もしも白毛の馬と出会っていたら ミソラ編 ②
いよいよ凱旋門賞ですがメインは別の話です
フォワ賞を快勝し国内の競馬ファンの方々は久しぶりの国産馬の
凱旋門賞勝利が現実味を帯び盛り上がりをみせていた
「和馬さん いよいよですね
洋芝への対応も問題ないようですので
欧州の有力馬の参戦状況にもよりますが
数十年ぶり国産馬の優勝に期待がもてます」
馬房の中で和馬はミソラと仲良く遊んでいた
周りの馬房からも馬たちの視線が注がれている
「ミソラも先日のレースで洋芝にもなれたので
今度のレースも天候次第ではありますが
疲労もないし大丈夫いけますよ」
佐々木さんも笑顔だ
「それを聞いて安心しました
今年の凱旋門賞は有力馬が目白押しですが
予想では人気ナンバーワンはミソラです
なんか嬉しいですよね 自分の調教した馬が
一番になるのわ」
佐々木さんはごきげんようですね
「ミソラあまり気にしないで楽にいこうね
クラシックと違って今年ダメでも来年も
挑戦できるから 楽しんでくるといいよ」
「パパはミソラが負けると思うの?」
自信がありげな顔で和馬をみて
「ミソラは勝つよ パパの娘だからな
日本でもママたちが応援しているよ」
「そっか パパとママもためにもミソラ頑張るよ
勝ったら また遊んでね」
「ああ、もちろんだよ」
数日後 優勝の楯を手にした佐々木さんが嬉し泣きしている映像が
世界へ配信された
ミソラの体調変化により4歳での引退を決めた
以前から早熟だねと言われていたが
無理して走らせる必要もないので12月のチャンピオンズCが
最後のレースに決まった
どうしてアリーナ記念でないのか?
ミソラが最後はダートで締めくくりたいと
俺にお願いしたからだ 娘のお願いは必ずかなえるのが俺の心情でもある
12月初旬 天候晴れ 札止め御礼 入場規制です
レースは最後の花道を飾るように先頭でゴールを駆け抜けた
引退式ではたくさんのファンの方に見送られ競馬場を後にした
今年度の年度代表馬ミソラ 引退後は繁殖牝馬になります
月日は流れ山崎麗華と相良和馬の結婚式が
札幌の教会で行われた
式は身内と関係者のみ参加で行われ後日東京で披露宴が執り行われます
まあ、理由は麗華の関係者が大物すぎて札幌では参加が
難しいからという理由です
現役の総理大臣とその閣僚とか経済連会長とか日銀総裁とか
そんな人たちが参加する披露宴ですよ ああ胃が痛い
披露宴が無事に終わり和馬と麗華は成田からイギリスへの
新婚旅行へと旅たって行きました
空港の到着ゲート付近で手荷物を持って歩く二人
「麗華こっちだよ 出口で姉さんが待っているはずだよ」
自動ドアのゲートを出ると姉さんが手を振っている
「和馬、麗華さん こっち こっち」
和馬も手を振り返し
「姉さん 迎えに来てくれてありがとう」
麗華も
「青葉さん お世話になります どうぞよろしくお願いいたします。」
青葉姉さん
「もう、麗華ちゃん 今日からはお姉さんでいいよ」
照れる 麗華だが
「それじゃあ お言葉に甘えて
青葉姉さんと呼ばせていただきます」
「うん まあ 最初はそれでいいか それじゃあ行きましょう」
空港から約1時間高速を走りトムさん所有の牧場周辺へやっと到着
まあここからがまだ先が長い
牧場へ到着後 トムさんに挨拶を済ませると
青葉に連れられ向かうは厩舎
「それじゃあ 和馬頼んだわよ この厩舎内の馬は
来年デビューする予定の馬たちだから
健康状態とかいろいろ頼むわね」
麗華にはまだ念話のこと秘密にしてるため言葉を濁す
「了解だよ 順番にいこうか」
和馬は馬房内へ入り 各馬たちの情報を念話で取集
その都度 青葉へ伝え 情報を記録する
麗華も和馬達といっしょにいるけど何をしてるのか
わからないだろう まあいずれ和馬に聞いてくれ
取り敢えず厩舎内での情報取集が終わり
別の厩舎内を抜けて母屋に帰る際に不意に和馬の耳に念話が
「そこのあなた天馬さんの関係者のかたですか?」
足を止めた和馬が周りを見ると1頭の牝馬と目が合う
和馬は青葉に麗華を連れて先に戻ってくれとたのみ
何かあるのだろうと考えた青葉は麗華を連れていってくれた
和馬は声がした馬房へ近寄り
その馬房のネームプレートにはミステリーグレイと書かれていた
「ミステリーグレイさんですね 私は相良和馬といいます
天馬さんは私のひいおじいちゃんで天翔天馬といいますが
間違いないですか?」
グレイさんは頭を上下に下げ
「はい、間違いありません わたしを勝てるように
調教してくれた恩人の名は天馬さんと美鈴さんです」
ひいおばあちゃんの名前が出た時点で間違いないと確信した
和馬はグレイに自分が神様の使徒であること馬の国の話は
聞いていると説明した。
グレイさんは驚いていた
「和馬さんは使徒様なんですね 大変失礼しました」
和馬は聞いた
「それよりもグレイさんのような優秀な馬がなぜ転生されたのですか
馬の国でのんびり暮らせていたのではないのですか?」
グレイは
「転生前のわたしは3歳未勝利で引退して繁殖馬になれず
安楽死処置され馬の国へ行きました
神さまにこの国でのんびり暮らせますねと聞いたところ
あたなたG1未勝利なので残念ですが時期を見て転生していただきます
と笑顔で言われました」
なるほど馬の世界も甘くないんだG1勝たないとのんびり暮らせないなんて
神さまもずいぶんスパルタなんだな
「グレイさん質問なんですが グレイさんのように馬の国の記憶を
持ったまま転生できる馬もいるのですか?」
グレイさんは頭を左右にふり
「おそらくイレギュラーだと思います。わたしと同時に転生した
馬が天馬さんとこのG1未勝利の馬でしたので
私もその恩恵を受けたのではないかと思います」
グレイさんの話ではその牝馬の名前はチャコチャンと言うらしい
天馬さんと神様との間でかわされた密約かもしれない
確かに記憶消されて忘れられると寂しいからな
それとグレイさんはイギリスのレースでG1を2勝した
優秀な繁殖牝馬で今年で6歳とのこと
別れ際に是非日本へ連れていってと頼まれてしまった
理由は天馬さんが作った牧場が見たいのと繁殖牝馬として
貢献したいとの理由だ
グレイと別れ俺はトムさんと姉さんを交え交渉した
「ミステリーグレイを譲ってください
天翔牧場には今のところ2頭しか繫殖牝馬がいません
ミステリーグレイのような優秀な牝馬が必要なんです」
和馬は当初トムさんがごねると考えていたが
ミソラの産駒の優先権と婚約祝いの意味もあり
譲ってもらえることになった
トムさんの牧場での滞在も明日迄となり競馬場へ行くことになった
最初はみるだけで馬券の購入は考えていなかったが
パドックで馬たちの会話が耳に入り
試しにと購入しそれが万馬券になった
その日の夜の夕食時に俺はトムさんへ
グレイの代金ですと小切手を手渡した
トムさんも金額を見て驚いていた
グレイの購入代金の全額を支払ったからだ
翌日空港で紫苑のご両親と今枝厩務員さんへの
お土産も購入し故郷へ帰る
ホースパークへ寄り道し父さんへグレイの売買契約書をわたし
久しぶりの我が家へとご帰還
今日は積もる話もあり紫苑と麗華は同じ部屋で寝るそうだ
俺は厩舎へ行きシオンとソラシドへ挨拶しミソラの元へ
「え~和馬 ここで寝ないの~ ミソラばっかり贔屓よ」
念話でシオンとソラシドの妬みがきこえるが
気にしないでミソラの馬房のなかへ
「ミソラ ただいま 寂しかったかい」
拗ねたミソラは最初後ろを向いていた
俺はミソラへ近寄り思いきり抱き締めた
「ごめんな もう置いていかないから」
「...ほんとに」
「ほんとだ 約束する」
「…じゃあ今回は許してあげるよパパ」
和馬はその日から1週間娘の馬房で寝泊まりして
ミソラの機嫌がよくなったが
シオンとソラシドはまた拗ねた
レースの話を省略してすいません