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ハザマ~高校生男子は異世界で精霊に愛され無自覚無双~  作者: 木賊
第4章 庵の能力、迫る大群
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82話 避難指示

風邪を引いてしまい、遅れてしまいました。

すいません。

まだ全快ではないので次も遅れるかもしれません。

「こんちわ~!」

孤児院に珍しく誰か来たようで、玄関からそんな声が聞こえてきた。



城に行った翌日の昼、俺は孤児院で昼食を食べて食休みをしていてそろそろハンターズギルドに行こうかなと思っていた。

クープーデンと話した内容は昨日のうちに帰ってきたすぐに、グランとローエに話した。

とりあえずは「声」の主を特定できないと俺はあちらの世界に帰ることはできないのだから、今まで通り暮らして「声」の主を探してはどうかという話となった。

だから俺は今まで通り、孤児院に間借りしてハンターやってればいいってことだ。

ハンターやったりして、もっと色んな人と関わることでもしかしたら「声」の主に関することが出てくるかもしれないからだ。


「はーい。」

来客に返事をして、子供たちに読み書きを教えていたローエはパタパタと玄関に向かった。

因みにグランは朝からハンターの依頼で近くの森に行ったそうで、アルは今日は貴族の仕事でここには来れないと昨日言っていた。


しばらくして、慌てたローエが戻ってきた。

手には手紙を持っていたのでどうやら来たのは郵便配達員だったようだ。


「皆!大変大変!避難指示が出たから町に避難するわよ!」

「「「は~い!」」」

「えっ?避難指示?」

子供たちは素直に返事をしてローエは奥のキッチンへ向かうなか、俺だけ首を傾げた。

窓から見える外は快晴で避難指示が出るような天気じゃない。

これからでかい台風でも来んのかな?


「「魔物の大群」が来るから避難するんだよ、イオリ。」

「怖い魔物がいっぱい来るから町に行くのよ。」

ロックとインカが手際よく勉強道具を片付けながら俺に説明してくれた。

「え!?ま、「魔物の大群」!?そ、それって、どういう・・・?」


「イオリ、ちょっと来てくれるー?」

俺が驚いてどういうことか聞こうとしたら、キッチンにいるローエに呼ばれた。

「これから簡単な料理を作るから作ったそばからあなたの・・・なんだっけ?リンク?に入れてほしいんだけど。それ作りながらだけど、「魔物の大群」について説明するわ。」

「え、あ、わかった。」

どうやら避難先での食事のことを考えて、今ある食材で急遽作るからそれを俺のリンクに入れていってほしいようだ。

まあ、リンクした狭間の世界に置いといたら時間経過がないからこういった時にはとても役に立つ。

それをすぐさま思いついてやるなんて、さすがローエ。

ローエはストックしていた食料全部を出すと、ものすごい勢いでサンドイッチや魔物肉のソテーなど作っていきながら俺に「魔物の大群」について説明してくれた。


「「魔物の大群」は世界中で年に数回起こるという現象みたいなので、どこからか発生してどこかに大移動して、ある程度大移動したらいつの間にか消えてるらしいの。・・・はい、これ入れてって。」

「おぅ・・・。」

「いつから発生しだしたのかなんで発生するか不明で、色んな研究家がいまだに研究してるけど、さっぱりわからないらしいわ。・・・はい、これも。」

「はぁ・・・。」

いつなんで発生するか不明?

・・・あれ?でも、空間の精霊は・・・。


「どうしたのイオリ?・・・これもお願い。・・・えーと、で、誰かの噂では、魔物は魔界から人間の町や村を蹂躙する目的で来て終われば魔界に去るのではないかー、とか言われてるけど本当かどうかわからないし。でも毎年世界中で結構被害が出ててね、それもあって近くで「魔物の大群」が発見されたら避難指示が出るのよ。ここの孤児院は町から少し離れているから結界の外っていうこともあってね。」

「あ、だから町に避難すんのか。」

「避難指示が出たら町の教会にとりあえず行くことにしてるの。子供たちも何回も避難指示は経験してるから今頃各自、自分の荷物をまとめてるはずよ。」

チラッと広間を見るといつの間にか子供たちがいない!

どうやら子供部屋に行って荷物をまとめているようだ。

「前々から荷物をまとめる訓練とかやってたからね。」

あれか。小学生の時に経験した避難訓練のようなアレか?

ちょっと違うか。避難訓練は荷物をまとめないわな。


・・・というか、こうやって説明をしてくれているローエの手捌きがすごい!

パンに切れ込みを入れてハムとレタスとなんかのソースをかけるのに4秒、それをいくつも作って、ある程度の数をまとめて紙袋に入れて俺に渡すのに23秒しかかかってない。

それを俺がリンクに入れてる間に鍋で煮ていたシチューや野菜スープは鍋ごとリンクに入れてと渡してくるし、果物はそのまま入れてくれと言われて俺は慌てて入れていく。

うわあ、ローエの腕が6本に見える・・・!

も、もはや俺が【武術超越】を使って早くなったみたいだ!

さすが毎日家事に3人の子供の面倒見てるだけあるぜ!


そうしてとんでもないスピードで料理を作っていって、それをリンクに放り込んでるだけの俺であった。



結局、ほぼすべての食材を使ってあっという間にローエは料理を作ってしまって、俺のリンクは覗いただけでたくさんの料理が見えた。

それから用意ができた子供たちの荷物もリンクに入れようとしたらそこでローエが待ったをかけてきた。

「入れてくれたら身軽になるからありがたいんだけど、手ぶらで避難はさすがにまずく見られるわ。」

そりゃそうだ。

このリンクは規格外のものだからローエたち以外は理解すらできないだろうし、いちいち説明するわけにもいかない。

手ぶらで避難先に行ったら頭おかしいと思われるわな。

「でもまあ、重いものとかあったら入れるよ。」

一応そうは言ったが、子供たちはそれぞれ服などが入ったリュックを背負ってヌイグルミやボールや絵本を持っているくらいで重くはないようだ。

「ありがとう。じゃあ、私とグランの分も荷物をまとめてくるわ。イオリは荷物をまとめなくて大丈夫?」

「大丈夫。俺いつもリンクの中に全部入れてるから。」

宿屋に泊まっていた時からの習慣で部屋に荷物を置かないようになったのだ。


しばらく待ってグランの荷物をリンクに入れると俺たちは孤児院を出た。




町に入った俺たちは教会に向かった。

避難指示が出て町に来ることになると教会に行くのがいつものことだそうだ。

結構町は慌ただしくなってて、皆買い物に走る人やたくさんの食べ物を抱えて家に帰るっぽい人ばかり。

お店も店じまいを始めているところもあるし、露店もどっかに引き上げていっている。

町は結界で守られているとはいえ、万が一のこともあるから建物から出ないように、という指示が出ているのかもしれない。


「やあ、皆来たかい。」

「「「こんにちはー!」」」

教会には神父とシスターの他、避難してきた人がいた。

独り暮らしで心細くて避難して来たおじいさんやおばあさん、家のない浮浪者のおじさんなど10人ほどが教会の長椅子に座っていた。

皆、不安という顔ではなく和やかな雰囲気で小声で会話していたりと慣れた感じだ。

前にお邪魔した奥の部屋に案内されて、子供たちはそこの本などをすぐさま読み始めた。

何回か避難指示を経験しているだけあって子供たちは落ち着いたもので、普通に遊び始めてるし。

神父もシスターも慣れていて子供たちにお菓子を食べるかと聞いたりローエとのんびりソファに座ってお茶を飲んでいる。

そんな姿に、初めての避難指示でちょっとオロオロしていた俺は落ち着いてきた。


『へえ~、人間はこうやって避難しなきゃいけないって、大変だねえ~。』

『人間全員が戦えるわけではないからのう。』

今日の俺の担当?の木の精霊と雲の精霊は呑気にそんな会話をしている。

呑気なしゃべり方もあいまってこっちまでのんびりしそうだ。

縁側で茶をシバきたい気持ちになるのを振り払って、俺は神父に聞きたいことがあった。


「「魔物の大群」が来るって、いつ来るかとかわかってるんすか?」

「先ほど城から発表があってね。城の北を北東から西に向かって斜めに通るようなんだ。「魔物の大群」はほとんどルートから外れることはないと言われているけれど、万が一町や城に向かってルートを外れることもあるから、こうして避難指示が出たそうだよ。」

町からすぐ北に城があって、「魔物の大群」が通るのはそのさらに北に位置するところのようだ。

ルート通りなら被害はないのだけれど、万が一ということで避難指示が出たということか。


・・・そういえば、あそこら辺は俺がマンティコアを倒したところの近くで、グランが騎士を見かけたとか言ってたところの近くだ。

・・・偶然、かな?



「お、避難してきてるな。」


そんな声がして、部屋の出入り口を見るとグランが部屋に入ってきていた。

「あ、グラン。依頼終わったのか?」

「ああ。ちょうど終わったところでギルドで避難指示を聞いた。」

子供たちにお茶をいれていたローエもグランに気付いて話しかけた。

「グランお疲れ様。グランの荷物はイオリが持ってるわよ。」

「おお、すまん。・・・だがまだ、持っといてくれるか?どうやらここに泊まれそうにないからな。」

「え?そうなん?」


「「魔物の大群」対策にハンターは集まるように緊急召集がかかった。レベルA・Bが対象だがイオリ、お前も来いとギルマスが呼んでるぞ。」


え?俺?





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