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懐かしい 昔の思い出

天翔牧場開設後 まだ会員イベントを開催していたころのお話です

俺と妻と娘の3人は久しぶりに天翔牧場で宿泊することができる


一応会員の特典ではあるが平日でも一組限定の


制約があり複数の申し込みがあれば抽選になるからだ


俺が牧場のプラチナ会員になれたのはほんとに偶然のことで


たまたま閲覧した動画に会員募集の案内が添付されていたのが


きっかけだった。


それから数年後今はもう募集はされておらず今では幻のプラチナ会員


と世間では言われている


会員の特典は宿泊施設の年1回の無料券とイベントへの参加権利


今回は平日の宿泊なのでイベントの参加はないが


それでも競馬好きなら至福の時間が味わえる空間がここにある


ただ以前よりもアクセスはよくなくNRの日高本線は苫小牧から


鵡川までとなりそれ以降様似までは廃線になってしまった牧場


最寄りの静内駅も廃駅となりバスもないため苫小牧でレンタカーを


借りることになる 数時間のドライブが終わり牧場敷地内の駐車場へ


車を止めて向かうは厩舎横の事務所兼案内所


娘は周りの放牧地に放牧されている馬を見てはしゃいでいる


この辺りはすべて私有地で関係者以外は立ち入ることはできないため


不審な見学者も当然いない


ただ残念なのは天翔牧場の厩舎に繋養されている馬すべて


現役の種牡馬と繫殖牝馬のため厩舎内へ立ち入ることはできないため


見学時は中庭に面した馬房の窓からのぞく見学に限られる


それでも宿泊施設のバンガローも中庭にあるため運が良ければ


施設からでも繋養馬を見学できるとのこと


『カランコロン』


案内所へ入ると綺麗で小柄な女性が椅子から立ち上がり


「ようこそ天翔牧場へ本日宿泊の東京からおこしの田中様ですね

お待ちしておりました。 わたしは天翔美鈴と申します

どうぞよろしくお願い致します。」


「田中です。よろしくお願いいたします。」


美鈴に対し田中さんご夫婦も挨拶を返す


そこで宿泊に対する注意事項とか設備の説明を聞いて

宿泊先のバンガローは向かう4人


バンガローの横の家族で入れる牧場自慢の温泉施設

の横を通りすぎ美鈴がカギを開けて田中さんご家族と中へ

入り設備の説明と諸注意


「それと申し訳ございませんお食事は提供できませんが

準備はよろしいですか?」


田中の奥さんがレジ袋を見せて


「はい、問題ありません 準備万端です。」


美鈴はそれを見てひと安心の表情をみせ


「ありがとうございます。ゴミなどは

こちらで引き取りますので遠慮せず

出してくださいね」


一応台所横にはゴミ箱があります

流石に楽しい旅行でゴミは各自持ち帰りは

可愛そうだと天馬は規則を改定した


「それと厩舎内は立ち入りできませんが

中庭と放牧地は自由に散策していただいて

かまいません 記念写真を撮られる場合は

牧場の厩務員へお気軽にお申し付けください。」


美鈴は最後に会釈をしてバンガローから

立ち去っていった


幼い娘さんは窓をあけ馬房から覗いている

ローズを見て手を振りはしゃいでいる


「今の女性の方が天馬さんの奥さんの美鈴さんよね

現役の騎手のころと変わらずお綺麗よね」


旦那もそれには同意する


「そうだね それと騎手と言えばもう一人の

厩務員の女性も元騎手の奈々さんだよ」


「まあ、それじゃあ奈々さんにも会えるかな」


このご夫婦はもともと競馬場で知り合い

それが縁で結婚された競争馬好きのご夫婦


1時間ほどバンガローで休憩をして


早く馬を見に行こうと娘にせかされ

3人でバンガローを出たところでサプライズに出くわした


厩舎から出てくる天馬とプラチナシップ

その横には騎手の楯さんの姿があった


妻が田中の腕をつかみ興奮気味に


「あなた楯さんよ こんな近くで会えるなんて奇跡よ

ねえ どうしよう 私変じゃないよね」


田中の妻の美佐江は大の楯騎手のファンだった


田中さんご夫婦の横を通るとき天馬と盾さんは

田中さんご夫婦へ挨拶をする


「こんにちは」


そこで美佐江さんは大胆な行動にでる


「楯さん わたしあなたの大ファンです

よろしければ サインください」


楯さんへ頭を下げお願いする美佐江の手には

白い帽子と黒のマジックペンが握られていた


楯さんは、にこりと微笑み


「いつも応援ありがとうございます。」


手慣れた手つきで帽子に丁寧にサインをして

美佐江に手渡し受け取った美佐江さん


「ありがとうございました それといいですか?」


ついでとばかりに

主人にスマホを渡して記念撮影を頼んだ。


この後は当然 ご主人と娘さんもいれて


ご家族3人と楯さんの記念撮影を天馬が受け持ちました。


プラチナも交え和やかな空間ですね


楯さんとプラチナシップを見送り

天馬も家族に挨拶をして別れた


3人で放牧地を散策しながら

いまだ興奮冷めやらぬ妻美佐江


「あなた今日は人生最高の日よ

大好きな楯さんに会えてサインまで

いただけるなんてほんときて良かった」


「よかったね また来ようね」


旦那さんも函館競馬の開催日に合わせて

スケジュール調整もして泊まる日も

レース開催日をさけ平日にした


まあ偶然にしろ妻の喜ぶ姿が見れただけでも

今日きてよかったと感じているだろう


その夜 妻の手料理を食べて翌日は

娘さんへのサプライズがあった


娘さんのお気に入りはエクセレントローズ


昨日は馬房から覗く姿を見てはしゃいでいたが

まさか目の前でその姿を見ることができるとは

考えていなかったであろう


現役の繫殖牝馬は基本関係者以外見学はできない

繫殖牝馬を引退したあとであれば見る機会もあるが

現役中なかなか難しいが天馬はやってくれた


翌日の朝 放牧地へ連れていく際に


エクセレントローズを田中さんご夫婦の元へ連れていき

其の姿をみた娘さんも大喜び


「ローズ ローズ 大好き 可愛いい」


天馬が娘さんをローズの背中へ乗せたり

ツーショット写真を撮影するなど

娘さんも満足されたことだろう


お見送り お別れの時


駐車場でご夫婦が車に乗り込み窓を開け

天馬たちに挨拶をして走り出す車を天馬たち3人は


車が見えなくなるまで手を振りお見送りをした


「いいご家族でしたね」


「そうね 奈々も早く子供産みなさいよ

わたしもあんな娘が欲しいな ねえ天馬」


「そうだな もうすこし落ち着いたらな」


照れる天馬


この数年後 二人の間に愛娘皐月が生まれるのでした





日高本線 静内駅 今は新日高町になりました。 駅舎はまだありますが

線路の上を気動車が走る姿はもう見られません

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