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31話 緊急依頼

レベルD試験を受かって数日後のこと。



その知らせは突然やって来た。



「た、助けてくださいっ!!」


そう叫びながら汚れた服を着たおっさんがハンターズギルドに駆け込んできた。

おっさんは農夫と思われる布の服を着ているのだが急いで来たためか、服は土で汚れていて、靴もめちゃくちゃ泥だらけだ。

おっさんはハンターたちに注目されているのも見向きもせずに受付になだれ込んで、なにやら切羽詰まった感じで受付の職員と話していた。

受付の職員は話すと途端に慌て出して、職員何人かに指示を出していた。


俺はたまたまハンターズギルドにいて、これからなにか依頼を受けようと掲示板をのぞいているところだった。

「なんだありゃ?」

「なんかあったのか?」

ハンターズギルドにいたハンターたちもヒソヒソと話して注目していた。


数分くらいして、おっさんと話していた職員が叫んだ。


「緊急の依頼です!!ナバラの村に魔物の群れが向かってきていますので、その群れの討伐依頼を受け付けます!」

村に魔物の群れが!?

ラノベによくある展開きたよ!

つか、ナバラの村?どこだろう?

「魔物は40匹ほどの角ウルフの群れです!なので募集人数は20名ほどとします!レベルD以上なら個人・パーティー問いません!報酬は1人35000Gです!」

角ウルフ?そのまま角が生えている狼ってことかな?

っていうか、魔物40匹にハンター20人は少ないのか妥当なのかもわからん。

報酬はいいとは思うけど・・・。


とりあえず地図を取り出してナバラの村を探してみたら、ここノヴェーラから南東に位置する村で馬車で1日で行ける距離だ。

参加するとしたら、だいたい行って戦って帰ってで、だいたい3日かかるかな。

となると、1日10000Gちょっとか。

報酬で考えたらなかなかいい依頼だな。

俺はソロだけど、集団生活というのも経験しときたかったんだよなあ。


他のハンターたちはヒソヒソと話をしていて、参加したいハンターは受付に向かっているようだ。

『イオリ、どうする?』

俺の右肩に乗っている、今日の俺の担当?の石の精霊が聞いてきた。

「興味があるしやろうかなと思ってるよ。」

『戦う時は呼んで。僕も手伝うよ。』

「おう、ありがとう。」

と、グランが受付に向かっているのが見えた。

あ、いたのかグラン。全然気づかなかった・・・。

ベテランのグランが受けるんなら、いい依頼なのかもしれない。


俺は受付に向かった。




「おーい、グラン!」

受付を終えた俺はグランに歩み寄った。

グランは俺に気づいてくれた。

「あ?イオリいたのか。もしかして、今の緊急依頼を受けたのか?」

「うん。報酬も割りにいいし、グランが受けるならいい依頼だと思って。」

「だが、角ウルフ40匹と戦うんだぞ?お前はこの間レベルDになったばかりだろう。受けて本当に大丈夫か?」

『イオリ強いよー。角ウルフなんて全部倒せるよー。』

石の精霊が右肩でぴょんぴょん跳んでいるのが感覚でわかった。

うん、ありがとうありがとう。過大評価だよ。


「多分大丈夫だよ。ギルマスやルビーナさんが褒めてくれたし。」

「はあ!?ギルマスにルビーナが褒めた!?」

冷静なグランにしてはすっとんきょうな声をあげた。

「お前・・・なんでギルマスとルビーナがお前の戦いを知ってるんだ?」

「ギルマスは色々あって俺が北の森で魔物を倒しているところを見たんだって。ルビーナさんはレベルDの実力試験で模擬戦してもらったんだよ。」

「色々あってというところが気になるが・・・まあ、その2人が褒めらなら大丈夫だな。ギルマスもルビーナも人を見る目はあるし。」



「あら、褒めてくれてありがと。」



そんな声がして、振り返るとルビーナさんがいた。

「ルビーナさん、こんちわっす。」

「グランが雑談してるなんて珍しいと思ったら、イオリじゃないか。あんたら友達か?」

「そうなんすよ。死にかけたところをグランのいる孤児院に助けてもらって、それからなんすよ。ルビーナさんとグランは友達?」

「友達というか、同じ時期にハンターになった同期みたいなもんだ。」

「討伐依頼を取り合ったライバルとも言うね。」

グランとルビーナさんはそれぞれそう言ったが、それは友達ではないのかな?

同期もライバルもいない俺にはわかんないや。


「ルビーナさんがギルドにいるってことは、もしかして緊急依頼を?」

「受けたよ。たまたまギルマスに用事でここに来たら聞こえてきてね。村にも行ったことがあるけど、のどかでいいところなんだ。そこが困ってるなら何とかしてあげたいのさ。勝手に受けちゃったからこれからパーティーの皆に知らせないと。」

「え!?いいんすか?ルビーナさん1人で決めて大丈夫なんすか?」

「大丈夫なのよこれが。」

ルビーナさんはあっけらかんと言った。

「私ってこう見えてリーダーだがら、依頼については一任されてるのよ。」

へえ、ルビーナさんはパーティーのリーダーやってんだ。

でもしっかりしてるから適任な気がするな。


ルビーナさんはパーティーの皆に知らせに行くと去っていった。




「グラン、野宿はしたことあんだけど、こういう集団で移動するのって、初めてなんだ。やるにあたって何が必要になるかな?」

「数日分の食料に水はあったほうがいい。ギルドから最低限の食料と水は出るが、本当に最低限だからな。後はテントがありゃどうにでもなる。」

「そうなんだ。ありがとう。」

となれば食料と水を買っとこう。

なんだかんだでマジックバッグの食料は1日分しか残ってないし。


明日の早朝6時の鐘がなる頃に、南側の出入り口に馬車を手配しといてくれているそうでそこに集合するとのこと。

俺はグランと別れてギルドを出て、飲食店を数件回った。

あ、精霊たちにも声をかけとかないと。




その夜、宿屋の部屋にて。




俺は精霊たちを「呼んで」事情を話した。

いつもの火の精霊と水の精霊に加えて協力してくれる精霊を募ったら結構な数の精霊が来てしまって、部屋を「視て」みると10種類以上の精霊がいた。

「―――ってことでさ、また力を借りたいんだ。いいかなあ?」

『また面白そうなことやってるな。イオリの頼みならやるぜ。』

『私も喜んで協力するわ。』

火の精霊と水の精霊はまた快く協力してくれるみたいだ。

でも、いつもの野宿と違うのはここからだ。

「で、いつもなら合流したりついてきてもらってたりしてたんだけど、集団で移動して集団で寝泊まりする可能性もあるから、人前で皆に頼めないんだよ。だから必要に応じて必要な精霊をその時に「呼ぼう」かと考えてさ。」

『なるほど。他の人間の前で力を貸したら、イオリが魔法を使っているわけではないと他の人間にバレるかもしれないからか。』

と、ベッドの上でゴロゴロしていた盾の精霊がそう言った。

『それに、集団で寝泊まるなら誰かが焚き火を準備したり水を用意したりしてくれる可能性もあるということね。そうなったらせっかくついていった火の精霊や水の精霊の出番がなくなっちゃうものね。』

盾の精霊がゴロゴロするのを飛び跳ねて避けながら、花の精霊が続けて言った。

結構ちゃんとしたこと言ってるのに、君たち楽しそうだね。


「そうそう。だから今回は俺の担当?以外の精霊はついてこないようにして、必要に応じて「呼ぼう」かなって思ってさ。完全に俺の都合で申し訳ないんだけど、大丈夫かなあ?」

『ふふふ!大丈夫に決まってるじゃない。私たちを直接「呼ぶ」なんてあなたしかできないことなんだから、遠慮しないで呼んでね。』

『イオリが「呼んで」くれるから面白いことを目の当たりにできて、楽しいのよ。』

精霊たちはそう言って皆ニコニコ笑ってくれている。

よかった。楽しいと思ってくれているんだ。

どうしても力を借りている俺からしたら申し訳ない気持ちもあったんだけど。

魔力をめちゃくちゃあげているつもりだけど、俺はいまいち魔力を感じ取れないから本当にあげれてるのか実感がない。

だからなにもしてないのに力を借りているという、負い目のような申し訳ない気持ちになるのかもしれない。



『明後日が角ウルフとの戦いということなんだね!?配信のために明後日の担当を変わってもらって僕と光の精霊になったんでよろしく☆』

申し訳ない気持ちにならない精霊いたわ。

「また配信すんのかよ!?」

『イオリの配信を楽しみにしてる精霊もいるんだからね!』

精霊たちってよっぽど暇なのか?

ホント、俺の配信なんて見る価値ないと思うんだけどなあ。


情報の精霊はこの間のレベルD試験の様子が配信できなかったのが相当悔しかったようで、めちゃくちゃ愚痴を言われたので今回「呼んだ」のだ。

また終わった後にブチブチ言われたくないもんな・・・。


「ん?ていうか、なんで戦いの日は情報の精霊と光の精霊なんだ?配信は情報の精霊だけでよくねえか?」

『え?いるじゃん、照明係。』

「照明係!?」




光浴びながら戦えってか!?




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