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1、入学

 朝日が(まぶ)しい。俺、葛井(くずい)琢磨(たくま)は葉桜第一魔法高校の掲示板の前にいた。一年十組、それが俺が入るクラスだ。職業『魔法使い』。この高校を受験する者は誰もが憧れる職業だ。今のご時世、どこでモンスターが出てもおかしくはない。東京、いや世界中にダンジョンが出没し、プロの冒険者たちが抹殺に動いている。この学園で力を磨いて、そしてこの東京からモンスターを一掃する。俺はそんな夢を思い描いていた。


「君も魔法使い志望かい?」


 隣の眼鏡の男子生徒が話しかけてくる。鼻にかかった甘い声。(かたわ)らの元気そうな女の子がいる。あまり良い印象を抱かせない子だ。女たらしで陰険。そんな印象を受ける。


「そうだよ。君も?」


「ああ。もちろんだとも。僕は高いスキルの習得を目指し、パーティーの結成を目指している。父も母もこの学園の経営に(たずさ)わっているしね。当然の責務だと考えている。なあ、加奈?」


「そうね。ノブレスオブリージュよね」


 茶髪のセミロングの女の子が頷いて応じる。ノブレスオブリージュ、高貴な家に生まれた者が社会的な義務を負うという意味だ。


 この二人は富裕層なのだろう。俺とは縁遠い世界の話だ。


「僕は風間(かざま)(とおる)。この子は宮口加奈だ。二人とも魔法科だからね。七組だから良かったら声をかけてくれたまえ」


 風間は爽やかに笑みを作ると、くるりと(きびす)を返す。加奈が小動物のように後を追っていく。










「うわ、凄」

「気合い入ってるわね」


 隣の女子グループが呆然としている。職業を選定する神殿。神官職や巫女職の生徒が待ち構えている。俺たちは教師の案内で職業鑑定の巫女の前に立つ。


 巫女が目を細める。上級生なのだろう。化粧はしていないが、その清楚さはまるでファンタジー世界から抜け出てきたキャラクターのようだ。巫女が水晶に手を当てる。おそらく、高位のマジックアイテムなのだろう。


「う、グググ」


 巫女が苦悶の声を上げる。隣にいた巫女が驚いて飛んできた。


「ちょ、大丈夫なの?」

「一体何が」


 俺の背後の女子生徒たちが騒ぎ始める。巫女が苦悶に顔を歪めながら、指で空中をなぞる。


“魔王”


 女子生徒たちが悲鳴のような声を上げた。巫女が意識を失って、倒れ伏した。









「なぜここに呼ばれたのか分かるかしら?」


 冷たい声がする。この学園の理事長たる祁答院(けどういん)(はる)()だった。年齢は二十代後半に見える。爪につけたマニキュアが毒々しい。


「あなたはこの学園に入学するというのに魔王の職業を得た。これは激レア職よ。おめでとう」


 理事長が拍手する。顔は笑っているものの、目は笑っていない。


「僕はこの学園に入学してはならないのでしょうか。魔王であると魔法科にはそぐわない」


「むしろ歓迎するわ。魔法使いではなかなかダンジョン攻略は難航してるしね。激レア職の魔王なんて学園にとっては有り難い以外の何物でもないのよ」


 理事長が笑む。あまり信用できない感じの女だ。俺は理事長室を見回す。パソコン以外の調度品はお洒落に置かれている。私物化しているとも言えるが。


「ぜひ他の生徒への刺激として、この学園に在籍して頂戴(ちょうだい)ね」


 理事長がウィンクしてくる。俺は思わず頷いていた。


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