安奈編 研修が始まる
研修制度の話 あまりよくわかりませんでした
曖昧な表現をお許しくださいませ
馬専門の研修施設あるのでしょうか?
入学してから3年目を迎え 今年からいよいよ研修も始まる
前期3年と4年で1年間 後期5年と6年で1年間が研修期間となる
この研修2年間現場での実習が行われるが研修医として給料もいただける
※簡単に調べた感じでは月に約23万くらいでした。
研修はどこで行うのか?
大学により当然違いはあるようで大学付属の病院での研修にて内科、外科
皮膚科、放射線科など順次周り研修を行う
大学により産業動物の牛など診察する医療機関があります ただし往診ではなく
病院へ連れてこないといけないみたいです。
それで安奈と穂香の研修先は何処でしょう?
穂香の視点です
いま私は研修で天翔ホースパークにいます
安奈に研修はやっぱりホースパークなの?
と何となく聞いたところ
「穂香もうちへくる?」
と誘われ私は二つ返事で了承した。 将来お世話になるところだ
いい研修になるだろうと その間どこで寝泊まりするのか?
安奈は自宅なので問題はなくわたしは社員寮から出勤することになる
まず久しぶりにホースパークへきて驚いたのは
○○○モールが出来ていた。
休みの日の買い物もずいぶんと楽になる 店内には飲食店もあるしね
でもホースパークの中のレストラン天翔の客足にも影響あるよね
と安奈に聞いたら
「影響ね、あるよ前より予約が取れないと
お客さんからクレームが増えたかな」
安奈の返答が予想外だったから詳しく聞くと
「レストラン天翔は来場者限定だから近くにお店ができても
問題はないよ 以前から評判の店だしね
逆にモールが出来て わざわざ入場料払いレストラン天翔へ
料理を食べに来てくれるようになったから
料理長が料理人不足で満足な料理を提供できないと
ボヤいているみたい」
「それと安奈 レストラン天翔って予約制なの?」
「まあ、予約といっても開園してから店にいくと
店の前に椅子が並んでいてテーブルの上に
名前を記入するところがあるから
それに記入すれば順番になると携帯に連絡が来るの
その時に料理も注文することになるね
どこかの回る寿司店と同じだよ」
「でもさ 安奈あと2年すれば翔平も帰ってくるから
人手不足も解消されるよね
まあ フランスでもモテモテで何人ものパリジェンヌを
泣かせたらしいけど」
「何人も泣かせたなんて人聞き悪いこと言わないの
わたしが聞いたのは店のオーナーの娘さんだけだよ
翔平は真面目に修行してるからね」
「それもこれも安奈のためでしょ
この幸せものめが」
「そっか 翔平帰ってくるんだね
帰国早々 告白されたりして
いや それはないか 安奈もまだ資格取れてないし
翔平もレストラン天翔で修行の続きもあるだろうし
それより先に梓と健太の挙式がさきね」
「そうだね 梓と健太は婚約もしてるし
今も同棲してるのと同じだしね
幸せになってほしいな 幼馴染としてもね」
「わたしたちも頑張ろうよ
ホースパークの医務室の仕事大変らしいし
最初私も知らなかったけど馬の患者さん
このパークと天翔牧場の繋養馬だけでなく
苫小牧市内の牧場の医療もここでやってるんだものね」
※小規模の牧場での研修ではいろいろな経験積めませんから
被験者は多いほうが臨床獣医を目指す二人には
メリットがあります
「まあ、ほとんど電話で往診の依頼が多いけど
馬バスで運ばれて来る場合もあるかな
パークの獣医は皆優秀な人ばかりだから安心だよ」
安奈はわたしを天翔牧場で雇用してくれるけど
私みたいな新人獣医本来雇ってはいない
皆さん優秀でDRAでの経験が10年以上のベテラン獣医さんもいる
そもそもパークでは獣医の求人を出したこともない
これは大学の教授から聞いたから間違いでなく
私たちが資格を取りパークへ就職できたら大学のパンフレットに
卒業生の進路にホースパークと記載できると喜んでいました
卒業後の就職先は願書を提出する学生にとっても重要で
競走馬の生産牧場で天翔牧場の名前を知らない人も
いないからこれはアピールポイントになるだろう
それと今年からDRAが新たな取り組みを開始した
現在の獣医師不足を補うためレース中に負傷した馬の怪我の治療を
競馬場の近くで働いている獣医師資格者に応援依頼をすることとなった
どういう事か?
日本では犬や猫などぺットを飼育されている家庭は多いが
それに対し動物病院の数も獣医師も共に不足してる
日本で獣医学部がある大学は十数校あまり
募集定員も少ないため獣医になりたくてもその門戸は狭く
慢性的な獣医師不足は解消できていない
それはDRAでも同じで競馬場で勤務している獣医で通常業務は
こなせているがレース開催日に1レースで複数の落馬転倒事故が
発生した場合にはまず対応できない現状がある
その現状をなんとかするための応援システムだ
獣医師が足りなくなった場合に登録されている獣医師に連絡がいく
その連絡を受けた獣医師が応援可能であれば最寄りの競馬場へ
出向き競走馬の治療にあたる ※報酬もいいとのこと
安奈の母親の明菜も当然登録されていて管轄は函館と札幌競馬場の2つ
応援要請があればヘリで現地へ向かうことになる
そんな夏のある日に明菜の携帯にアラートが鳴る
場所は札幌競馬場 メイン11レースにて落馬事故発生
3頭が巻き込まれそのうち1頭は軽傷だが
他の2頭の怪我は軽度の剝離骨折と予後不良と判断され安楽死処置
される重度の複雑骨折と診断 今現在軽度の骨折した馬の施術中
とメールが送信されてきた。
明菜は叫ぶ
「安奈 出かける準備してヘリで札幌競馬場へ行くわ
穂香さんは佐橋君の助手をお願いね」
「はい、お気をつけて」
「安奈 頑張ってね 出来ることなら助けてあげて」
穂香も獣医の卵だ 複雑骨折が予後不良になることは
承知しているが 安奈ならなんとかしてくれると
願いを込めた
「穂香 大丈夫 任せて」
2人を乗せたヘリが札幌競馬場へ飛び立つ
札幌競馬場 医務室では馬主と職員が話し合い中
「先生 どうしてうちの子 手術しないのですか?」
困り顔の獣医
「加藤さん 先ほど説明しましたがホワイトノエルの症状は
DRAでは予後不良と判断し馬主の了解を得て
安楽死処置されるのが通例なんです
もう1頭のほうは運よく軽度の剥離骨折なので緊急手術で
対応しています。どうかこのまま安らかに逝かせてください
強引に手術したとして別の病気や怪我で苦しむだけなんです」
苦渋の決断を迫られる加藤
「たしかに過去には無理やり手術して延命治療しようとして
最悪の結果を招いた事例は私も知っています
でも昔と違い今の医療技術ならなんとかなるんじゃないのですか
DRAでも数十年前ソラシドの命救えたじゃないですか
今回の事例と何が違うのでしょう その時治療した獣医さん
ここへ呼んでください わたしがお願いしますから」
「わたしも治療してレースへ出したいわけじゃない
ただこの子には長生きしてほしいだけなんです
長生きして繫殖牝馬となってこの子のような
可愛いい白毛の産駒を産んでほしいただそれだけなんです」
「加藤さん 残念ながらその時治療された
獣医の相良先生は既に引退されています
わたしでは力不足で施術ができません...」
「そうですか...ノエルすまん
わたしの我がままでお前に辛い思いを
させてしまったな 馬主失格だな
どうか許してくれ」
加藤はノエルの頭を優しく撫でた
「それでは加藤さん こちらにご署名お願いします。」
書類は安楽死処置に関しての同意書でしょうか
その時DRAの職員が医務室の扉を開けて入室し
「田中先生 いま応援の獣医の方がお見えになりました。」
田中時計を見てつぶやき
「ずいぶんと速いな まだ連絡入れて30分たっていないぞ
運よく近くにいてくれたようだな
それで誰が来てくれた?」
誰が来てくれてもこの状況は変わらない 弥生先生も引退されているし
いや 相良明菜先生ならなんとかしてくれるかもしれんが
そんなにうまいこと現れないよな
職員
「はい、天翔牧場の相良明菜先生です。ドクターヘリで
到着されました。」
驚く田中 加藤さんはほんと運がいいいようだ
「すぐにこちらへ通してくれ 急いでな」
「はい、わかりました」
加藤は誰が来ても同じだと考えていたが
「加藤さん もしかするとノエルの命助かるかもしれません」
田中の言葉で顔をあげ
「なぜですか? 治療できる獣医はいないのではないのですか?」
「先ほど お話した弥生先生の娘さんが相良明菜先生なんです
このかたは今の日本の獣医師の中で5本の指に入る名医なんです
過去にも複雑骨折も治療されてその馬もまだ存命中です
明菜先生ならなんとかしてくれます」
この先生も他人任せですね
明菜が医務室へ入ると加藤が明菜の両手を握り
「相良先生どうかこの子の命助けてください」
いきなり手を握られ驚く明菜先生
「馬主の加藤さんですね 獣医の相良明菜です
わたしに任せてください 必ずホワイトノエルの命
救ってみせます それと横にいるのが
研修医で娘の安奈です」
「相楽安奈です よろしくお願いします。」
加藤は明菜にノエルを託し部屋から退出した。
明菜はレントゲン検査など資料を見て
術式を考え 馬に負担が少ない方法を模索し
「じゃあ 始ましょう 安奈 サポートよろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
安奈は局部麻酔が効いてきたノエルを撫でて
優しく問いかける
「ノエルちゃんは私が必ず助けてあげるから
安心してね」
少々驚くノエル
「え、念話 まさか使徒様ですか?
使徒様に看取られるなんて
わたしはいつ死んでも後悔はありません」
安奈
「ノエルちゃんは死なないよ
長生きして繫殖牝馬にならないとね
馬主の加藤さんの願いだから
頑張ろう」
「そうですね 優しい馬主さんのために
頑張ります。」
次回へ続く
また新たな牝馬が天翔牧場で繋養されるようですね