80話 召喚の歴史
「ふむふむ・・・なるほどのう。」
クープーデンは俺の話を相づちしながらずっと聞いてくれた。
話してる間もびっくりしたりはするものの、ずっと横長の光は面白そうに俺を見てきていた。
信じてくれているのか?はたまた怪しいと思っているのかわからない。
部屋の隅にいる執事とメイドは訝しく俺を見てきているけどね。
まあ、その反応が普通だと俺も思うよ。
「それで、召喚魔法ではないかって話になって。町の図書館で見た召喚魔法の本よりもっと前の本ならなにかわかるかもしてないと、城の図書館にないかと考えて、それなら魔法に詳しくて数百年生きているクープーデンに聞いたら参考になることを教えてくれるかもって話になったんだよ。・・・これで全部。あの・・・俺の話、信じてくれる?」
俺の心配をわかっているように、クープーデンはふぉっふぉっと笑った。
「このなりのわしが信じんと誰が信じるんじゃ?異世界から来たといい、【能力】の数と内容といいとんでもないことではあるが、この世に絶対あり得ないことなどないからのう。人生なんて予想外のことばかりであろう?それを受け入れぬほど心は狭くはないからのう。」
「そうなんだ。ありがとう。」
自然とほっとため息をついた。
「ふむ・・・。」
クープーデンは小さな手を組んでなにやら考え出した。
一方的にしゃべりまくったので紅茶を飲んでクープーデンが話し出すのを待った。
「わしも・・・召喚魔法で来たという考えには、賛同じゃな。」
「ホントに!?」
「おぬしが聞いたという「声」についてはわからんが、黒い渦に巻き込まれるというのは召喚される者の一般的な現象じゃ。」
「ですがクープーデン様、異世界の者を召喚するというのは本当に可能でしょうか?」
アルは首を傾げながら聞いてきた。
「可能じゃよ・・・。なにせ500年以上前まではよく召喚されておったからのう。」
「「え!?」」
俺とアルは信じられずに目を見開いた。
500年以上前まで?
よく?
どういうことだ?
チラッと見た執事もメイドも驚いている。
「ホ、ホントに!?クープーデン!それ、ホントなのか!?」
「ああ、本当じゃよ。」
クープーデンは自信たっぷりに頷いていた。
「これから話すことは王家も知らぬことじゃ。じゃから・・・わかってくれるかのう?」
ここからは秘密にしてくれってことだろう。
顔がわからないが真剣なのは声でわかる。
「ああ、おぬしに協力しておる孤児院の経営者に話すかどうかはおぬしにまかすよ。じゃがそれ以外の者には言うてくれるなよ。」
「う、うん。わかった・・・。」
俺は何度も頷いた。
元からこれ以上俺の事情を誰かに話す気もないから、それに関係するであろうこれからの話を誰かに話すこともないと思う。
「・・・元々、召喚魔法は1000年以上の歴史があるが、今から800年前、当時の高名な魔法使いが召喚魔法で異世界から物を召喚できたことをきっかけに、魔法使いの間で召喚魔法で異世界からなにかを召喚することが流行ってのう、色んなものが召喚されたそうじゃ。わしはその時まだ魔法使いとしてはそこそこじゃったから召喚魔法はできんで羨ましかったぞい。」
え?そんな流行りあんの?
「今日お茶する?召喚する?」みたいなノリでやってたとか?
っていうか、クープーデン800年前生きてたの?
え?800歳?
「クープーデン、そんときから生きてるって、800歳?」
「秘密じゃ。」
秘密かーい!
「色んな物を召喚していくうちに、ついにある日、人間を召喚する事に成功したんじゃ。それからは全世界で異世界から人間を召喚されるようなったんじゃ。この国でも度々人間が召喚されて来たのう。この国に召喚されたのは・・・確かヨーロッパという地域の者が多かったのう。」
「ヨ、ヨーロッパ!?」
俺は思わず大きな声で叫んでいた。
「そうじゃ。どうやら国によって召喚される地域は違うようで、確か・・・砂漠の国カヴァロッツィはオスマン帝国?といかいう地域のものが多く、軍事大国ロンバルディアにはロシア?とかいう地域のものが多く・・・島国ツィンクゥはニホン?という地域のものが多く来たというぞ。」
「ヨーロッパにオスマン帝国にロシアに日本!!そ、それ!俺のいた世界の地域だよ!俺、日本にいたんだよ!!」
「え!?」
「ほう。」
興奮気味に言った俺の言葉にアルはとても驚いて、クープーデンはうんうんと頷いた。
「召喚された者たちは老若男女、あらゆる地位や職業の者が来ての。貴族から農家や奴隷まで来た。彼らのいた世界は当時のこの世界よりはるかに文化が進んでいることがわかってからは、彼らの文化を取り入れこの世界は急激に発展したんじゃ。それまでは家は木造、鉄や青銅があるくらいで国や王がかろうじていたくらいだったのが、土木建築技術や治水もなされて領土も明確化されて地図もできた。」
木造に鉄や青銅・・・。
イメージとしては古墳時代くらいかな?
それが中世ヨーロッパ位にまで発展したというのはすごいな。
「召喚された者たちも最初はとても戸惑っていたが、次第に助言や実際に作業をしてくれたり子供たちへの教育面までやってくれてのう。ここまで発展するのが早かったのは、彼らが来る前から物が揃っていたからじゃ。なにせ流行りであらゆる物をそちらの世界から召喚していたからのう。」
なるほど、物があったから召喚された人たちが物の説明や使い方を教えるだけで発展してったって感じか。
つまり、このローワン王国が中世ヨーロッパに似ているのは、昔召喚されてきたヨーロッパ人たちが伝えた文化ということだ。
あれ、・・・ということは、ツィンクゥが日本に似ているものが多いのはツィンクゥに日本から召喚された人たちが日本文化を伝えてそれが定着したということか。
だから米や味噌に武士や相撲があったのか。
「なんで500年以上前で召喚されなくなったんだ?」
「それは全世界で禁止となったからじゃ。」
「え!?禁止!?」
「ああ。800年前から人間が召喚され始めた時、こちらの世界の者は誰もなにも考えずに召喚していった。そしてちょくちょく召喚していくうちに彼らの中からこちらの世界で暮らして家族を持つ者も現れはしたが、「帰りたい」と言う者が出てきた。じゃが、わしら魔法使いは帰す魔法は開発していなかった。突然の異世界生活に家族に会えない悲しみに泣く者もいたし、どうしても馴染めずに心労がたたって死ぬ者まで出てきた。」
「・・・。」
俺はまだましだ。
両親とは仲が悪いし浅い関係の友人しかいない。
だが、向こうに家族や恋人や仲のいい人がいる人にはキツかっただろう。
誰に頼ることもできず、逆に文化を教えてくれと頼られる日々だったろうし。
「当時の各国の王族は哀れに思っての。魔法使いたちに帰す魔法の開発を命じると同時に全世界で異世界召喚魔法は禁止にしようという流れになって、全世界の全魔法使いに異世界召喚魔法禁止が出た。違反した者は全魔法を封じられる程の厳罰化までしたんじゃ。そして異世界召喚魔法に関する書類は全て処分され、ほどなく帰す魔法・・・送還魔法ができて帰りたいという者らを帰した。それが500年以上前のことじゃ。」
送還魔法・・・。
ラノベやゲームで召喚魔法の対となる魔法とかいうので聞いたことある。
ということは、俺はそれで帰れるということか?
「やがて魔法使いたちは異世界召喚魔法について話すことは避けるようになり、普通の一般人の間でも禁忌の話のようになって、次第に語り継がれることはなくなり、今では誰も知らないことになったんじゃ。今では魔法使いの間では「この世界のものしか召喚できない」という刷り込みができていて誰も異世界があることさえ知らんし、王族でもそんな歴史を知っている方が少ないくらいじゃ。」
なるほど!だから今の人たちは知らず、図書館にもなにも情報はなかったのか。
「あの・・・それで、その送還魔法で俺は帰れるってことでいいのか?」
「ううむ・・・それがのう・・・。」
クープーデンはすまないという声で言ってきた。
「開発された送還魔法は条件として、「召喚した者が送還すること」なのじゃ。つまりおぬしを召喚したその「声」の主に送還魔法を使ってもらわぬといかんのじゃ。もしわしが送還魔法でおぬしを帰したら、どこに帰るかわからんのじゃ。もしかしたらおぬしのいた世界とは別の異世界に行く可能性が出てくるんじゃ。」
そ、そんな~~~!
クープーデンにめちゃんこしゃべらせてしまった。




