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番外編 佐藤正孝の苦悩

エクセレントローズの引退後のメリーの産駒のセレクトセールのお話です

ここではじめて佐藤さん夫婦の名前が公開されます


天馬と美鈴が部屋を出ていくとそれと入れ替わりに佐藤の妻である由美子が

テーブルの上へ湯呑とお茶菓子を置いた。


「ねえお父さん 美鈴と天馬さんほんと仲いいわね

正直にいってわたし美鈴は30過ぎて騎手を引退するまで

結婚なんてできないと思っていたわよ」


佐藤は妻の言葉を聞きながら別のことを考えていた

佐藤夫妻には2人の娘がいる 長女の真鈴と次女の美鈴だ


長女の真鈴も数年前に佐藤牧場厩務員の正人と結婚したばかりだ

佐藤家では牧場を継ぐ男の子が生まれなかったため 

この男性は佐藤姓を名乗り入り婿になった


「そうだな 天馬君ともう少し前から知り合っていたらと

いまだに悔やんでいるよ そうしたら 彼に佐藤牧場を継いで

もらえたかもしれないとな」


妻の真鈴も旦那の意見に同意するがもう遅い

天馬と土地の売買契約をする1年前に真鈴は結婚していたからだ


「直道君も頑張ってくれているが天翔牧場の産駒の成績は

ほんとうらやましいと思うよ 毎年生まれる産駒が皆G1馬だからな

普通じゃありえない」


佐藤の生産牧場も日本では有名な牧場だがさすがに毎年重賞勝ちの馬が

生まれるわけではなくほんの数パーセントの可能性があるだけだ


「ほんとメリーも毎年すごい産駒を産んでくれますからね

昨年のローズに続いて今年のダービー馬もメリーの産駒だし

伊藤さん電話でもすごく喜んでましたよ 初めてのダービー勝利だって」


佐藤もエクセレントローズで初めて日本ダービー勝利したので

伊藤さんの喜びも共感できる


佐藤は喉を湿らせるためお茶を一口飲んで湯呑をテーブルへ


「そうだな 美鈴も騎手を引退しようと決断できたのも

 目標の日本ダービーで勝てたからかもしれんな」


妻の由美子が頷いて


「美鈴から聞きましたけどあの子ほんと天馬さんに惚れてますよ

騎手生活を続けるよりも天馬さんと二人で牧場をやりたいと

迷わず判断したそうよ それで自分からプロポーズしたとね」


佐藤牧場もメリーローズの馬主と生産牧場として賞金も牧場経営の

手助けになっていて稼ぎ頭でもある


※この時点では天翔牧場の繁殖馬はメリーとマロンの2頭

 翌年以降にローズもそこに加わる


佐藤も先ほどの天馬との駆け引きを思い出し5億が頭をよぎる

そしてため息


「あなた 突然どうしたのため息ついて」


佐藤の妻は天馬の特殊能力を知らない


「あ~すまないな 天馬君が5億をポンと出すとは

思わなくてな 美鈴が傍にいてよかったよ」


この時天馬はまだ20代だ


銀行からの振り込みの連絡のことを思い出す妻由美子


「え あの5億の振り込み人は天馬さんだったの?」


由美子はあの若さで5億をすぐに振り込める天馬の財力に驚く

まあ天翔牧場の土地と建物の建設代金もすでに支払い済みと

聞いてるしこの時点では由美子は天馬の両親は資産家なんだと

考えていた 東京の御自宅もりっぱな建物だったなと


しかし旦那の言葉で自らの勘違いに気が付く


「ああそうだ 天馬君はあの若さで貯蓄が半端ないからな

天翔牧場も無理をしなければ潰れることもないだろうな」


由美子は佐藤のこの返答でお金持ちは天馬自身だと


「それじゃあ 美鈴は玉の輿なのね母親として誇らしいわ」


能天気な妻の意見に


「まあ そうだな 」


佐藤正孝も佐藤家の入り婿です ただしもともと親戚でもあり

由美子とも子供のころからの顔見知りで結婚するさいも

問題はなかった。 佐藤家はなぜか男の子が生まれない


妻との会話も終わり 由美子が部屋から出ていく姿を見送る


「なんにしても セレクトセールの件 天馬君の了承がもらえて

よかった あの牝馬への執着心は何処からくるのかな」


メリーローズ産駒の予想落札価格はおよそ〇億円


正孝の脳裏には昨年末の忘年会と新年会の記憶がよみがえる


顔見知りの馬主との飲み会だが駆け引きは既に始まっていた


あの時はほろ酔い気分でつい庭先取引の話をしたが


あの後からの馬主たちからの取引話にはうんざりした


メリーの産駒はまだ3頭目だが当歳馬以外は既にG1を勝利している


そのうちの2頭は日本ダービーを勝利している優秀馬だ


その打開策として今年のセレクトセールには何としてもメリーの


産駒を出したかったのである


メリーローズの産駒だからとレースに確実に勝てるわけでもないが


馬主たちは夢を見たいのだ 勝てるかわからない当歳馬に〇億円


結果は2年後か3年後わかる宝くじのようなもの


メリーの産駒を今年も佐藤が馬主になってレースに勝ってしまったら


全国の馬主から佐藤牧場は相手をされなくなる恐れがある


佐藤牧場は昔からの生産牧場だ 繁殖牝馬は○○頭はいる


厩務員も○○人雇用してる事業主だ


生まれた産駒を出品しても落札されなかったらどうなるのか?


馴致をして翌年のセレクトセールに出品するか


庭先取引を持ち掛けることになる 


それでも売れなくなったら繫殖牝馬をセールに出して廃業するしか


道は残されていないかもしれない 何処の業界でもやはり最後は


信用第一なんだよ天馬君



※馬主から預かっている繁殖牝馬のことはすいませんがよくわかりません

 繁殖引退後に引退馬繋養牧場ですべての馬たちが余生を過ごせればいいのですが

 その資金は馬主とファンからの寄付金で賄われるので

 読者の方 寄付をよろしくお願いいたします




生産牧場にもいろいろあるそうです 生産から種付け迄する牧場

ここに出てくる佐藤牧場は自家生産馬の牧場で馬主からの預かりは

ないとお考え下さい 種付けはほかの牧場への委託です


追記 5月14日 東京競馬場 G1 VM 白い子見てきました

怪我無くレースが終わり安堵しました厩務員の方もやはり夏で定年のようです

あとは繁殖牝馬として元気な仔馬を産んでほしいですね

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