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33話 素早すぎた

休憩が終わって馬車が走り出して1時間ほどして。


「そういやあ、イオリ。一緒の依頼をする仲なんだし、さん付けも敬語っぽい言葉もなしにしないかい?」

ルビーナさんが俺にそう言ってきた。

「え、でもハンターの先輩ですし・・・。」

「グランには呼び捨てで敬語でもないのにかい?私らそんなの気にしないから。」

見るとサフィアさんたちもうんうんと頷いている。

どうやら先輩後輩にうるさくない世界のようだ。

俺としてもこう言ってくれているし仲良くなりたいし、いいかな。

「あー・・・、うん。わかった、ルビーナ。」

ルビーナはニコッと笑ってくれた。



それからしばらくすると、また魔物が現れたようで馬車が止まった。


すると話しかけない限り話さないグランが珍しく発言した。

「イオリ、行ってこい。」

「は!?お、俺!?」

俺は急に言われて驚いてグランを見た。

「戦っている姿を俺も見ときたいし、あいつらに見せてやったらいい。」

「あいつら?」

「お前のことを言っていた奴らだよ。」

頭に浮かんだのは、先程の休憩の時にヒソヒソ俺のことを言っていた連中のことだ。

俺はあんまり気になんなかったんだけど、グランは気にしてくれてたようだ。


「なんだい?イオリ行ってくれるのか?」

「え、あ、うん。ちょっくら行ってくる。」

皆が戦っているのだから、俺も一応戦っといたほうがいいかなと思ってたんだよな。

「早く帰ってこないとお菓子食べちゃうわよ~。」

立ち上がった俺に、エメルはニヤニヤしながらクッキーを見せてきた。

チョコチップの混ざった丸い形のやつだ。

「うわっ!うまそう!」

「人気店のクッキーだから美味しいわよ。早く帰ってきたら食べさせてあげる。」

ほう!人気店のクッキーだったら食べてみたいな!


「わかった!んじゃ、行ってきま~す!」


ばびゅん


「ただいま~!」


「「「はあ!?」」」

皆びっくり。


「ちょ、ちょちょ、ちょっとイオリ!もう行ってきたの!?嘘でしょ!?」

「急いで行ってきたよ。これ証拠。」

俺は腰の魔剣を抜いて見せた。

魔剣にはちょっと血がついていた。

俺は町を出発してから1回も戦ってないと皆はわかっているはずだから、血がついているということは戦った証拠となるはずだ。

「この馬車の前にでっかい蛇がいたから、それが魔物かなって思ってとりあえず首を切ってきたよ。」

馬車を飛び出したら謎現象になったから走って馬車の前に行き、2メートルの蛇の魔物が1匹道にいて馬を威嚇しているのがわかったから、全く俺に気づいてない蛇の魔物に近づいて魔剣で首を切ってみたら切れた。

首がゆっくり地面に落ちたところで謎現象が解けたから急いで馬車に戻ったというわけ。

時間にしたら俺は30秒くらいと感じたから、皆は6秒くらいに感じたはずだ。

そら驚かれるわけだね。

まだ皆ぽかんとしている。


すると、馬車の外が騒がしくなった。

なんだなんだと皆で出てみると、馬車の前の蛇の魔物の死体を見てハンターたちが騒いでいた。

どうやら後ろの馬車から倒そうとハンターたちが向かったのに、蛇の魔物はすでに死んでいたのでどういうことだと騒いでいたようだ。

「ほ、本当にジャイアントスネーク倒したのね・・・!?」

エメルがそう呟いてジャイアントスネークの死体を見ていたが、ジャイアントスネークというのか。そのまんまな名前だな!

ルビーナ以外の4人とグランがまた驚いた目で俺を見てきて、ルビーナは腕を組んで笑っていた。

「これくらいイオリなら当然だね!さすがイオリ!」

『そうじゃそうじゃ!』

『この人間の女はわかってんじゃねえか!』

精霊たちも褒めてきてちょっと恥ずかしい。

日本人だから注目されると萎縮しちゃうよ。



ジャイアントスネークは肉が魔物肉として仕えるということで、そこからは2メートルの体を何人かで解体して昼食が近かったので昼食に食べようとなった。

蛇の解体ができるハンターがいたのでその人に従って何人か力がありそうな男のハンターが解体していって、俺も手伝わさせてもらっていらない骨を土に埋める作業をした。

因みにヒソヒソしていたハンターたちは俺が倒したことを知って驚いていたが、実際に戦っているところを見たわけではないのでまだ半信半疑という感じだった。



「・・・イオリ、その剣どうしたんだ?ただの剣じゃねえだろ?」

解体作業が終わって再び馬車が走り出したら、グランが聞いてきた。

まあ、うっすら光ってるから、どう見てもただの剣ではないのはバレバレだよね。

「あ、これ?なんか、魔剣みたい。」

「は!?魔剣!?なんでそんなもん持ってんだよ!?」

「えーと、これは・・・―――――――」

あ、そういえばグランは俺が無一文でこの町に来たのを知ってるんだった。

そんな奴が魔剣持ってるのって明らかにおかしいもんな。

やべえな、ヘタなこと言えねえな。何て言う?

素直に「駄々漏れ魔力のせいで腰にさしてただけで魔剣になりました!テレペロ☆」なんて言えねえよな。

言ったところで信じてもらえそうにないし。

・・・しょうがない、ごまかそう!


「―――――――・・・なんやかんやあって、も、もらったんだよ。」

「お前・・・全然説明になってねえじゃねえか。なんやかんやって何があったんだよ?」

「うん、まあ・・・色々と。」

「もらったって、誰からだ?町中の依頼をやってるときか?」

「う、うん。そんなとこ。」

「魔剣なんて国宝級のもんをおいそれともらえるわけねえだろ!?」

「で、でももらったんだからしょうがねえじゃん。」

ものすごいグランが睨んでる。怖い怖い!


「まあまあ、グラン。そのくらいにしときな。誰にだって事情ってもんはある。あんたが根掘り葉掘り聞く権利はないだろう?」

と、ルビーナが助け舟を出してくれた。

ありがとう!ルビーナ!

「・・・まあ、そうだな。」

グランはルビーナの言葉を聞いて引いてくれた。

よかったー!グランの睨みは怖いことを覚えとこう。



そして昼になり、昼食をかねて休憩となった。

見晴らしのいい草原が目の前に広がっているところで、万が一魔物が来てもすぐにわかるくらい平坦な草原だ。

ハンター数人が焚き火を作って、そこでジャイアントスネークを串に刺し焼いていた。

焼き上がったものから順番にもらって、1人300gぐらいずつ食べることができた。

誰かが塩コショウを持ってて振ってくれたようで、味がついてて美味しかった!

よくテレビとかで蛇の肉は鶏肉っぽいと言ってたけど、まさにそんな感じだった。あっさりしてて筋肉質で。

蛇肉だけなのは物足りないような感じがしたから、町でパンをまとめ買いをしといたのをマジックバッグから出して蛇肉と食べた。

因みにギルドから支給された食料は1食で干し肉2枚に水1杯分だった。

確かにこれだけじゃあ足りないよな。

支給された干し肉は口寂しくなったらしがむ用にマジックバッグに入れといた。



『あ!ありゃゴブリンじゃねえか!』

え!?ゴブリン!?

剣の精霊の声に、慌てて周りを見回してみると、草原の向こうから3匹の魔物が来ているところだった。

緑の肌に尖った耳、身長1メートルもなく、痩せていてボロボロの布の腰巻きをしている人型の魔物だ。

顔は醜くてラノベやゲームでよく見るゴブリンのイメージそのままの姿をしていた。

ゴブリンは跳びはねるように軽やかに移動して向かってきていた。

「ギィギィ!」とか言ってて、ゴブリンが鳴きそうな声だ。


「ゴブリンだ!!」

ハンターの誰かがそう叫んで、皆はようやく気付いていた。


「んじゃあ・・・またイオリ、あんた行くかい?」

え!?また俺!?




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