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if もしも白毛の馬と出会えていたら  ④

ヘカトンケイレス ソラシドのお相手です

葦毛の馬です

北海道にもやっと遅めの春を迎え放牧地の牧草も新芽が芽吹いてきた


天翔牧場の繁殖牝馬たちには種付けまでにやることがある


繁殖牝馬登録も終わったのでホームページに掲載する画像を撮りたい


 ちょうどいいタイミングで競馬専門誌の取材があり


カメラマンを同行させるとのことだったので便乗して馬たちの姿を


撮影してもらうことにした


シオンの撮影は放牧地でと考えていたが問題はソラシドの撮影だ


専門誌の取材もソラシドの取材なので当初は馬房での撮影を考えていたが


母さんからの許可が出たのでシオンと同じ放牧地での撮影をすることにした


撮影の前にホースパークの医務室でレントゲンなどの検査で完治しているのを


確認して万全を期して放牧地内をなみあしで歩かせることにした。


当日朝 シオンと俺と紫苑は徒歩で放牧地の撮影場所まで歩くことにした


「和馬とこうして歩くの久しぶりよね

最近は白い子がいるから久しぶりの夫婦水入らずかしらうふふ」


このセリフをいったのは馬のシオンだ


「そうだな シオンには少し寂しい思いをさせたと思っているよ

それにソラシドの面倒も見てくれてほんとありがとう」


和馬はシオンの頭を優しく撫でた


「いいのよ和馬 私たち夫婦よね 気にしないでね」


和馬の横を歩く紫苑には当然念話が聴こえるわけもなく

何を私の目の前でいちゃついているのよと

言いたげな視線を和馬へ向ける


「どうした紫苑何か言いたいことでもあるのか?」


なによこの朴念仁 プイッ


「別に何でもないから気にしないで」


それとソラシドのほうは


馬バスへ乗り込み今枝さんと放牧地へ向かうことになっている


待合地点では和馬たちの到着を待っている集団がいる


獣医の弥生と専門誌の編集者並びDRAの宣伝担当者とカメラマンたちです


そこへ一台の馬バスが停車した。


ほぼ時間どおりに和馬たちも合流した


牧場の関係者以外でソラシドの姿を生で見るのは彼らが初めてだ


馬バスから今枝さんが手綱を引き慎重にソラシドを後部ゲートから連れてくると


皆さん ソラシドの元気な姿を見て感動している


まさか粉砕骨折をした競走馬が安楽死処置をされることなく自分たちの

目の前に現れたことで言葉も出ないようだ


そしてまずはシオンから撮影を始める


天翔牧場のホームページ掲載用の撮影とカタログ用に全身の撮影と

アングルを変えての撮影に走る姿の動画を撮影する


その間にソラシド特集記事のための取材を受ける和馬たち


それが終われば待ちに待ったソラシドの撮影が始まる


当然シオンのように走り回る動画は撮影しない


立ったままでのスナップショットが中心となるが


獣医さんの許可も出たのでなみあしでの撮影も許可した


そこへソラシドから和馬へ念話が


「ねえ和馬私もお姉さまのように走ってもいいかな?」


「え、もしものことがあるから俺は反対だよ

検査でも完治してると言われたけど

歩くと走るでは全然違うから慌てなくてもいいよ」


「でもね 和馬には内緒にしてたけどわたしね夜に厩舎の中で

走る練習をしていたのよ もう速歩も大丈夫よ」


俺はソラシドのその告白に驚いた


「和馬ごめん 私も共犯だから でもねソラシドの肢大丈夫よ」


どうもシオンもソラシドに協力していたようだ


「それじゃあ 速歩もいいよ けど無理はしないでね」


「やった 和馬ありがと 愛してるわ」


いきなり速足で走り始めたソラシドに皆驚いたが

カメラマンは撮影を続けていた


そしてそれで満足できないのかソラシドが速足から駆け足へ

切り替えそのうえシオンまでも並走で走り始める始末


カメラマンの助手がそれを見てビデオカメラを担いで

動画の撮影を開始した。


ギャラリーはその姿に驚きながらも朝日に照らされる

尾花栗毛と白毛の2頭から目を離すことができなかったが


和馬のこれ以上ダメだとのお願いに2頭は歩みを止め

和馬の元へ戻ってきた


戻ってきた 2頭を抱きしめ撫でる和馬


「もう、こんな無茶はやめてくれよ」


涙声の和馬はそっとソラシドを抱き寄せる


「ごめんね 和馬 もうしないから」


まあ それでも念のため 弥生が診察をするが

問題ないわと聞いてひと安心の和馬でした


ただ興奮冷めやらぬのはカメラマンと編集者の人


携帯で誰かと話している.....通話が終わり

和馬の前に来て頭を下げ


「相良さん どうかお願いします ソラシドの写真集を出版させてください」


「理由をお聞かせください」


まあ さすがに儲かるとは言わないだろうが


「ファンの皆さんに私たちが見て感じた感動を共有したいからです」


笑顔でうなずく


「そうですか わかりました許可しましょう」


「ありがとうございます」


編集者の方たち大喜びですね ただし不服なものが1頭いた


「和馬 私も写真集を出したい」


シオンの気持ちはわかるが写真集は安くはない 需要がなければ

採算も取れないから出版社もうんと言わないだろう

それじゃあ どうするか? シオンの願いをかなえるためには


「すいません写真集のことですが、わたしとしては牧場の仲間と

いっしょに撮影したのも写真集に加えればより感動する商品に

なると思うのですが まあ例えば先ほどの並走のシーンとか

馬房で2頭でくつろぐほんわかとした癒されるシーンとかですね」


「相良さん いいですよそれ それじゃ追加の撮影にご協力ください」


まあ こうしてシオンも写真集に出演することができた。


でもまあ ソラシドの写真集か ほんとのアイドルホースだな


その後追加の撮影を行い 皆さん笑顔で帰られた


写真集の発売は来月とのことで楽しみだ


和馬は忙しい毎日を過ごしていた


次に向かうのは佐藤牧場での情報取集


何のためか?


それは種付けが初めてのソラシドに適した相手を探すためだ


条件は成績などは二の次で優しく丁寧な扱いができる種牡馬を探すこと


伊藤牧場へ行けば優秀な馬はいくらでもいるし伯父さんも協力してくれるが


やはりここは馬同士のコミュニケーション能力に頼ることにした


佐藤牧場は昔からの生産牧場で繋養してる繁殖牝馬の大半は


伊藤牧場で種付けを毎年している


それで俺はこうして馬房を周りながらお姉さま方から種牡馬の情報を


探っていた。


当然情報取集しながら牝馬の健康状態をチェックして同伴してくれている


母さんへそのことを伝え病気やけがの早期発見するのも佐藤さんへの恩返しだ



そして人気種牡馬たちを伊藤牧場で面接してソラシドの相手を選ぶことにした


伊藤牧場


経営者は俺の父親の兄にあたり俺の伯父さんでもある


「いよいよ 天翔牧場の繁殖牝馬たちの種付けの季節だね

ラグーナシオンは既に昨年のうちから決まっていたけど

問題はソラシドの相手だよね うちの一番優秀な種牡馬

格安で引き受けるけど誰にする?」


ソラシドが相手なら間違いなく産駒は優秀なので

ただで種付けしても数年後にはペイできると考えているようです


「ありがとうございます。伯父さん 今回はこの3頭から

選ぶことにしましたのでご確認ください」


和馬はリストを手渡した


受け取った伯父さんもその道のプロなので真剣な顔で

リストを見ている


リストを机の上へ置き


「なるほど 確かに皆うちの看板種牡馬だ

それに3頭とも葦毛だね

やっぱり産駒も白毛狙いかな」


「そうですね 生産牧場ですからやはり挑戦したいですね

生まれる確率は低いですが挑戦し甲斐があります

ロマンですね」


「それで和馬君は3頭から誰れを選ぶのかな?」


「今から馬房へいって直接自分の目で確かめて来ます」


にこりと笑う伯父さん


「まあ、それで君が納得できるならやってみなさい」


やっぱり天翔の血は健在のようだ

昔のように日本の競馬界を盛り上げてくれよ和馬君

あの伝説の天翔天馬さんのようにな


案内も連れず 一人で馬房を回る和馬を咎める厩務員はいない

皆 和馬と顔見知りだからだ


そしていよいよ3頭目の本命候補の馬房へ到着


前の2頭は今回落選した 理由は優しさが足りないから

優秀だけど牝馬への思いやりがないと感じたから

でもまあ しょうがないかな歴戦の勇者だけど

毎年の種付けの回数が200回超えていればそりゃ雑にもなるだろう


でもそれじゃあソラシドは任せられない


馬房にはヘカトンケイレスのネームプレート


ほんと馬主の決める馬名は多種多様だな ギリシャ神話かよ


和馬は馬房の扉を開け中へ入る


中にはグレーの葦毛の馬が訪問者を見つめていた


「こんにちは ケイレスさん 俺は相良和馬といいます

天翔牧場の経営者をしています」


突然念話の会話で驚く


「これは驚きました 私たちの言葉を理解できる人族がいるなんて

まるでおとぎ話ですね どうもヘカトンケイレスです

長いのでケイレスでいいですよ それでご用件はなんでしょうか?」


ヘカトンケイレス 年齢7歳 5歳で引退して種牡馬へ

G15勝した優秀な牡馬だがそれ以上に牝馬のお姉さんからの

人気が高い


「家の牧場の牝馬が今年から繫殖牝馬になりまして

そのお相手探しをしています 名前はソラシドと言いまして

白毛で3歳の可愛いい娘です」


「3歳で繁殖牝馬か? まあ珍しくもないが何か理由でもあるのかな?」


牡馬と違い牝馬は優秀な血脈ならば未勝利でも繫殖牝馬になれますよ

牡馬が未勝利で種牡馬にはなれませんけど ※白毛なら需要がありそうですが


「はい、彼女はアイドルホースと呼ばれG1も2勝した実力もある牝馬ですが

レース中の事故での怪我が原因で引退しました。」


「なるほど 3歳馬ですでにG12勝ならほんとに優秀な馬なんだろう

怪我で引退したと言われたがどのような怪我なのかな」


ケイレスはこの時点では怪我でも軽傷だと思っていた

重度の怪我なら予後不良で安楽死処置されるからだ


「はい、前肢の粉砕骨折です」


ケイレスは言葉に詰まる


「え、そんな馬鹿な それじゃあ生きているはずがないだろう」


「まあ、そうですね 彼女は運がよかったのでしょう

  馬の神様のお導きですよ」


人族から馬の神様の名前が出てきたのが気になり思わず


「人族の君が我々の神を知っているのか?」


「はい、もちろんです 何度もお会いしておりますし

ソラシドのことも神様からの神託で駆け付けました」


ケイレスはもうこれ以上詮索するのをやめた

おそらくこの若者は神の使徒であろう


「そうですか わかりました ソラシドさんのお相手は

私が誠心誠意最善を尽くしましょう お任せください

もちろん手荒なことはしませんのでそこはご安心ください」


何か知らんが話がまとまったようだ

この牡馬なら安心して任せられるが

ケイレスからソラシドの容姿を尋ねられたので

昨日のカメラマンからもらった画像を見せると


「これはもう 他の誰にも譲れません

喜んでお相手しましょう」


話がまとまり伯父さんとも契約を済ませて牧場へ戻った


牧場へ戻りソラシドへ相手が決まったと伝えると


「和馬が決めてくれた相手なら問題ありません

私はあなたに従うだけです あなたなら

私が嫌がる相手を選ぶはずがないのですからね」


信用されているようですね


こうして種付け当日


馬バスでシオンとソラシドを載せて伊藤牧場へ向かい


何の心配もなく種付けも終了した


ソラシドに感想を聞くと恥ずかしそうに


「はい、とてもやさしくしてくれました

あの方なら 次回もお願いしたいです」


まんざらでもないようで なんかむかついた

次回は出産まで進みますが果たして産駒は牝馬かな牡馬かな?

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