3話 世界について1
情報の精霊の取材をうけ、こちらからもこの世界のことなど色々と聞いているうちに数時間たった。
精霊たちの話をまとめるとこうだ。
この世界は天界・人間界・魔界の3つでできていて、3つの世界を総称して「ユーティリア」というらしい。
天界には神様達(多神教)がいて、人間界は人間や魔物が、魔界には魔物と魔族が住んでいるという。
大昔に神話とかのあれこれでその3つができて、自然ができた頃から精霊は存在し、精霊は3つの世界を自由に行き来できて、神様でも人間でも魔族でも誰であろうと、魔法を使う時には必ず精霊を介さないと魔法は使えない。
魔法と精霊は切っても切れない存在なんだそうだ。
精霊たちのトップは6人の精霊神なんだそうだが、天界の神様たちとは神と名はつくが別の位置付けとのこと。
つまり精霊たちは神様たちや魔族たちとは別のひとつの組織みたいなもの、ということなので彼らが魔法を使う時には神様であろうが魔族であろうがそこに悪意があっても誰でも協力する。
自然とはそういうものだから、だそうだ。
魔法がなぜ精霊を介さないと使えないのか。
それは魔力が関係しているらしい。
精神エネルギーを持つものは皆、体内でそれを魔力にして蓄積することができ、蓄積量は個人によって様々で能力が高い者(魔法使いや賢者など)ほど魔力を蓄積できる。
そしてその魔力を言葉にのせて呪文を言うことで精霊に「発注」するのだそうだ。
そしてその「発注」の魔力を精霊が摂取して応えてはじめて、魔法が発動するという仕組みらしい。
魔力は精霊にとって唯一の食べ物で、摂取することで元気になるが、蓄積はあまりできず魔力が尽きると死ぬことはないがミイラみたいにシワシワに干からびるらしい。
干からびた精霊・・・ミイラになったゆるキャラを想像しただけで怖っ・・・!
シワシワになると無限に魔力の湧き出る「聖域」に行かないと回復しないが、「聖域」は常に移動しているからシワシワにならないとどこにあるかわからないらしい。
聞いてもよくわからんけど、そういうものだと思っとこう。
ふと、そこで回復してもその「聖域」にいたらシワシワになることなくね?と聞いたが、『「聖域」は最低限の魔力しかくれない。毎食食パン1枚だったら飽きるでしょ?』とのこと。
なんか納得したわ・・・。
そして魔力は1人1人味?が違うようで、精霊にも好みの味?があるらしい。
因みに俺は自分の魔力が変?とか精霊が言っていたのを思い出し興味本意で聞いてみたら、精霊曰く『あらゆる料理が並んだビュッフェ状態』なんだと。
しかも俺に限っては体から常に魔力が駄々漏れだそうで、「発注」無しで食べ放題なのだと言われた。
そして俺が驚いたのは、ここの人間たちは精霊と会話もできないし姿も見れないということだ。
風の精霊がちらっと言っていたのを覚えていたが、気になって詳しく聞いてみたら、人間が精霊と話すには相当難しい魔法でないとできないし、その魔法ができる人間は世界に8人ほどしかいないばかりか、その魔法も10分が限界だというほど、なんだそうだ。
そうと聞いて驚かずにはいられない。
そしてさらに精霊を見るとなると、さらに難しい魔法だそうで、世界で数人しかいないというのだ。
しかし俺は魔法なしで聞こえるし、見ようと思えば見える。
なぜそんなことができるのか、精霊たちも首をひねるばかりだった。
そして気を取り直した情報の精霊の取材はもちろん俺のいた世界のことで、魔法のない世界で人間がどれだけ発展したかを特に聞かれ、科学のことや電気・ガス・水道について聞かれた。
ラノベや漫画で転生された世界はだいたい中世ヨーロッパくらいの生活レベルだが、精霊の反応を見る限りこの世界もそれくらいの生活レベルのようだ。
ただ、生活に魔法がかなり取り入れられているそうで、中世ヨーロッパよりは発展してる感じかな?
まあ、そこはこの世界にいるうちにわかってくるかな。
色々と話したところで女性がドア越しに夕飯を食べるか聞きに来て、やっと夕方だと気付いた。
そのタイミングで精霊は去ろうとして、アドバイスをくれた。
『僕ら精霊の声が聞こえて見えることはしばらく隠していた方がいいよ。僕らでも訳がわからない君の力を人間達は脅威に感じて怖がられるかもしれない。』
『異世界から来たということも隠していた方がいいと思うわ。頭がおかしい人間って思われてしまうわよ。』
確かに、もし俺があっちの世界で知らない男に「異世界から来た」と言われたら確実にヤバい奴認定でお巡りさん呼ぶもんな。
助けてもらって介抱してもらった人らだからヤバい奴って思われたくないし。
この世界にお巡りさんっているかわからないけど。
「お、おう。・・・わかった。」
『君は何でこの世界に来たかわからないということは、しばらくはこの世界で暮らさないといけないだろ?その中で信頼できる者ができたら話していいんじゃないかな?それまではそうだなあ・・・砂漠の暑さにヤられて記憶喪失になった、ってことにしたらこの世界のことがわからなくても怪しまれないと思うよ。』
「なるほど・・・記憶喪失か。」
『人間の世界のことは人間に聞くのがいいよ。じゃ、また取材させてよ~。』
「ああ、2人とも色々教えてくれてありがとう。頑張ってみるわ。」
『何か困ったことがあったら遠慮なく私たちを頼って。』
精霊2人はそう言って入ってきた窓からガラスをすり抜けて去っていった。
目の魔力を解き、それから10分位して女性が夕飯ができたと呼びに来た。