生産牧場の日常と出産ラッシュ
牧場に新しいメンバーが加わる
俺はプラチナの散歩から戻るとその足で
マロンの馬房に入り浸る毎日を送っていた。
今のところはプラチナとマロンの相手をするだけだからな
それなら仔馬の面倒もいっしょに見ればいいだけ
「天馬もその子に夢中ね私もどれだけ見てても飽きないけど」
「お仕事はいいの?」
「問題ないよ プラチナのお陰で朝も4時から起きて
食事の支度も厩舎と馬房の掃除も終わったから
夕方までは暇だよ」
「それならいいけど でも今更だけど
ほんとに私でよかったのかしら?
私はもう引退したただの牝馬なのよ
私よりもこの子を手元に置いておいた方が
牧場のためにもよかったのではないのかしら」
「マロン 俺は損得だけで君を選んでいないよ
マロンは、俺にたくさんの夢や希望を与えてくれた
その貴重な思い出と比べたら 今でも君を選ぶよ」
「もう、天馬のバカ プラチナさんがいなかったら
貴方に惚れていたかもしれないわね」
ちょうどそのころ この牧場へ馬バスが到着した
美鈴と奈々が手分けしてバスから降ろし
2頭の馬を厩舎へ連れていった。
美鈴と奈々が2頭を馬房へ連れて行くとマロンの馬房の中で
天馬がマロンと熱く何かを語っている光景が目に入る
「天馬、浮気なの もう私に飽きたのね
やっぱり 白毛がいいんだ
茶色じゃダメなんだ」
「パパ、ローズのこと捨てないで
ローズなんでもするからね」
ローズ若い娘さんが使う言葉じゃありませんよ
寒くない季節なのに体中が震え悪寒が走り
脂汗をかく、天馬は恐る恐る後ろを振り返る
馬房の外から2頭の親子が冷たい眼差しで俺を見ている
「いや、これは メリー、ローズ
これにはいろいろあるんだよ
浮気じゃないから 浮気したのプラチナだから」
「やっぱりマロンが産んだ仔馬は
プラチナが種付けしたのねあの駄馬め」
怯えたプラチナは馬房の隅で隠れている
隠れても丸見えですからプラチナさん
「メリー聞いて頂戴 プラチナさんを誘惑したのは
私なのよ 私が種付けしてくださいと
お願いしたの 彼は私の願いを叶えてくれただけなのよ
だから責めないでね」
「マロン勘違いしないでね ワタシ怒っていないから」
十分お怒りですよね メリーさん
「怒っている相手は、貴方じゃなく男のほう
まあ、天馬は昔から栗毛と白毛馬が好きと公言
しているからまあ、今更だし だから
私が怒る相手は、プラチナよ」
「プラチナはいつも私に種付けするとき
他の牝馬には仕方なく種付けしてるだけで
俺の好きな牝馬はお前だけだといってくれたのに
あの言葉は嘘なのかしら」
プラチナのいる馬房から寝藁の擦れる音がして
プラチナが立ち上がり馬房の入口から顔を出す
「メリー俺は、本気でお前を愛している
これは今でも変わらないと誓う
ただ、その愛する牝馬がもう1頭増えただけなんだ
だから浮気ではない」
まあ、そうだよな 俺もいろいろ
現役の馬から聞くけどほんとこいつを好きな
牝馬多いからな それでもこいつが好きなのは
メリーとマロンの2頭だけだと思うが、まだいるのか
「メリー プラチナのいっていることは事実だ
プラチナ今でも現役の牝馬に人気あるんだよ
ローズといろんなレース出たけど
どこでも プラチナさん元気ですか
私プラチナさんのファンなんですよって
俺に話しかける牝馬はいたよ」
「天馬に言われなくてもわかっているわよ
でもね 女としてはやっぱり
自分だけを見てほしいと願うものなの」
「ママ、いじらしいよね ねえ パパもそう思うよね」
「勿論だ メリーは1番可愛いいよ」
「それじゃあ、ローズは、2番だね」
「もう、いいわ どうせこれからもここで暮らすのだし
マロンとも仲良くしたいしね」
「ありがとう メリー これからもよろしくね」
「よろしくね、愛人さん」
「え、ワタシ 2号さん確定なの」
それよりも問題は仔馬ね メリーは白毛の仔馬を見る
「天馬の頭の中は私やマロンより
その仔馬に夢中なのね」
「メリー聞いてよ 天馬は朝から晩まで
この子ばかりを構うのよ
その間 私のことはほっとくし」
そこで俺も意見があるとプラチナも発言する
「俺のことだってな 朝の散歩以外
見向きもしないぞ」
牝馬3頭の眼差しが冷たく感じる天馬と
なんか牝馬3頭に責められているような雰囲気
「なんか、天馬がいじめられているようね」
「でもこの牧場もやっと繋養馬増えてきましたね
これで奈々のやる気も満タンですよ
だって皆さん 名馬ばかりなんですから
私、友達に自慢しちゃいますね~」
奈々はポケットから新型スマホを取り出しレンズを馬たちに向ける
「いいですか、皆さん こっち向いてくださいね~」
奈々の声に反応した 馬たちがスマホを見る
「いいですね~その顔いただき 撮りますよ」
この時 奈々の友人達に送られた画像は
友人の手から競馬ファンのサイトへ拡散され
「ナニコレ 天国 行きたいな~」
「何処の牧場に繋養されてるの」
「引退馬だけど実力では今でもG1取れる面子ばかりだな」
「おお、我が天使 ローズちゃんがいる~」
というコメントが競馬ファンサイト中に広がる
今後牧場での勤務時間中は写メ禁止になりました。
それまで普通にしていたメリーの様子がおかしくなる
「あれ、ううう、 天馬 大変」
「どうした、メリー どこか痛いのか」
「私も 生まれそうなの~」
「何だと それは大変 美鈴、奈々 お産の準備急げ」
それからは、俺は念のため獣医さんを呼びにお義父さん
のところへ走り 美鈴と奈々はお産の準備
そして、夜中の3時ごろ 無事に産まれました
既に3頭産んだ経験もあり安産でした。
お姉さんになるローズが
馬房の扉からから中を覗きこむ
「ねえ、ママ 男の子それとも女の子」
メリーも手慣れた手つきで仔馬を綺麗にしている
俺も乾いた綺麗なタオルで仔馬を優しく拭く
胎盤も綺麗に取れてくると毛並みが鮮明になる
栗毛は間違いないな でも頭の毛とタテガミは白色
同じくシッポも白色 ローズよりも白っぽい
ローズは金色に近いからな
それにしてもこの子も可愛いいな性別を確認すると
「おおお、メリーやったな 見事な女の子だぞ
相変わらず ママ似て可愛いい仔馬だぞ」
「もう、天馬はいつもそれね」
「さあ、あとは 頑張って自分の力で立ち上がるんだ」
俺は 胴体を持ち上げて 立ちやすいようにするが
胴体に比べて手足が長いため
どうしてもバランスがとりにくい
母親であるメリーも 頑張れと後押し
1時間が過ぎたころ 手足をぷるぷるさせながら
見事に立ち上がる
やはり何度見ても感動するな
よたよたしながら ママのオッパイを求めて
歩きなんとかたどり着く
よし、これで一安心だな
「天馬お疲れ 後は私と奈々が見るから
暫く母屋で仮眠したら」
「美鈴 ありがと そうする…」
パタンと倒れて寄り添うのは
メリーのところ
「わたしは母屋でといったけどほんと天馬はメリー大好きね」
メリーも迷惑な顔を見せず天馬の顔を舐める
「お疲れ様です 」
「パパの顔 ほんと嬉しそうだね」
「安心したのよ 私も天馬の近くだと安心するのと同じね」
こうして天翔牧場に2頭の仔馬が加わりました。
しかし、この仔馬のことでまた天馬が暴走します。




