56話 追及
情報の精霊という邪魔が入ったが、グランの言ったことは頭に入りましたよ。
「・・・・・・。」
俺は驚きで固まった。
一応注意していたが、グランに聞かれたかもしれないこともあったのは覚えている。
でもなぜ今?
なにかあったんだろうか?
とりあえず、知らないフリしてグランがどこまで確信しているのか聞き出す必要があるな。
「・・・な、なんのこと?精霊としゃべれる?」
グランは真剣な顔で俺を見ていた。
「・・・やっぱりとぼけるか。お前は精霊としゃべれるのは、わかってる。」
え、マジで?超確信してる言い方だよね。
「・・・お前に初めて会ったあの沼で、お前は蔦と沼と石の精霊に指示してたのを聞いていたんだ。精霊としゃべれるとはその時はさすがに信じられなくて気のせいだろうと思っていたが、一緒に角ウルフを倒す依頼をやったときに、光の精霊に指示していた声が聞こえてきたし、角ウルフの死体を焼くのを火の精霊に頼んでいたのを間近で聞いた。」
うええええっ!?
精霊に指示していた声を聞かれてた!?
そ、そうか!
謎現象のときは音もゆっくりになってるからてっきり俺の声は5倍速の超早口になって聞こえないのかと思っていたけど、それが聞こえてたわけか!?
・・・そりゃそうか!超早口だったら精霊も聞こえないはずなのに聞こえてるということは、他の人にも聞かれてる可能性があるわな!
あちゃー!今さら気が付いた!
「で、でもさ、それはグランしか聞いてないんだよね?気のせいじゃないかなあ!?」
「そう何回も幻聴が聞こえると思うか?・・・それにアルも聞いてる。」
は!?アルも!?
・・・はっ!?この間、一緒に依頼をしたな!
「僕も聞いたよ。・・・ただ、こっちは戦っている時だったから確実に聞いたわけではないけどね。でも、石の精霊になんか言ってたでしょ?」
アルはグランとは違っていつもの微笑みを浮かべて俺を見ていた。
石の精霊というのが聞こえてたら、おや?っと思うわな。
この間、一緒に依頼をした時に考え事してたのはこのことを考えていたのか?
「で、でもさ、精霊と話せるなんてあり得ないんだろ?記憶ないからわかんないけど。」
「ああ、あり得ない。今まで魔法なしで話せる人間なんて聞いたことないしな。・・・だが、お前の周りではあり得ないことがあまりにも多いから、しゃべれてもおかしくないと思えてきたんだ。」
「あ、あり得ないこと?」
ものすごく身に覚えがあるけど、とぼけて聞いてみた。
「まず入手不明の魔剣を持っていること、異常に強いこと、そしてお前の周りで魔法を使っていないのに魔法を使ったような現象が起きていること、そして記憶喪失だということだ。どれか1つでも珍しいことだが、それが1度になっているのはさすがにあり得ないだろう?」
うっ・・・確かに。
異世界転生とか転移とかラノベで知ってる俺ならチートかよ!?って思うくらいのことだけど、この世界に元々暮らしてて俺みたいなやつ見たら確かに疑うだろうな。
「・・・そしてこれだ。」
グランはそう言ってポケットから手のひらほどの大きさの石を取り出した。
石は真っ白に光輝いている。
『あちゃー、それ出されたかあ。』
情報の精霊の声が聞こえてきた。
グランの隣でアルも興味深けに石を見ている。
「え?なにこの石は?」
「・・・これは魔力を探知したら色が変わるという魔道具の魔石だ。知り合いに借りて来たんだ。」
魔力を探知したら色が変わる?
ふうん、そんなものがあるのか・・・。
ええー、ものすごく嫌な予感がするよ。
「主に俺たち人間が魔力の濃い場所「聖域」を探す時に使われる石で、魔力のないところでは光らないが魔力を探知したら赤、オレンジ、黄、白の順で魔力の濃さを表示して光るんだよ。そしてこんなに白く光っているのは近くに「聖域」がある時にだけだ。」
え!?そうなのか!?
ということは・・・。
「一昨日ばったりギルドの前で会ったときも持ってたから間違いない。お前の周りは「聖域」かそれ以上の魔力で溢れているということだ。」
情報の精霊があちゃーと言ったのはこの事か!
確かにあちゃーだな。
「さらに。」
うええ!?まだなんかあんの!?
「一昨日お前と別れた後、ギルマスにマンティコアとの戦いのことを詳しく聞いた。・・・お前、その腰にさしてるバスタードソードも魔剣のようだな?」
ギクッ!!
うわああっ、バ、バレたーー!?
そういえばあん時怒ってたから魔剣のこと頭になかったわ。
魔剣はほんのり光ってるから見たらすぐにわかるらしいし、ギルマスはすぐに気付いたんだろうな。
目が泳ぎまくって冷や汗をかいていてアワアワしている俺に、グランは畳み掛けてくる。
「しかも魔法も唱えずに魔剣を振り上げただけで風魔法が剣にまとわりついたそうだな?」
多分小声で話したから風の精霊との会話には気付かれなかったのだろうけど、あの時パフォーマンスでも唱えとけばよかったのか!
あの時怒ってたからそこまで余裕なかったよ!
「この際だ、はっきり聞くぞ。・・・お前は何者だ?正直に答えろ。」
「えーと、それは・・・あのー・・・。」
俺はしどろもどろになってなんとかごまかせないかとうつむいて必死に考えた。
けど、確かに俺の周りでおかしなことが起こりすぎだよね!
もう全部話した方がいいのかなあ?
でも話したところで信じてくれるか?
頭おかしいやつと思われるよな?
この孤児院は結構好きなんだよ。
雰囲気がゆったりのんびりしてて、子供たちものびのびしてて3人とも可愛らしいし。
ローエも優しいし料理めっちゃうまいし!
グランもなんだかんだで優しいし、アルもいつもニコニコ笑顔でいいやつだし。
話したことで変なやつと思われて、ここに来れなくなるのは・・・ホント寂しい。
いい人たちだからもっと仲良くなりたい。
『・・・イオリ、僕の言ったこと覚えてる?』
情報の精霊が俺の肩に乗ってきた感覚がした。
『本当に信頼してもいい人がいたら、その人たちには言っていいんじゃないかなって言ったと思うけど。』
「・・・。」
『この人たちはイオリが話して、変なやつだと思うような人たちなのかい?君の思ういい人を信頼してもいいんじゃないのかな?』
情報の精霊が・・・まともなことを言っている・・・。
これは天変地異の前触れか?
『・・・ちょっとイオリ!失礼なことを考えてるね!せっかくアドバイスしてるのに!』
『うん、まあ、しょうがないんじゃない?日頃の行いが行いですもの。』
水の精霊の呆れた声がした。
『水の精霊までひどい・・・!ま、まあ、とにかくこの人たちは信頼してもいいってことを言いたいんだよ。情報の精霊としてもね。』
え?つまりはこの2人の情報を持ってて知ってるから、大丈夫な人間と判断しているってことか?
・・・まあ、精霊だけじゃなく人間の中にも事情を知ってる人がほしかったし、いい機会かもしれない。
なにより、友達だと思っているこの2人に秘密事はなくして仲良くしたい気持ちもある。
・・・もし、変なやつとして追い出されても俺には精霊がいるから1人ではない。
俺はグッと両手を握りしめ、2人の方を向いた。
「・・・わ、わかった。正直に話す。俺は・・・――――――」
「うわああぁんっ!!ローエねえちゃん!グランおにいちゃん!」
俺の言葉を遮り、手を血まみれにしたインカが泣きながら広間に飛び込んできた。
俺たちは思わずインカを見てぎょっとした。
「ど、どうしたの!?インカ。」
キッチンからローエが出てきてインカに近づいた。
「ロックが・・・ロックが・・・」
「え?ロック?」
「ロックが、木に登って頭から落ちて、動かないの!頭からいっぱい血が出て・・・死んじゃう!ロックが死んじゃう!」




