッ。
はぅっ。だ、だめだ。心拍数がっっ。
し、しずまれ。しししし深呼吸を。ふー。
「大丈夫ですか?何処か怪我をされましたか?」
心配した声色で尋ねられる。
フードを被っていた為少し俯き、冷静を装い無表情で答える。
「一瞬反撃が遅くなってしまいました。すみません。ありがとうございます」
「いえ当然の事です」
肩を引き寄せられたまま会話をする。あぁ、なにかいい香りもする。優しいハーブのような安心する匂い。そして私の可愛げのない返答…。
「はっすみません。今の襲撃で陣形が崩れたようです。警備に徹する為、これにて失礼致します」
さっと肩から手を離され、寂しい気持ちになってしまう。
いやいやこれから魔法陣を作らなければならないのだ。
それ後すぐに目的地に到着。
グルグル渦巻く羞恥や想いを魔力に変え、その魔力を光の柱に叩きつけるように魔法陣を描いた。いつもより多めに魔力を込めたため辺りがやたらとキラキラ雪のように舞い、光っていた。
8本の柱に魔力を込め、魔力が王都に集結するように魔力を流し無事帰還した。
その間ルベラル様には何度か助けられ、幾度か言葉を交わすも目が合わせられない。なんで私は…。
彼の周りが何故か神々しくて見てられない。
どうしてしまったんだろうか。これが恋の力なのか。と考えているうちにあれよこれよと、私は女王になってしまった。
◇◇◇
結界の功績とこの混乱を収めた実力を加味してとのことだが、老骨な周辺の公爵や武官などの思惑もあることだろう。王女のほうが業しやすいと思ってのことだろうが、そうはいくか。内心口の端を上げ笑う。
前の世界の知識もあるため私にはやりたい事がたくさんある。
あれもこれも実現するには権力だ権力!それをダダ同然でくれるのだから十分に活用しようじゃないか。
手始めに国の守りにさらに上げるために、町の建物や道そのものを魔法陣のように配置するのは当然として、
いや待て待て、その前に王配だ私ももう適齢期からすぎるから推薦する奴がうじゃうじゃ溢れるに違いない。そんな…寒気がする。私は…
あああー!ルベラル様以外考えられない!!でも目も合わせれないー!
よし!!ルベラル様を婚約者にしよう!婚約者を王女が選んでなにが悪い。ここは私の国これくらいは許されるはずだ。とにかくルベラル様をここにと考えを巡らせていた。
ポンと肩を叩かれる。
私の執事ウェルガンだ。白髪にメガネをかけていかにも執事が似合う風貌だ。公爵家の頃から、それこそ生まれた時から側にいる。なんなら父や母より私のことを熟知している。
「リアーナ様本日の予定ですが…」
はっ!そうだここは私の執務室だ。
先王亡き後、町の復興や王宮内の階級制度の見直しなどなどすることは山積みだ。
「はい。聞いてますよ」
「いえ。その顔は聞いていません」
「…はい」
「よろしいですか?では、本日はリアーナ様が申されておいでた、町自体の魔法陣地形への変更についてです。復興担当の現場のものとの打ち合わせがありまして、そのあと先王の親族との顔合わせがあります」
あー考えるだけで頭痛がする。魔法陣についての話ならいいが腹の探り合いなんかまっぴらごめんである。
「親族とはどのような意図での顔合わせでしょうか?」
「現在は離宮でお過ごしとのことです。今後の待遇についてではないでしょうか」
「好きにしておいでたらよろしいのでは?支度金は城での今までの功績などを加味して大目に渡せば辺境でのそれなり贅沢な隠遁生活になるでしょう。私は不安の種でしょうし、できれば顔は合わせたくありません」
「さようですか、しかしすでに予定にありますので変更は…。因みに城での功績はほぼありませんので支度金の金額の見積も微々たるものだと思いますが」
私は目を見開いた。
「王族だと言うのに功績がない?では普段は何をしていたのでしょうか?」
私は隅に控えていた、先王に支えていた文官を見つめる。
「はっ。申し訳ありません。ほとんどの執務は文官とその側近とで成り立ち先王は目を通し確認する程度でした」
「つまり格好だけの王族ということですか?聞いて呆れました。ますます面会はしたくありません。そのまましばらく離宮で過ごすように申して下さい。…でも問題を起こすのも困るので執務をする気があるのか確認は必要ですね。それ相応の仕事をするのなら引き続き離宮で過ごすように。出来ないなら田舎でのそれなりの隠遁生活と伝えていただいてよろしい?」
「わ、私がでございますか?!」
「ほかに誰がいるの?私は顔も知りませんし、合わせたくありません」
「はっはっい。承知いたしました」
「ではウェルガン復興担当の者を面会室へ通して」
「すでに手配しております」
私の女王生活は始まったばかり。
ここから数年ルベラルとの婚姻できず、まともに会えないなんてこの時考えてもいなかった。
誤字脱字すみません。