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4話 世界について2

部屋から出ると横に廊下が伸びていて、左側にはどうやら同じような部屋が並んでいるようでいくつか扉があり、右側はリビングに続いていた。

リビングは20畳ほどある広々とした空間で、中央に大きな1枚板のダイニングテーブルがあり、奥がキッチンスペースとなっていた。

テーブルにはすでに子供たちが座っていて、俺が姿を見せると声をかけてきた。



「あ!!お兄ちゃん、体大丈夫!?」

子供たちの中で唯一の少年がこちらを見るなり声をあげた。

11~12歳くらいの赤毛の短髪でいかにもやんちゃ坊主という感じだ。


「ちょっとロック!まずは挨拶でしょ!?」

そう言って声をあげた少年の左隣に座っていた少女が少年に小突いて注意した。

少年と同じ歳くらいの栗色のポニーテールにキリッとした顔つきとさっきの言動から、どうやらお転婆系と思われる。


「こんばんわ。私はインカって言います。こっちのバカはロック。で、この子はアンです。」

横の少年とインカの前に座っていた少女を指さして言った。

アンは先ほど部屋で心配そうにこちらを見ていた黒髪の少女だ。

少年――ロックは不満げにインカを睨んでいたが、インカは知らんぷりしていて、少女――アンはちょっと呆れて2人を見ていた。


あ、そういやあ自己紹介してないや。

「こんばんわ。俺はイオリ。・・・イオリ・アソウっての。よろしく。体はもう大丈夫っぽい。」

「イオリ?変わった名前~。」

「こらっ!ロック!失礼なこと言わないの!!」

そう言ったのは山盛りの料理を両手いっぱいに持ってキッチンスペースからやって来た、介抱してくれた女性だった。


「私の自己紹介もまだだったわね。ローエ・アノンシアードよ。」

「あ、よろしくお願いします。ローエさん。」

「私のことはローエでいいし、敬語もいいわよ。見たところ、歳もそんなに変わらないし。見たところ日射病の症状は治ったみたいだし、食欲もあるなら遠慮なく食べてって。」

さ、座って。とアンの左隣でロックの前の椅子に座るよう促され、座った。

座った俺を見届けたローエはキッチンから次々と山盛りの料理を持ってきて、テーブルいっぱいに並べられた。

肉を野菜と炒めたものや、煮物と思われるものや、野菜スープが入った大鍋にフルーツにパンの山・・・。

それらを好きなだけ自分の小皿やカップにとって食べるようだ。


「今日はお客さんもいるし、ちょっと豪勢にしてみたわ。ささ、皆食べましょう!」

そう言ってローエはロックの右隣に座った。

それがいただきますの合図だったようで、3人の子供たちは一斉に思い思いの皿に手をのばし、勢いよく食べ始めた。

ちょっと遅れをとったが俺も「いただきます」と呟いてそれぞれの料理をとって食べ始めた。


料理は全体的に味はちょっと薄くはあったが、おそらく子供たちの健康を気遣ってだろう、それでもどれも美味しかった。

しかも見る限り、野菜も肉も俺のいた世界と変わらないキャベツやニンジンなどどれも食べなれたものばかりで、そこの点でも美味しく味わうことができた。

パンもフワフワで焼き立てっぽかったので、どうやって作っているのだろう?と、チラッとキッチンスペースを見たがそうして見た限り、釜やオーブンがあるような感じではなかった。

よく考えたら・・・そもそもオーブンはないか。電化製品だし。


「・・・そういえば、さっきの男の人は?俺の体を起こしてくれた、あの人。」

「あ、あの方はイオリの部屋を出たあと帰って行かれたわ。あの方はアルフレッド・ジル・カンディンスキーといって子爵様よ。」

「子爵?」

「アル様って皆呼んでるんだけど、アル様は貴族様だけどとても気さくで優しい方だから、ちょくちょく町に来て孤児院にも来て下さるの。子爵だからもっと偉そうにしていただきたいけど・・・実際、偉いんだけど、そういうのは苦手だって。」


そんな雰囲気はしていたが、マジで貴族やったんかい!

つーか、異世界あるあるというか、この世界には貴族がいるのか・・・。

子爵とか貴族とかよくわからんけど、やっぱ位が高い系かな?


「ところでイオリはどこから来たの?何で砂漠で倒れてたの?」

貴族について考えていると、ロックがパンにかじりつきながら聞いてきた。


はい、ついに来ましたよ。

情報の精霊の設定よ!通じてくれろ!


「・・・じ、実は・・・俺もわからないんだよ。き、記憶がないっていうか・・・。」

「え!?もしかして・・・記憶喪失!?」

我ながらものすごいどもっていたが、伝わったみたいだ。

聞いていたインカが思わずと言った感じでそう叫んだ。

他の皆も驚いた顔で俺を見てくる。


「わ、わからない。自分の名前はわかるんだけと、それ以外がわからなくて・・・。」

「え、本当?歳は?」

「17歳。ええと・・・多分。」

名前以外がわからないと言っておきながら、おもいっきり歳を即答してしまったが、すぐ気付いて慌ててぼかしたので、そこまで変にならなかった・・・はず。


それからいくつか質問されたが、全部「わからない」で答えた。

「それは大変じゃない。・・・もしかして、砂漠の暑さにヤられて記憶が飛んじゃったのかしら?そうなると大変ね・・・。」

そう言ってローエは少し考えると、

「イオリを助けたのも何かの縁だし、もしあれだったら数日ここに居てみる?記憶がないならここを出ても行くあてがあるかわからないでしょうし、出ていったとしても持ち物が何もないんじゃ、宿にも泊まれないでしょ?それにここにいるうちに何か思い出すかもしれない。」

「え、いいのか?・・・お礼もなにもできないし、迷惑になるんじゃ?」

「そんなの気にしなくていいわよ。何も持ってない人からお礼もらおうなんて思わないし、困ってる人を助けない理由はないわ。」

「ごめん・・・。ちょっとの間、お世話になります。その間、何か用事あったら手伝うよ。」

「あら、ありがとう。」

そう言ってローエはこちらに微笑んだ。


なんか、色々手伝わされそうな予感・・・。



食後、この世界のことを全く覚えてないという俺に、子供たちを交えローエは世界のこと―――人間界のことを教えてくれた。




この人間界には2つの大陸があり、菱形の上がえぐれたような形の大陸と、えぐれた空間に丸い形のもう1つの大陸とがあって、ここローワン王国は菱形の一番下の最も南に位置する国で、「世界最古の王国」と言われているそうだ。


そして人間界には、大昔に物凄い魔神が大暴れしていたのを勇者が倒した伝説あるのだが、その倒した所がこの国で、勇者は魔神を倒した剣を王国に寄贈したというのが今でも現存していて有名で、国の宝として年に一度一般公開イベントをしているそうだ。

俺の世界でいう桃太郎とかだろうか?そう思うとなんか納得した。


ローワン王国は世界最古の1800年以上前に誕生し、沢山の侵略や戦争に巻き込まれたが、「勇者の剣がある国」に攻めにくいこともあり、これまで国の危機になるほどの戦争はなかったらしい。

そのためか治安はどの国よりも安定しており、気候もいいこともあって農作物は名産がいくつもあり、南側の海に面した町でも漁業がとても盛んなんだそうだ。

国の中心地にローワン城と城下町ノヴェーラがあり、北と西側には森が広がり、東側には砂漠が広がっているという。

東の砂漠とはそう、俺が歩いてきたあの砂漠だ。


王国の中心は高い丘になっていてそこにローワン城があり、城を取り囲むように貴族町があって、貴族町の周りに高い城壁があるという。

その丘の麓に城下町ノヴェーラがあり、町と砂漠の間、町の外れとも言える所がここ孤児院「未来の家」があるという位置関係だそうだ。


丘とも言えないほどの何もない原っぱの上にぽつんとある孤児院だが、別に町の人達に追いやられてここに居るわけではないとローエは強く言ってきた。

ローエはそこの事情も語ってくれた。


数年前までノヴェーラの町の中にある教会に孤児院があって、そこでローエは孤児として育ったらしい。

世話が好きなローエは、成人しても住みながら孤児達の世話をしていたそうなのだが、ある日問題が起きた。

もともとの建物の老朽化がひどかったのと、隣国からの孤児が多く流れてきたことがあって、別に孤児院を用意しないと孤児院の運営が難しくなってしまい、下手したら受け入れた孤児たちが路上生活をしなければならないほど孤児たちが溢れて管理もままならなかったからだ。

となった時にローエは別に孤児院を新たに用意し、経営したいと思いたち、土地と建物を探した結果、格安でここを買えたのが5年前なんだそうだ。

そしてここ「未来の家」をノヴェーラ第2の孤児院として溢れそうになっていた孤児たちを受け入れ、協会の孤児院と共に孤児たちを世話してきた経緯があったそうだ。


元々町の人達とも仲良く可愛がってもらってたので、今でも野菜やお古等をもらったりしているらしい。

因みに土地と建物を買ったお金は、ローエが小さな頃から貯めていたものと、賛同してくれた幼なじみの男性がハンター業で貯めたもので何とか集まったそうだ。


はて?ハンター業とは何ぞや?

と思ったが、流れを止めるのはよくないかな?

ちょっともうちょっと話を聞いた方がいいから、今は流しとこう。




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