41話 アルと討伐
ある日のこと。
いつものように朝のちょっと遅い時間にハンターズギルドに向かうと、入り口でばったりアルに会った。
「あれ?アルじゃん。おはよー。」
「やあ、イオリおはよう。これから依頼かい?」
「うん。アルは?」
「僕も依頼を見にね。これでもハンターレベルDなんだよ。」
へえ!知らなかった!アルって貴族だからハンターとかに興味ないと思ってた。
「レベルDって、一緒じゃん。でもアルは貴族なのになんでハンター登録?」
そういえばエティーも貴族のお嬢様なのにハンターやってるし、貴族の間でハンターがブームなのかな?
「どんなものか興味があってね。それに色んな依頼があって毎日違うことができるって、面白いなと思ったんだよ。最近は家の仕事でやる時間がなかったんだけど、それも落ち着いたからやろうかなって。」
貴族の仕事かあ。
貴族のやることなんてお茶会してオホホって笑ってるイメージしかないけど、いろいろあんのかな。
ストレス溜まりそうだし、気分転換もあるのかもしれない。
「それに報酬は全額、孤児院に寄付してるから、そろそろしないとまだまだ孤児院には余裕がないみたいだからね。」
なるほど、貴族だから生活のためにやってる訳じゃないから金には困ってないもんな。
ちゃんとそこまで考えてるのか。偉いなあ。
「そうだ。よかったら、今日だけ一緒に依頼をやらないかい?しばらくやってないから感覚が鈍ってると思うから、1人で依頼やるのどうしようかなって思ってたんだよ。」
「え、逆に俺でいいの?俺はアルが一緒に依頼やってくれたらすげえ心強いと思うけど。」
「イオリとやってみたいと思ってたんだよ。活躍に期待しているよ。」
やった!アルの戦い方ってどんなんか楽しみだなあ。
『イオリ、心強いってあんなに強いのに謙遜し過ぎじゃない?』
今日の俺の担当?の水の精霊のちょっと呆れた声が聞こえてきた。
この間の緊急依頼の時に、水の精霊・火の精霊を始め、色んな精霊にもしもの時に協力をお願いしたのに、結局まったく呼び出す事態がなかった。
そのお詫びに、この間からしばらく担当?は声をかけていた精霊にしてもらってて、今日は水の精霊と石の精霊だ。
因みに石の精霊は俺の右肩で暇だとゴロゴロ転がっている。
肩凝りに効きそうだ、ありがとう。後で左肩もよろしく。
一緒に依頼を受けることとなった俺たちはさっそくハンターズギルドに入って掲示板の所へ向かった。
相変わらず、色んな依頼が張られてあってアルとどれにしようか話し合って、1つの依頼を選んだ。
受けたのは、「レベルD:ジャイアントスネーク討伐依頼」だ。
そう、ジャイアントスネークとは、俺がこの間の緊急依頼でナバラ村へ行く道中で瞬殺してしまったあの蛇の魔物だ。
今回の討伐する場所もまさにその時通ったノヴェーラから南東へのびる道なのだ。
ただ、前に倒したのは馬車でも半日のところだったが、今回はノヴェーラから数時間歩いたところのようだ。
依頼書によると、最近あの道にはジャイアントスネークが多く出没するようになって、よく馬車を妨害してくるらしい。
今回、討伐数は特にないようで発見できるジャイアントスネークはどれだけ倒してもいいらしい。
それくらい多く出没するということか。
依頼人はハンターズギルドのようで、報酬は3000Gと安めだが、ジャイアントスネークは肉が魔物肉として買い取ってもらえるので数を稼げたらその分報酬も多く追加されるからうまくいけば結構稼げるな。へへへっ!
受付に依頼書を持っていったが、もらった討伐用マジックバッグは中の要領を確認してみたら3~4匹入れたら一杯になりそうなくらいの小ささだった。
「かくなるうえは、俺のマジックバッグに入れるとにしよう・・・。」
それを肉屋かハンターズギルドに買い取ってもらったら大儲けだぜ、ケケケ。
「イオリ、なんか守銭奴の顔をしているよ?」
アルは苦笑しながら突っ込んできた。
あらいやだ、あなた守銭奴の顔を見たことあるんですの?
「・・・っていうか、グランから聞いていたけど、本当にマジックバッグ持ってたんだね。」
「おう。グランから聞いたのか。雑貨屋の手違いでたまたま安く手に入れたんだよ。店員が気付かずにセール品に混じってたのを俺が知らずに買っちゃったんだ。」
「へえ!それは幸運というか、店員が不幸というか・・・。魔剣もそんな感じ?」
「それもグランから聞いたのか?うん・・・まあ、そんなとこだよ。」
「ふーん。」
アルはなにやら考えるような仕草をしていた。
さっそく俺たちは町の外へ出て、南東の道を進んだ。
「アルは前にハンターやってた時は、なんの依頼をやってたんだ?」
「色々。討伐から採取から町中の依頼もやったよ。僕は一応、貴族の仕事もあるから日帰りで帰ることにしていたからね。」
「え、だったらレベルDの試験の時の野宿はどうしたんだ?」
「その時は父に掛け合って許可をもらったんだ。父は貴族の仕事を疎かにしない範囲で、ということでハンターすることを許可してくれていたけど、その試験の時はちょうど貴族の仕事が少なかった時期だったから許可が出たんだ。」
ふうん。いちいち許可をとらないといけないとか、大変だなあ。
「そういやあ、イオリは町中の依頼ばかりやってたから、ヘタレって言われてたんでしょ?なんか噂で聞いたよ。」
ヘタレの噂がどこまで浸透してんだ?
『確かになんかヘタレって私たちがイジっていたのが昔のようね。』
やっぱりイジってきてたのか!水の精霊!
確かにプークスクスされたさ!あんたとは違う水の精霊にね!ちくしょう!
『僕はイジったことないからね!』
右肩から左肩に移動した石の精霊が慌てて弁明していた。
君は肩凝りをやってくれているから文句はないよ。
「すげー心外だけど、俺はヘタレじゃないんだよ。ただちょっと、魔物を倒すのが怖いなって思ってただけなんだよ。」
「ははっ、それをヘタレというんだよ?」
・・・と、とか雑談をしながら俺たちは南東の道を数時間歩いて、ここら辺かな?という地点に着いた。
別に「ここです」という看板があるわけでもないけど、依頼書に歩いて数時間のところとしか書いてなかったから適当にこの辺りで大丈夫だろう。
「あ!イオリ!」
アルが道の先を指差すと、そこには2メートルほどのジャイアントスネークの姿があった。
ジャイアントスネークは気付いてないようで、なんかウロウロしている。
「ちょっとまずは僕が行っていいかい?どれくらい動けるか、自分でも確めときたいんだ。」
アルが立候補したので俺は素直に譲った。
アルは1歩2歩と様子を見ながら腰の剣を抜いた。
ものすごくきれいな彩飾の施された細剣だ。
その細剣の先をジャイアントスネークに向けて構えた。
フェンシングのような構え方で、となると攻撃方法は突き攻撃かな?
この時点で、ジャイアントスネークは俺たちに気が付いてシューシューいって警戒しだした。
「はっ!」
俺の考えは当たっていて、アルは1歩あゆみを進めると同時に細剣をジャイアントスネークに突き出し、それは見事に体に刺さった。
ジャイアントスネークは暴れて引き抜いたのを、すかさず別のところを突き刺した。そして3回目でジャイアントスネークの喉に刺さって、ジャイアントスネークはだらりと倒れた。
「おおー!アルお疲れさん!かっこよかったよー!」
俺は拍手して声をかけた。
けど、アルは満足してはなかった。
「うーん、やっぱり腕が落ちたかな。ジャイアントスネークぐらいだったら2回で倒せてたんだけど・・・。まあ、これから徐々に調子を戻していくよ。」
ジャイアントスネークぐらいを2回で倒してたのか?
レベルDだけど、試験で見た他のハンターたちと明らかに動きも違うから、実力的にはもっと上でもおかしくないと思う。
グランと武器も戦い方も違うけど、なんか同じくらいの強さな気がする。
俺が言うのもなんだけど。
俺も、レベルDなのにもしかしたらSとか言われているし。
アルが倒したジャイアントスネークは道の脇で血抜きをすることとなり、穴掘ってそこに血が垂れるようにした。
そしてそれをしばらく放置しておくことにした。
というのも、そうやっていると血の匂いに魔物が寄ってくるのだが、寄ってくる魔物の中にジャイアントスネークが来るんじゃないかと2人で話したからだ。
そしてその思惑は見事に当たって、近くの物陰から様子を見ていると、他の魔物もいたが、ジャイアントスネークも寄ってきた。
俺たちはそれを狩ることとなった。




