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37話 狭間

帰りの馬車はちょっと気まずかった。



グランはたまにじっと凝視してくることはあるものの、俺になんか聞いてきたりすることはなく、誰かに言ったりしている様子もなく、俺の日常会話にも普通に応じてくれる。

もしかして精霊の会話を聞かれたような気がしたのは気のせいかな?

明るいルビーナたちとの会話が盛り上がりつつ、そう考えるようになってあんまりグランを気にしないようになった。


ヒソヒソ話していたハンターたちはほとんど俺のことを話すことはなくなった。

1人が俺に助けられたこともあったし、俺がものすごい早さで倒していっていたのを目の当たりにしたからだろう。

それでもちょっと気まずかったのかこちらに話しかけてくることもなかったし、助けたお礼も言われてない。

んまあ、いいんだけどね?

っていうか、俺がちょこちょこ彼らの様子を見てる段階でだいぶ気にしてる気がするけど・・・違うからね?


帰りも途中で野宿をして、町に戻ってきたのは予想通り出発してから2日後だった。



町に帰ってきた俺たちは馬車の前で解散となった。

完了の報告は代表のルビーナたちがハンターズギルドに行くそうで、ルビーナたち5人以外の15人はハンターズギルドに行かなくていいそうだ。

そして今回の報酬は明日以降ハンターズギルドに行った時に受付に言ったらもらえるようになっているそうだ。


「今回の依頼は面白かったよ。イオリ、また機会があったら一緒に依頼しよう。」

「またね、イオリ。」

「また会おうな。」

ルビーナたちは次々とそう声をかけてくれてハンターズギルドへと去っていった。

明るくて楽しい人たちだったからこっちこそ、また一緒に依頼したいな。


「グランはこのまま、孤児院に帰るんだろ?」

「ああ。お前はどうするんだ?」

「宿屋を探すよ。」

到着したのは夕方だったので、これから宿屋を探さないとな。

「楽しかったからまた一緒に依頼しような?」

「・・・ああ、そうだな。」

グランは微妙な反応をしながらも了解してくれた。



解散した俺は前にとった宿屋へ向かって移動して、部屋を確保することに成功した。



そしてそれから数日が経った。


俺が切り取った角はハンターズギルドが買い取って、全部どこかの商会にいい値段で売れたそうで、その金額のギルド分が一部抜かれたものが追加報酬として参加していた20人のハンター全員に渡って、元々の報酬35000Gに追加で5000G足されて計40000Gもらうこととなった。

俺が角を切り取ったこともあって俺は多めにもらったようで、それでも少ない人でも追加で1000Gはもらったようだ。

俺は翌日にハンターズギルドにもらいに行ってそれからは数日ハンターズギルドには行っていなかった。

お金を稼ぐのも大事だけど、休むのも大事!

ということで、ブラブラ買い物をしたり図書館でこっちの世界のことを本で読んだりして過ごした。


そしてそろそろハンターやろうかなっという気になった今日この頃。




ふと、目が覚めると目の前は真っ白だった。



「う~ん・・・?んん?」


真っ白な空間に、俺は寝そべっていた。

あれ?俺はいつものように宿屋の部屋にいて、夜も遅くなったから寝たはずだけど・・・?

なんだ?夢かな?

体が動くようなので寝ていた状態から起き上がってみると、見渡す限り真っ白でかろうじて地面がわかるくらい。

脱いでいた靴も履いているが、寝るときに外したガントレットとグリーブはない。

立ち上がって周りを見回してみるも、なにもない。


なんだろう?ここ。


首を捻っているとどこからか声が聞こえてきた。


『あ!イオリ!』


ん?感覚からして精霊か?

精霊が近づいて来る感覚がしたので、俺は「真眼(シンノマナコ)」で「視て」みた。

目の前に、例によって30センチくらいの透明な渦のようなものがあった。

よーーーーく見たら目があった。

ものすごい糸目だ。

糸目過ぎて渦に紛れてわからないくらいだ。


よーーーーく見たので、頭に精霊の名前が流れてきた。

「えーと・・・空間の精霊?」

久しぶり(・・・・)!元気?』


え?会ったことがあるのか?


「え?や、初めましてじゃないかな?」

『うん?あれ?もしかして、会ったの忘れてる?』

う~ん、俺の担当?で会った覚えもないし、そこら辺にいたのを見た覚えもないし。


真っ白の空間で・・・空間の精霊・・・

あいたたた・・・!後頭部が痛い・・・?


「えー・・・ごめん。どっかで会った気がするけど、覚えてない。」

『ここで会ったの覚えてない?んまあ、あんまり長いこといなかったからしょうがないか。』

「ここで会った?っていうか、ここってどこ?」

『あちゃー、それも覚えてないか。ここは狭間の世界だよ。』

「ハザマ?」

『そう。あらゆるものの間にある空間の世界さ。意識と無意識の間・朝と昼の間・時間と時間との間・部屋と部屋との間とかもそうかな。その間にある刹那の間がこの空間と繋がっているのさ。』

なんだそれ、哲学の話ですか?


「えーと、つまりは異空間とか異世界と考えていいってことか?」

『簡単に言えばそうだね。そしてこの空間に僕はいつもいるんだよ。』

この空間にいつもいるなら、会ったことないと思うんだけどなあ・・・。


「なんでこの空間があるんだ?確か世界は3つしかないんだろう?」

『狭間の世界というのは呼び名であって、実際はなにもないただの空間だよ。でもこの空間は世界と世界を繋ぐ役割をしているんだよ。』

「繋ぐ?」

『例えば、神様たちのいる天界から神様が人間界に用事があって行き来したいときに、天界から1回この空間を経由して人間界に行ったりしてるんだよ。それぞれの世界は切り離されているから直接行き来はできないようになってるんだ。』

「なるほど。」

『他にも、神様が人間に直接助言や予言をするときなんかも神様がここに人間を呼んでここで会ったりすることもやってるよ。人間たちはここに来る方法は知らないばかりかこの空間の存在を知らないから、呼ばれた人間はここが神様のいる天界と誤解していることが多いけどね。』

「へえ・・・。あ、ということは、俺がここにいるのは?」

『前に来たことがあるから来やすくなっているのかな?最近は全然神様も来ないから、呼び出されたわけではないと思うよ。』

なんだそっか。

神様というのをちょっと会ってみたかったけど残念。


『この狭間の世界はとても面白いよ。時間の狭間にあるからこの世界にいると時間経過はしないし、狭間に広さはないからどこまでも広いし。でも逆に、なにもないからつまらない。地面がわかるようにはしているから長時間いても問題ないけど、地面がわからないようにしたら人間はあっという間に平衡感覚とか狂って頭がおかしくなっちゃうんだって。』

最後にさりげなく怖いこというな!

なんだここ。変なとこだな。


『そういえば、情報ネットワークで君の情報がバンバン流れてきてるよ。活躍してるようで嬉しいよ。』

え、バンバン流れてるのか?

どんな内容か、ちゃんとした情報を流してるんだろうな?

『配信された角ウルフとの戦いも見たよ。かっこよかったよ!』

「え、あ、ありがとう・・・。」

なんかそう言われると照れるなあ。

「エティーとはその後どうなってるの?」


ぐふうっ!!


「ど、どうもこうもないって。あれから会ってないし。」

『なーんだつまんない。リア充爆発しろって言いたいなあ。』

言わんでよろしい。

それからしばらく、空間の精霊と雑談をした。


そろそろこの空間から出たいなあ。

明日は数日ぶりにハンターの仕事するつもりだから寝たい。

「そういやあ・・・、こっから帰るにはどうしたらいいんだ?」

『多分もう1回寝たら人間界に帰れると思う。また来ておしゃべりしてくれたら嬉しいな。』

「ここに来れるならいいよ。」

『イオリは今回で2回来たから、また来たいときは眠るか眠らないかの間でこの空間のことを考えたら来やすくなると思うよ。』

「そっか、ありがとう。次会うときには初めて会った時のこと思い出してるかもしんないしな。・・・じゃあな。」


そう空間の精霊と別れの言葉を言って寝転んで目を閉じると、あっという間に眠りに落ちていった。


そして気が付いたら宿屋の部屋のベッドで寝ていた。

まだ明け方でもない真っ暗なだったので、精霊は来ていない。



・・・なんだったんだ、今のは。夢?

夢にしては・・・感覚とかがリアルだった。

俺の頭もハッキリしてたし、夢特有のちぐはぐな感じでもないし。

ということは、夢じゃないってことか?


空間の精霊に、狭間の世界・・・。

なんか、久しぶりとか言われてたが・・・今更ながら、なんか見たことあるような気がする・・・?


そう・・・確か、あの真っ白の空間で、誰か(・・)に・・・会った?


痛たたたた・・・後頭部が痛い・・・!


うーん、なんか思い出せない。

俺って記憶喪失の設定だけど、もしかして本当に記憶が飛んでるのか?


その後、思い出そうと頭を捻ってみるも、全くなにも浮かばずふて寝した。

そして朝に精霊に起こされた。



ちょっと遅めに起きた俺は今日の俺の担当?の木の精霊と雫の精霊とハンターズギルドに向かった。

雫の精霊は例によって30センチくらいの大きさで名前の通り雫の形をしてまん丸の目とちっちゃいニコニコした口がついている姿だ。

『今日はなんの依頼をするか当ててみよう~!』

『畑の新芽に水をあげる依頼があったらいいな!』

そんな依頼あるか!

そういうのはちゃんと農家さんがやるわい!


そんなツッコミを心の中でしていると、ハンターズギルドに着いたので中に入った。


あれ?なんか雰囲気ちょっと違う?

やけに待合所に人が多いような?


「あっ!!イオリ!!」


そう言って、待合所の人が多い所の真ん中にいた人物が、そう言って座っていた椅子から勢いよく立ち上がった。

俺と同い年くらいの黄色の髪を短いポニーテールにしてサイドのモミアゲのところは腰辺りまで長い髪型で、黄色のキラキラした目の美少女だ。

服装は軽装で、スタイルがよくてヘソだしでミニスカートだけどそこまでセクシーでもないという感じの見た目だ。


美少女は軽やかに俺の方へ駆け寄ってきて、腕にしがみついてきた。



「やっと会えたー!探してたんだからー!」

「はあ!?」




いや、あんた誰だよ!?




この話に色々詰め込んだ感がすごいですが、この話でこの章は終わりとなります。

ヒロインぽいのが出てきましたね。

次章でもぽいのが出る予定です。

そして次章でイオリの正体がバレるかも?

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