62話 【能力】の数
鑑定が終わって教会の奥の部屋に案内してもらった。
「あ、お疲れイオリ。」
ドアの向こうはすぐリビングになっていて、そこにある古いソファにローエとシスターは座って紅茶を飲んでいた。
子供たちはリビングの隣の部屋でそれぞれ本をとって読んだりオモチャを漁っていたりしている。
本やオモチャは孤児院があった時のものだそうで、ロックたちは「懐かしい!」と言ってはヌイグルミとかを振り回していた。
豪快な懐かしがり方だね君たち。
それから俺と神父様もローエとシスターの会話に加わって紅茶を飲みながら談笑した。
といっても俺は思い出話を聞く係のようなもので、ローエが小さい時によくグランと取っ組み合いのケンカをしていてローエが全戦全勝していたことや、教会の屋根に登って遊んでいて怒られた話などのローエのお転婆伝説を聞くこととなった。
今は立派に家事や子供たちに教育もできるしちゃんと孤児院の経営をやってるのが信じられないくらいのヤンチャだったのがわかって俺としてはとても楽しかった。
あ、因みに「寄付」はローエに相場を相談した上で俺の手持ちからちゃんと出して、鑑定が終わった後に神父様に渡したよ!
話していたらあっという間に数時間経ってしまい、教会を後にした。
それからはローエの買い物に付き合って、マジックバッグがパンパンになるくらい食料を入れて孤児院に帰った。
夕飯ができるまでの少しの間、子供たちは外に遊びに行って俺は部屋でくつろぐことにした。
ベッドにゴロリと寝転んだところで、俺は情報の精霊に話しかけた。
「・・・なあ、情報の精霊。」
『なんだい?イオリ』
「いつから俺の【能力】のことわかってた?」
俺は神父様に魔法をかけられたときに聞こえた情報の精霊の『知るときが来たね』という言葉に引っ掛かっていた。
情報の精霊は俺の【能力】を知っていたということか?と。
目に魔力を集中して「視る」と、目の前で情報の精霊はニコニコして浮かんでいた。
『僕は情報を司る精霊だよ?最初からわかっていたよ。』
「なんだよ・・・教えてくれてもよかったのに。」
俺はちょっとふくれてそう呟いた。
『毎日毎日この世界のことを学んで一生懸命ハンターやったりしてる君に?なんでもかんでも情報を与えればいいという訳ではないと思って、黙っていたんだよ。この世界のことを段々とわかってきて、そうしているうちに誰かから【能力】のことを聞くことになるだろうとは思っていたからね。もし誰も話さなかったら機を見て僕から言うつもりではあったし。』
なんだよこいつ、普段はうざいし俺のストーカーなのにそんなとこに気を使ってたのかよ。
『イオリ、【能力】見て気付くことなかった?』
「は?気付くこと?」
俺は頭に浮かんできた【能力】を一つ一つ考えてみた。
まず【超精霊親和】。
これの超がついたことが原因で精霊と話したり精霊が超協力的だということがわかった。
『つまりはイオリが魔法を使った場合、効果は激増するし失敗もないというわけだよ。例え呪文を間違えても魔力が足りなくても失敗はないってこと。』
そりゃすげえな!
次は【武術超越】。
これが謎現象の正体だったいうわけだ。
相手のレベルによって1秒が1~5秒になる、というので思い当たるのはグランと戦った時とマンティコアと戦った時だ。
グランと戦った時は1秒が3秒くらいになり、マンティコアと戦った時は1秒が2秒くらいとなっていた。
それはつまり、レベルAは2秒、レベルBは3秒になるということか。
だとすると・・・
レベルS→1秒
レベルA→2秒
レベルB→3秒
レベルC→4秒
レベルD以下→5秒
ということになるわけだ。
『周りよりとんでもなく素早くなってしかも剣術・弓術・馬術・槍術などが最強レベル。イオリの話だと戦い方は頭に勝手に浮かんでくるし、その通りに動けるんでしょ?そんな奴と物理攻撃で戦えると思うかい?』
確かに・・・。絶対強いわそんな奴。
って、今の俺か。
そして【魔力無限】。
これは俺の魔力が常に駄々漏れなのはこのせいで、魔力切れを起こさないのは無限だったからだった。
しかも操作はできるけど制御はできないときた。
『これは要は「纏技」のように魔力を操作することはできるけど駄々漏れしないように制御はできないってことだね。恐らく無理に制御して体に溜め込んだら風船みたいにある日突然体がバーンする可能性があるってことだよ。』
体がバーン!?怖っっ!!
だ、だったら駄々漏れでいいわ!
・・・ん?あれ?
魔法を使ったら精霊のおかげで効果激増?
剣で戦ったらほぼ無敵?
しかも魔力が無限にあるから魔法を無限に使える?
え、俺・・・強くね?
ていうかむしろ・・・
『やっっっと気付いたか。イオリ、君はこの世界に来た瞬間から世界最強なのさ。』
「どえええぇぇぇっ!!??」
「イオリ~!ご飯できたわよ~!」
「お!飯だって!わーい!飯だ飯だあ!」
俺は喜び勇んで部屋から出た。
世界最強って言われてもまったくピンと来ないよね!
今はそんなことより飯が大事でい!
情報の精霊は床にずっこけていた。
夕飯を終えて、のんびりしているとグランが帰ってきた。
ローエはキッチンで後片付けをしていて、子供たちは広間のテーブルの端でお描き大会を開催中だ。
「あ、グランおかえり。」
「「「グラン兄ちゃんおかえりー」」」
「おお、イオリは教会に行ってきたか?」
「あ、うん。行ってきた。」
「そうか。・・・こっちはすまんが数日待ってくれ。知り合いに聞いてみたがしばらく待ってくれと言われた。」
知り合い?なんか裏の情報屋とかだろうか?
情報屋と言えば・・・あ!情報の精霊に聞いたらわかったかもしれなかったな。
情報の精霊は上司?に呼ばれたとかで夕飯前に去ってったからなあ。
「ふうん。俺はいつでも大丈夫だよ。んで、俺の【能力】なんだけどな・・・―――――」
ポカッ
「いだっ!?」
俺が【能力】のことを言おうとしたらグランは俺の頭を殴ってきた。
「な、なにすんだよ!?暴力反対!DV!」
「ディーブイってのがよくわからんが良くない言葉だな?この野郎!って、そんなことより!【能力】は他言してはならないって言っただろうが!」
「グラン兄ちゃんディーブイ!ディーブイ!」
「あはは!ディーブイ!」
ロックとインカはDVという言葉が面白かったのかグランをからかいだした。
「イオリ、ディーブイってどういう意味?」
アンが首を傾げながら俺に聞いてきた。
「グランのような暴力的な人のことだよ。」
「おまっ!?誰が暴力的だ!?」
「いやいや。こんなに目撃者もたくさんいるじゃないか。しかも子供の前で暴力を奮うなんてひどい男だよねえー?」
俺がロックらをチラリと見ると、インカはわざとらしく驚いてみせた。
「やだー、グラン兄ちゃんって乱暴な人だったんだー。」
「知らなかったー。」
ロックまでノッてきた。
うむ!素晴らしい乗りの良さだな2人とも!
「お前らふざけんな!!」
グランがプンスカ怒ってしばらく不機嫌になってしまい、俺と子供たちでなだめながらもあははと笑った。
子供たちが寝てから改めて話そうと思って、俺は話があるとグランとローエに声をかけた。
そしてローエが子供たちを寝かしつけ、広間に戻ってきたところで俺とグランとローエと話すこととなった。
「お前・・・本当にいいのかよ?俺とローエがお前の【能力】を知って。」
「うん。っていうか、俺に関する謎のほとんどは【能力】ってことがわかったんだよ。だから謎を知ってるなら【能力】知ってるってことだから、2人とアルには秘密にする必要がないんだよ。」
「そうなのね。謎のほとんどが【能力】ってことがわかってよかったわね、イオリ。」
「そうなんだよ。んじゃ、俺の【能力】話すな。あ、できたら他の人には秘密にしてな。」
「もちろんだ。」
「私も、約束するわ。」
2人とも微笑んで了承してくれた。
「まずは俺の【能力】って4つあってさあ。」
「「はあ!!??」」
え?はあ!!??って?
「・・・ま、ま、ま、待て待て待て!!・・・イオリ!今なんつった!?」
「え?【能力】が4つあったって言ったよ。」
「の、の、【能力】が?」
「4つ」
「イ、イオリ、間違いないの!?いくつって?」
「4つ」
「嘘だろ!?いくつだ?」
「だから4つ」
ええ!?2人とも信じられないという顔をして俺を見てきた。
なんなの?4つってなんかあんの?不吉な数字ではあるけどさあ。
「ちょっとなんなの?2人ともなんでそんなに驚いてんだよ?」
「お、驚くわ!・・・い、いいか!【能力】は最大で2つなんだよ!」
「・・・・・・え?」
「神様でも2つしか持たないのよ!3つでさえ存在しないのに、4つなんて・・・あり得ないのよ!」
えええええええぇぇぇっっ!!??
2人とも信じられない顔をしていたが、俺も信じられない顔をした。
4つなのももちろん意味があります。
4つなのもあり得ないということですが、もう1つあり得ないことが次の話で判明します。




