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あるホームセンターで受けた屈辱

作者: きつねあるき

 このお話は、2012年(平成24年)の事になります。


 あるホームセンターに行って、買い物をして現金で会計をしていた時に、かなり腹が立った事がありました。


 その時自分は4才の娘を連れていました。


 あれこれカートに入れて、3台あるレジの中央で会計をした時に、その事件が起きました。


 会計をした時の()(せん)が660円だったのですが、レシートと一緒(いっしょ)(わた)された釣り銭が、


「やけに(かる)いな?」


 と思って、(にぎ)りかけた手を(あわ)てて戻すと、何と!そこには160円しかないのです…。


 ()ぐ様、釣り銭を渡した、アルバイトで研修中の若い女性店員に、レシートと160円を見せて、


「すいません!釣り銭が500円足りないんですけど」


 と、自分が言うと、レジを打って釣り銭を渡した店員も、袋詰めをしていた店員も、只管(ひたすら)無視をしてきたのです。


(あや)しい人物かと思って無視をしているのか?でも、10円ならまだしも500円は大きいよな…」


 と思って、同じ事を繰り返して言うと、釣り銭を渡した店員が何やらレジの下の方をノールックで(さぐ)っていたのです。


 すると、1分もしないうちに自分と4才の娘は男性警備員(けいびいん)2人に(かこ)まれたのです。


「君!そこから動かないでくれるかな!」


 …と、左側にいた年配(ねんぱい)の男性警備員が、(こわ)い顔をして言うので、


「はい、分かりました」


 と、自分は答えました。


 その時、4才の娘は(おび)えていました。


「あの、すいません…、何事(なにごと)ですか?」


 と、右側にいた若い男性警備員に(たず)ねると、こちらの方をチラッとは見たものの終始無言でした。


 そこで、自分は()えて核心(かくしん)をつく発言をしました。


「あれですよね、釣り銭が500円足りないって言ったのが原因ですよね」


 すると、年配の警備員が、


「そこにいると邪魔(じゃま)だから(かべ)寄りに行ってくれないかな!」


 と、威圧(いあつ)的に言って、会話を(さえぎ)ってきました。


「ヤバい!これは釣り銭詐欺(さぎ)だと間違われて、警察(けいさつ)に突き出されるパターンか?」


「でも誤解(ごかい)()かないと…」


 と思い、年配の警備員にレシートと釣り銭を見せて、


「このレシートに書いてある660円の釣り銭が、実際には160円しか(もら)わなかったんですよ」


「でも、長引く様なら500円は(あきら)めますけど…」


 と、言うと、


「君!そういう問題じゃないんだよ!君には重大な容疑(ようぎ)がかかっているんだから、ここから1歩でも動くんじゃないぞ!」


「どうぜ、他でもやっているんだろ!もう逃げられないから観念(かんねん)しろよ!」


 と、大声で(おど)してきました。


 それでも、こちら側に落ち度はないから、警察でもどこでも行く気概(きがい)はありましたが、4才の娘も警察の取り調べ室に連れて行く訳にはいきませんでした。


 回りのお客さんからも、白い目で見られている重い雰囲気(ふんいき)の中、自分は年配の警備員に携帯(けいたい)電話で電話をしてもいいか聞いてみました。


 すると、電話をすることは(みと)めてくれたので、急いで家内の携帯電話に電話をかけました。


 しかし、何度かけても電話には出ませんでした。


 家内はいつも携帯電話をバックに入れているので、着信に気付かない事が多く、日頃からほとんど(つな)がる事はありませんでした。


 このホームセンターには車で来ていて、家内が自宅から自転車で向かうと20分以上はかかる場所でした。


 もし連絡がついたら、家内にはここまで自転車で来てもらおうと考えていました。


 そして、家内の自転車の(かぎ)と車の鍵を交換して、4才の娘を自宅に連れて行ってもらおうと考えていましたが、電話が繋がらずに徒労(とろう)に終わりました。


「仕方が無い…、警察に連行されるなら先に4才の娘を自宅に送り届けてからにしてもらうしかないか…」


 あれこれ考えていると、3人目の男性警備員が自分が会計した中央のレジの最後尾(さいこうび)に並んでいて、前のお客さんが会計をしたところでレジを()めたのです。


 レジから長いレシートを打ち出すと、適当な長さで丁寧(ていねい)に折り(たた)んだのです。


 そして、そこに書かれている金額と、レジの中にあるお金が合っているか、集計(しゅうけい)を始めました。


 集計の作業には、店側の社員も立ち会っていて、レジ係りの方にあれこれ指示を飛ばしていました。


 中央のレジの集計が終わると、すぐにレジを復旧(ふっきゅう)してお客さんを誘導(ゆうどう)していました。


 次は左側のレジを、同じ様に締めて集計していました。


 最後に、右側にあるレジを締めて集計が終わると、それだけで30分は待たされました。


 集計が終わる度にレジ係の方が、折畳まれた長いレシートを持ってバックヤードに走って行きました。


 3枚目の長いレシートが打ち出されると、それを()(わび)びるようにして何人かの社員がレジの後ろで待っていました。


 そして、最後の長いレシートを社員(みずか)らバックヤードに持って行くと、その数分後に店の(おく)から中年の女性社員が重い足取りでやって来ました。


 その女性をを見て、レジの後ろ側にいた人達は緊張(きんちょう)が走りました。


「売り場の担当者はもういいから戻りなさい!」


 それを聞いて、今の今まで大捕(おおと)(もの)(とら)えようという(いきお)いだった社員の方々は、一斉(いっせい)に散って行きました。


 その直後、自分と4才の娘の近くで物々しい雰囲気で(たたず)んでいた警備員2人にも、


「警備員さん!あなた達も下がっていいですよ!」


 と、言いました。


 年配の警備員は、眉間(みけん)(しわ)を寄せながら小声で、


「店長、どういう事ですか?」


 と、聞くと、中年の女性社員は、


容疑(ようぎ)が晴れたのでもういいって言っているんです、早く持ち場に戻りなさい!」


 と、(するど)眼光(がんこう)(すご)んできました。


 警備員3人は、ばつが悪そうに引き上げて行きましたが、若い男性警備員だけはこちらに向かって一礼(いちれい)しました。


 しかし、年配の警備員にグイっと(こし)を押されたので、そそくさと去って行きました。


 そして、中年の女性社員の方はこう言いました。


「全部のレジを締めて集計をしたところ、500円多かったのでこれが釣り銭になります」


 と言って、汚い物でも(あつか)うように、500円玉をつまんで突き出しました。


 自分は500円玉を受け取りつつ、


「はぁ~?」


 と、思いました。


 ここまで受けた(はずかし)めに、それだけで()まされるのは、さすがに辛抱(しんぼう)なりませんでした。


「あのさ、自分と4才の娘はレジの後ろで警備員に2人に囲まれて、30分以上も他のお客さんからずっと白い目で見られていたんだよ!」


「これが釣り銭ですだけじゃ、余りにも(ひど)いんじゃないですか!」


 と、言うと、中年の女性社員は顔色一つ変えないで、


「これが仕事ですんで、(うたが)いは晴れましたんでもうお帰り下さい」


 と、()()なく言われました。


 はらわたが()えくり返る思いでしたが、4才の娘を連れていたので極力(きょくりょく)冷静に話しました。


(たし)かにあなたがレジを打った訳じゃないし、それが仕事と言うのは分かります」


「ですが、結果的に釣り銭を渡した店員の方が間違えた訳だから、その方に一言謝罪(しゃざい)してもらえないですかね?」


 と、(きわ)めて妥協(だきょう)した提案(ていあん)をすると、


「えっ~、そう言われましても~」


「いくら社員といえど、店員に謝罪をさせるという権限(けんげん)はございませんので出来ません!」


 と、(かたく)なに(こば)むのです。


 どうやら、ここで謝ってしまうと会社側が非を認める事になるので、悪魔(あくま)でも(とぼ)けようという魂胆(こんたん)なのでしょう。


 さっきまでの強硬(きょうこう)態度(たいど)とはまるで正反対になり、明らかに口調が変わりました。


 そこで、謝罪をするようもう一押ししてみました。


「何ですいませんの一言が言えないんですか!」


「こっちは30分以上1歩も動かずに子供を(なだ)めていたのに…」


 レジの後ろで、自分と中年の女性社員が口論(こうろん)になっている時に、長身の男性社員が近付いて来ました。


 そして、(おもむろ)にこう言ってきました。


「その店員ってどなたですか?」


 自分は、会計をした中央のレジを見ると、釣り銭を間違えた若い女性店員はいませんでした。


 どうやら店側は、自分とトラブルになるのを察知(さっち)して、先手を打って若い女性店員をバックヤードに連れて行ったようでした。


 そこで、4才の娘の手が(あたた)かくて(ねむ)さの限界だったので、()っこするとすぐに眠ってしまいました。


 結局、間違って釣り銭を渡した店員だけでなく、どの店員からも一言も謝罪がないまま店を後にしました。


 唯一(ゆいいつ)の救いだったのが、若い男性警備員に一礼された事でした。


 それ以降は、このホームセンターには、二度と行かないと心に決めました。


 人間誰しも間違いはありますが、企業でありながら(あやま)ちを過ちと認めずに、隠蔽(いんぺい)するとは開いた口が(ふさ)がりませんでした。


 この一件があってから、現金で買い物をするのが怖くなり、極力電子マネーかクレジットカードで決済(けっさい)するようにしました。


 どうしても現金しか使えないお店だったら、釣り銭を確認するまでは決して掌は閉じない様にする事にしました。


 ただ、この一件でレジの下には非常ボタンがあるというのだけは分かったのと、冤罪(えんざい)でも容疑が晴れるまでは帰れないという事だけは分かりましたが、同じ様な目に()った方はどれくらいいるのでしょうか?


 もし、皆さんが自分のような仕打ちをされたら、どんな気持ちになるでしょうか。


 とても嫌な気持ちになりませんか?


 このホームセンターが、今後全く態度を改めなかったら、第二の被害者が出ているのかも知れませんが、そうならない事を(いの)るばかりですね。


 今回のお話しは以上になります。


 ご拝読頂きましてありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] どこのホムセンですか?
2023/05/09 01:07 エンジンオイル
[良い点] よく耐えたと思います。 [気になる点] 聞いた話ですと、悪質な店員はつり銭の小銭を抜いて渡す場合があるとか。しかも常習犯。 だから現金が怖いかというと、私はそうでもないと思います。 む…
[良い点] もし今後、同様のことがあれば、『気持ちが落ち付いた後で』、そこのお客様相談窓口や本部連絡先に状況を伝えるべきだと思います。 ただし『腹いせのための攻撃』でなく、『改善のための情報提供』を意…
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