30話 レベルD試験の結果
実力試験は全員がルビーナさんと戦った後にルビーナさんとカリュムさんが話し合ってその場で合否を言ってきて、見事合格しました~!
やったね!そんなに動いても攻撃してもないんだけどね。
俺の攻撃は誰も見えなかったんだそうだ。
皆、気が付いたらクレイモアに寸止めしていたとのことで、ルビーナさんだけはギリギリ見えたらしい。
でも見えたといってもそれに反応ができるわけではなかったそうで、「あんたやるわね!」とめちゃくちゃ褒めてくれた。
クレイモアが切れちゃう気がした俺の勘は当たっていたようで、魔剣は魔力で刃をコーティングしているからあり得ないくらいに切れるようだ。
なのでルビーナさんはクレイモアが駄目になる覚悟で構えていたらしい。
でも、俺が寸止めをしたのでその心意気が素晴らしいと言ってくれた。
よかったよかった。
人の武器を壊すのは悪人じゃない限りなんか気が引けるもんね。
因みに全員合格だった。
実力試験と野外試験の両方を合格してレベルDとなるらしい。
もし実力試験だけ合格で野外試験は不合格した場合は、次回レベルD試験を再び受けたときに実力試験は免除されて野外試験だけ受けられるようになるそうだ。
ルビーナさんはここまでということで去っていって、続いて野外試験となった。
「野外試験は魔物と戦っているところを見るのと、野宿をしてもらいその様子を見て合否を判断させていただきます。今から指定する場所で指定された魔物を狩ってそのまま野宿をしていただきます。必ず誰とも組まずに1人で狩って野宿をして下さい。皆さんの行動は忍ぶのが得意なハンターにお願いして常に見ていますので、不正行為などしないようにお願いします。」
カリュムさんはそう言って地図を出してきた。
そして順番に指定していった。
俺は町の北の森の中でキャタピラー10匹を倒すということになった。
倒したキャタピラーは試験用マジックバッグに入れてくれとバッグをくれた。
そしてすぐさま向かうこととなり、俺は北の森の中に入っていった。
1週間前にエティーと来たからなんとなくどこにいそうなのかはわかるんだよな。
森を数時間散策して、時々出る魔物を倒していってキャタピラーを5匹倒した。
「うん、いい調子。」
このままだったら夜までには10匹集められるかな。
・・・それにしても、本当に忍ぶのが得意なハンターってのが見てくれているのかなあ?
「・・・なあ、俺のこと尾行しているハンターって、わかる?」
『ちょっと見てくるわ。』
風の精霊が辺りを見に行ったようだ。
・・・と思ったらすぐ帰ってきた。
『いたわよ。イオリの後方10メートルのところに。黒づくめの人間が。』
果たしてその格好は正解か?
不審者と誤解されても知らないぞ?
ま、まあ、それより。
10メートルだったら精霊と小声で会話できるな。
人に行動を見られるというのはなんだか変な行動とってないかと不安になって動きもぎこちなくなるなあ。
でもしょうがない、試験だもんなー。
とりあえず、夕方にまた火の精霊と水の精霊が来る約束してるから、それまでにはキャタピラーを終わらせとこうかな。
「夕方までにはキャタピラーを終わらせとこうかなと思ってるから、魔力あげるから皆キャタピラーを探してくれない?」
『いいよ!面白そう!』
『・・・協力しよう。』
『暇だからいいわよ。』
うんうん、精霊たちは協力的でほんと助かる。
精霊たちは四方八方に散ってキャタピラーを探してくれた。
俺も探して残り5匹はほどなく倒してマジックバッグに入れて、終わらせることができた。
「ふう、終わった!皆協力してくれてありがとうな。」
『『『どういたしまして。』』』
それから夕方近くになったので、森の中で開けたところがあったのでそこに野宿をすることにした。
一昨日の野宿のおかげで段取りはわかってるのでサクサク進んでいって、テントを設置して焚き火の準備で石で囲った場所を作って、落ちてる枝を拾い集めて適当な長さに魔剣で切った。
『よお!お待たせ、イオリ。』
『イオリ、お疲れ様。』
一昨日同様いいタイミングで火の精霊と水の精霊がやって来た。
「お疲れさん、2人とも。よろしくな。」
この火の精霊も水の精霊も、一昨日一緒だった精霊とは個体が違うが事情は知ってるみたいだけど今レベルDの試験中で見張られながら野宿するということを説明した。
『わかったわ。じゃあ、私たちが水を出したり火をつけたりするときは、イオリは手を適当にかざす動作をして。そうしたら魔法を使ってるように見えるから。』
「なるほど。了解。」
『早速だけど、焚き火をつけるか?』
「うん、お願い。」
俺は焚き火に手をかざした。
すると焚き火に火がついた。
「よし、火の精霊ありがとう。魔力どーぞ。」
それからはあっという間に日が落ちて、焚き火の炎の光だけとなった。
一応ここって、魔物の出る森の中だもんな。
なんか今にも魔物が暗闇から出そう。
「うーん、どこからか魔物が突然襲ってきそうで怖いなあ。」
『でも試験のために頑張んないとね。』
『そうだよ!僕たちもいるから大丈夫だよ!』
風の精霊と獣の精霊が励ましてくれた。
精霊っていい奴ばっかだなあ。
俺ってば単純だからそう言ってくれただけでちょっとやる気出たよ。
「そだな。精霊がいるから大丈夫か。頼りにしてるよ。」
超協力的だし、なんかあったらすがろう、うん。
んまあ、よく考えたら俺には謎現象があるから、魔物がこっちを攻撃する気になったら周りが遅くなるからわかるかな。
夕食はマジックバッグにもしもの時用に多めに買っていた食料の中から、ウインナーと自分用のヒカリキノコを拾った枝に刺して焼いて、塩胡椒をかけて食べた。
「うーわっ!うっまい!!」
買っといたクロワッサンもちょっと焼いて食べてみたりして、夕食は大満足だった。
ガサガサッ
『イオリ、美味しそうな匂いにつられて魔物が来ちゃったみたいよ。』
え!?ホントか!?
闇夜で分かりづらかったが、ブラックマウスが2匹草むらから出てきていた。
おっと大変。
謎現象がすぐに始まったのでサクサク倒した。
ふーむ、こうやって野宿していかなきゃいけないのか。
なかなか大変だなあ。
今更ながら、1人で野宿をするということの大変さを理解した。
ハンターたちはこんなのを経験してんだね。
あちらの世界だったらまず魔物がいないし、治安の面でも酔って寝てても大丈夫な日本の生活しか知らないからなあ。
実際に体験しないとわかんないもんだねえ。
それから水の精霊に水を出してもらってさっと体を拭いて、夜を明かすこととなった。
花の精霊を呼んで魔物避けの花を出してもらったら?と精霊たちに言われたけど、何事も経験してみようと今夜は見張りをなんとかやった。
途中で何回も睡魔に襲われたけど焚き火の周りを歩いてみたりしてなんとかしのいだ。
魔物は結局夕食後のあの1回限り来たくらいで、後は気配がする程度で襲われることもなかった。
精霊たちは睡眠が必要ではないので起きてたが、日付けが変わったくらいで獣の精霊と土の精霊は担当?が終わったとかで去っていって、風の精霊もほどなく去っていって、火の精霊と水の精霊は朝方に今日の俺の担当?と入れ違いに去っていった。
『イオリのバカバカバカ!なんで教えてくれないのさ!』
今日の俺の担当?は情報の精霊だった。
眠たいときに情報の精霊はめんどくさい・・・。
「いや、だって絶対配信とかするだろ?正直俺の配信なんてそんな面白くないし。落ち着いて静かにやりたかったのもあってさ。」
『面白いから配信するんじゃないか。それになんだい、落ち着いて静かにだなんて。まるで僕といると騒がしいみたいな言い方してさ。』
「え?自覚ないタイプ?」
テントをしまって町に戻ってハンターズギルドに報告して試験用のマジックバッグを渡したら試験は終わりとなった。
翌日、ハンターズギルドに行くと受付からレベルD合格と言われた。
やったー!




