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シズカさんの忘れ物と新しい伴侶

馬の国でのお話です。 


馬の国でも正月は存在するのだろうか?


天馬が馬の国へ来た当初 まず暦が存在しなかった


馬の国の住人である馬たちには不要なものだからだ


ただそれでは困る住人が一人増えたことで馬の神様が特別に暦を制作した


日本と同じように季節を春夏秋冬と気候も変化を与えた


それと新年は天馬にとっても馬たちにとっても大切な時期でもある


馬たちが新しく転生する世界の繫殖牝馬が出産する時期でもあるからだ


天馬の家では


「なあ ローズ何餅食べたい?」


話を振られたローズは


「パパ 今日はきな粉餅が食べたいな」


そこにスターが


「お父様 わたくしは磯辺焼きがいいのですが

面倒であれば母様と同じでいいです」


「スター遠慮しなくてもいいぞ 別に面倒じゃないしな」


※ この馬の国では食事は必要ではなくあくまでも嗜好品扱いです

  料理は頭に浮かべるだけで目の前に現れますが

  過去に口にした食べ物以外見た目完璧でも味はしないので

  天馬の場合は過去に食べたことがあるものだけを提供しています


天馬はきな粉餅を作るため つきたての餅 きな粉 小豆餡 を頭に浮かべ

餅の中へ餡子を入れて包み 最後にきな粉をまぶし


 「ローズ できたよ 口をあけて」


「やった あ~ん うん 美味しい~」 「さすがパパだね」


元の世界では餅をのどに詰まらせないように気を付けてと

注意するがこの世界では怪我もしないし死ぬこともない


「よし 今度は磯辺焼きだな」


切り餅を取り出し七輪の上に網を置き 火であぶり

さらに醤油と砂糖を入れて甘醤油を作り餅にからめ

焼きのり巻いて出来上がり


「スター お待たせ 口をあけて」


スターはローズのような大口は開けないで お上品に口をあける


スターは十分咀嚼すると


「やはり醤油はたまり醤油が一番ですねお父様」


おせんべいの焼ける匂いも格別です


「そ、そうだね まだまだたくさんあるから好きなだけお食べ」


スターにはこだわりがある ローズにはないが


たまり醤油の焼けた匂いにつられローズも


「パパ ローズにも磯辺焼き頂戴」


※ 天馬の家では昔から醤油はスーパーで購入してたまり醤油は

  近所の酒屋さんが配達に来てくれていました


そんな家族の団らんの所へ


「天馬さん おはようございます 朝からいい匂いですね」


「ああ、おはようございます 盾さん」


そこへ現れたのがご近所の盾さんとサイレントシズカと弟子のシングルターボ


シングルターボは牡馬ですがG1未勝利の馬なので毎日調教に余念がありません

そこで同じ脚質の大逃げが得意のシズカに弟子入りして

毎日指導を受けています ※シズカさんに片思いしています


シズカの馬体重は以外と重く500キロはありますがそれに控え

ターボは牡馬のわりに体重は軽く400キロありませんので

見た目は華奢な牝馬にも見えますがそこにシズカは母性本能を

くすぐられたのでしょうか? それともショタなのかな


「盾さんも食べますか? お餅ですけど」


「いいですね 正月の風物詩といえば お雑煮ですか」


天馬はその発言ににやける


「そう来ると思いまして準備していますよ」


天馬は手際よく おせち料理の重箱の横へ お雑煮の椀を置く


天馬の嫁でもある美鈴も席に着き食事が始まる


そんなところへ新たなお客さんの登場


現れたのは馬の神様ですね


「あら いい匂いですね 天馬さん私にも磯辺焼きいただけますか?」


連絡事項もありますので神様が天馬の所へ来るのも珍しくありませんが

時期が時期なので気になります


馬の神様が天馬から提供された磯辺焼きやお汁粉を堪能し終わると

いよいよ本題に移行


ここにいる皆が神様へ注目


「シングルターボさん あなたには来週転生していただきますので

ご準備よろしくお願いいたします」


その言葉で皆の注目はシングルターボへ


「はい、神様 準備万端です」


ターボ君はやり遂げた顔をしているのでこれは期待がもてる


その言葉を聞き満足そうな顔をした神様は


「それでは 皆さん 御機嫌よう」


帰られる 神様に天馬はお餅の包みを手渡す


「天馬さん いつもありがとうございます。

あとで配下のものといただきます」


※ 配下の馬たち まあ仕事は多岐にわたるので部下もいるでしょう


シズカはターボ君に近寄ると


「ターボ君 あなたにたらなかったのは己を信じる心です

自分よりも体格もいい牡馬に負けない強い心です

怯えることなく立ち向かいなさい あなたならできると

わたしは信じています」


盾さんからもアドバイスがあるようです


「ターボ君 君は前世でも何回も重賞レースを勝っている優秀な牡馬だ

君がG1レースに勝てなかったのは君の得意の大逃げの脚質が生かせず

馬群に飲み込まれ怯えて肢が前に出なくなったためだよ

君ならアリーナ記念のレースでも大逃げで勝つ力があるんだ

自分の力を信じ騎手を信じゴールを目指せ 先頭で走る景色は格別だよ」


盾のその言葉にシズカも頷いてみせる


その日からターボ君はゲートの練習を多めにこなし

スタートのミスをなくす調教をした


スタートゲートの中では馬同士熾烈な念話での戦いがある

当然脅す馬もいるし 隣のゲートの馬へ直接蹴りをくりだす

牡馬もいるので周りに惑わされることなく落ち着いて対処する

ことの大切さをゲートの練習で学ぶ


※この時点ではまだ18頭のフルゲートレースはできてません

 騎手がいませんから


そしていよいよ転生の日を迎える


噴水広場では転生する仲間たちからターボ君へ応援の声がかけられた


「ターボお前も頑張ってこいよ 今度こそ馬の国でゆっくりしようぜ」


2度3度転生する馬も多いですからちなみにターボ君は転生初心者です


「ありがとうございます。【今回で3度目】先輩も頑張ってくださいね」


ターボ君は精神を鍛える鍛錬もしたのか自分より大柄な馬にも

怯えず言葉を返している


ここで読者の皆さんは疑問に思うだろう


Q、馬の国で調教しても異世界のチート魔法でもあるまいし

  現実世界で簡単に勝てるのか?


A、正直勝てません 


あくまで馬の国での調教は才能を開花させる準備です

転生直後でこの馬の国の記憶はありません 意図的に消されますから

まあ例外があり記憶が失われない幸運な馬も過去にいましたが


ただ神様のおかげで基礎能力の底上げはできています

転生を繰り返すことで確実に強くなるでしょう

まあ馬の国で調教をまじめにした馬だけですがね


だからターボ君なら大丈夫です 断言しますよ


ターボ君はお目当ての牝馬に近寄り


「シズカ師匠 大変お世話になりました。

師匠の指導を受けれた幸運に感謝します」


シズカは首を左右に振る


「ターボ君 あなたには十分素質がありました

 大逃げは簡単に決まる戦法ではありません

 貴方には速さもありますから 私より優秀な競走馬ですよ」


※シズカさんも大逃げでG1勝利してますから肢も速い優秀な競走馬ですよ


「とんでもない師匠 僕なんか周りの馬に怯えて逃げていただけです

周りも見ないでただ走るだけだから騎手のかたも苦労したと思います」


騎手のことも考える余裕が出てきたようでシズカ感激です


「そうだ、ターボ君にG1勝利のご褒美も出しましょうか

   何か希望とかありますか?」


ターボ君は真剣なまなざしでシズカをみる


「それでは師匠 お願いがあります」


「私で叶えられることなら何でもいいですよ」 ※それ禁句


「僕がG1勝って馬の国へ戻ってきたら 僕の伴侶になってください」 ※ほらね


※馬の国ではそれはもうハーレム状態の馬がいますよ

 プラチナも馬の国へきて何度も告白されてます


俺の生涯の伴侶はメリーとホワイトだと明言されてますが


シズカの視線は困ったように盾をみる


「私には盾さんが既にいますけど」


その返答が来るのは最初からわかっていたターボ君はここで例外をだす


「僕はそれでもかまいません 天馬さんの例もありますし

人族と同族の伴侶を持つのも問題はありませんから

僕は同族の伴侶としてシズカさんのそばにいたいです」


「え、」...キュン 何かしらこの胸の高鳴り


シズカは今までも何頭も牡馬から告白されましたが断っています

まあすべて体躯のいい500キロ越えの馬ばかりですが

シズカは小さい仔馬が好きです 引退して繁殖牝馬になれたら

生まれた仔馬に愛情を注いでいたでしょうね


「シズカ 難しく考えなくていいじゃないか

同族のほうが相談しやすいこともあるだろ

大切なのはシズカがターボ君のこと好きかどうかだろ」


シズカは自問自答する ターボ君のこと好きか嫌いか?


考えることもなくターボ君のことは大好きだ


ふっきれた顔をするシズカ


「わかりました 私もターボ君のこと【弟子として】好きですから

条件つきで認めましょう」


「師匠条件とわ?」


条件と言われて多少困惑するターボ君だが


「ターボ君 難しく考えなくてもそんな無理難題はいいませんよ

 牡馬3冠目指せとか生涯賞金10億円超えてねとかですね

まあせめて年度代表馬にはなってもらいたいですがこの話は

この際横へ置いておきましょう」


年度代表馬も簡単になれませんけどね


「よかった さすがに3000メートルは無理です

 僕の小柄な体躯では体力が持ちません」


現役競走馬350キロの牝馬で長距離の得意な馬もいますけど

○○○○レーンちゃん小さくてかわいいですよね


「私の最期のレース 秋の天皇杯のレースで勝ってください

 どうか私の雪辱を果たしてください

 私の最期のレースは大ケヤキの前で立ち止まったままなんです」


シズカの横で盾さんは当時の記憶を思い出し苦悩な表情をした


シズカさんは何も言わず盾さんのそばに寄り添って

慰めている姿に胸が熱くなる天馬たち


※ちなみに大ケヤキではなくエノキだそうです

 昔は確かにケヤキがあったが落雷で燃えてしまったそうです

 それとあの場所には昔の偉い人のお墓があるそうです


「師匠 任せてください 僕が師匠の望みをかなえて見せます」


そこへ盛り上がっているところ申し訳なさそうに馬の神様が


「あの~ すいません お話し中のところすいませんが

あとはシングルターボさんだけなのでよろしいでしょうか。」


「それじゃあ 師匠、盾さんいってきます

天馬さんご指導ありがとうございました。」


馬の神様の横に並ぶターボ君を見て盾さんが


「シズカ、ターボ君へ贈る言葉...」


「ターボ君 怪我に気を付けて悔いの残らないレースをしなさい

先頭で走るレースは格別なのよ 楽しんできなさい

わたしは貴方の帰りをいつまでも待っています」


ターボ君は声にはださず 頷いた


こうしてターボ君は転生した。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

【馬の国と転生する世界では時間の流れが違います】


馬の国では数か月の月日が流れ ある日の夕方の噴水広場

いつもこの時間は特別な時間だった


転生でG1を勝利した馬は神様と共に噴水広場へ帰還する

英雄のご帰還だ


再度転生する馬は何食わぬ顔で調教に参加します

周りの馬は何も言わず 優しく見守るだけです


帰還したターボ君【今回の転生でトリプルターボになりました】


沢山の馬たちの歓声のなか 1頭の牝馬を探す


「師匠 いえシズカさん ただいま帰りました。」


「ターボ君 だめね トリプルターボさん おめでとうございます

G1勝利頑張りましたね あなたの師匠として鼻が高いです」


照れてるターボ君


「師匠 いえ シズカさん 僕のこと昔のようにターボ君でいいですよ」


「え、いいの 私はターボ君のほうが可愛くて好きだから

貴方が良ければこれからもターボ君と呼ぶわね」


「はい、それでいいです」


「それで 大事なことを聞くけど G1勝てたから噴水広場へこれたけど

どのレース勝ったの? まさか2歳馬のホープフルSだけなんてこと…」


※ 年末の中山での最終2歳馬G1レースですね


ターボ君はそれはないですよと首を振り苦笑い


「シズカさん 腕試しで確かに

ホープフルSも出走しましたけど目標は秋の天皇杯ですので

3歳のころから頑張りました。やっぱり長距離は適性がないのか

3000以上のレース勝てませんでしたが...それと

大切なあなたと約束した秋の天皇杯」


頭を下げ落ち込む表情のターボ君


「まさか 勝てなかったの? 」


少し落ち込むシズカだが


頭をあげたターボ君は会心の笑みを浮かべ


「当然勝ちました それも4歳と5歳での連覇です

これであなたの時間動きましたか?」


シズカさんターボ君の演技に騙されました


その言葉を聞いてシズカはうれし泣きをする


「うん うん 動き出しわ もうゴールも見えてきた」


盾さんがシズカさんを優しく撫でて


「後続も引き離しているし 鞭はいらないね」


盾さんに促されシズカさんとターボ君は新しい新居へ向かう

牡馬が1頭増えるのがわかっていたので当然改築しましたよ


仲良く新居の中へ入っていく2頭を見送る盾さん

心なしかほっとし安堵の表情を浮かべている


「よかったですね 盾さん」


「これで 僕も肩の荷が下せそうです 今後は二人【人と馬】で支える

ことができますから」


馬の国へ来てからの盾さんは調教でもシズカさんといつもいっしょでした

支えるのが2人になったことで盾さんも一人の時間が持てそうです


天馬と盾さんが会話をしているとその機会を虎視眈々と

狙っていた牝馬たちが現れる


「やっと盾さんとお話ができます」 「この時を待っていました」


近寄ってきたのは天馬でも知っている名馬たち


○○〇〇ウィーク ○○〇〇クリーク ○○〇〇ブラックなど


「やっとお話できますね 私たちが近寄るといつもシズカさんから

プレッシャーを感じるので遠慮してました」


シズカさん牝馬たちに盾さん取られると警戒していたのかな?


盾さんレジェンド騎手ですので騎手として4千勝以上してますから

新馬戦から引退レースまで騎乗した名馬も多いです 彼女たちも

馬の国で再会できたら感激しますよね


「ねえ、盾さん シズカさんにも同族の伴侶できましたし

牝馬の伴侶もっと増やしませんか?」


「よろしくお願いいたします 前世から決めてました」


その数 数十頭の牝馬たち


盾さんもこれから大変そうです






まあ フィクションですので優しく見守っていただけると幸いです。

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