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29話 レベルD試験を受ける

自分は神経が太かったようだ。



寝れるかなと思っていたら気が付いたら朝だった。


うん。俺はヘタレじゃない。

危機管理能力が高いだけなんだ。

あれ?高いんだったら寝れないんじゃ・・・?



・・・・・・。

うん、まあ、何はともあれ魔物の襲撃を受けなかったのだから良しとしよう。そうしよう。



朝は、今日の俺担当?の精霊が起こしてくれた。

テントから外に出ると、焚き火は消えて灰だけ残っていて、テントを囲んでいた魔物避けの花は失くなっていた。

さっさと朝飯を食べてテントをマジックバッグにしまって、俺は林からノヴェーラの町に向けて歩き、約7時間後にヒーヒー言いながら帰ってきた。


ハンターズギルドにヒカリキノコや行き帰りで倒した魔物を入れた採取用のマジックバッグを渡して中を確認してもらったら、ヒカリキノコがとても大きいいいサイズだったようで報酬が上乗せされて9000Gと、魔物の買い取りが5000Gで合計14000Gもらった。ひゃっほー!


「お疲れ、イオリ。初めての野宿はどうだったんだい?」

受付をしてくれたオリアナさんはそう聞いてきた。

「楽しかったよ。外で寝るのが初めてだったから大丈夫かなって思ったら、瞬間に寝てた。」

「あんたはヘタレなんだか豪胆なんだかわからないね。1人で野宿なんて話し相手がいないから寂しいし、魔物が襲ってこないか不安で寝られないもんだよ?」

オリアナさんは呆れたように言ってきたが、普通なら寝られないというのはわかる。

でも俺は花の精霊のおかげで魔物の心配をせずに寝られたし、その他の精霊のおかげで寂しくなかったし。


「この分じゃあ、レベルD試験を受けるってことでいいのかい?」

「うん。お願いしやす!」

俺がチョケて返事したのを呆れた目で見ながら、オリアナさんはレベルD試験についての用紙をくれた。

「大丈夫かしらねえ・・・。登録はしておくから、明日はこの用紙に書いてあるところに行ったら受けられるわよ。必要なものは用紙に書いてるから、今のうちに買って揃えておきなさいよ。」

「ありがとう!」


俺はとっととハンターズギルドを出て、用紙を見ながら必要なものを買いにいくことにした。

といっても、テントや食料などすでに買っているものがほとんどだったので、この機会に早速と調味料を買った。

本当は味噌とか醤油があったら味のバリエーションが増えるからいいんだけど、ここはヨーロッパっぽい調味料(オリーブオイルとかバルサミコ酢とか)しかなかったのでとりあえず雑貨屋で各調味料が小瓶に小分けに入った旅用のセットがあったので買った。

これをマジックバッグに常備しといたらいいかな。


それからはお菓子やら肉やらを多めに買って、孤児院に遊びに行った。

あのヒカリキノコをお土産に渡したかったし。


ヒカリキノコは皆に喜ばれて俺が採ってきたのがでかかったみたいで驚かれた。

その晩は孤児院で夕食を皆で食べて、ローエのキノコ料理が炸裂してめちゃくちゃ美味しかった!


夕食後にそういえば宿屋をどうしようかと思い出して、ローエたちに話すと1日だけなら泊まってけばと言ってくれた。

明日は試験で野宿だし、宿を取るとなると今夜だけ1泊となるのでそれで数千G払うのはもったいないと思ったので、泊めてもらうことにした。




翌日、孤児院を午前中に出て銭湯に寄って風呂に入ってから昼前に町の西側塀の外の草原に向かった。

正午から、草原で試験をやるみたいなのだ。


『試験ってどんな感じなのかな?ワクワクするね!』

『・・・頑張れ。』

今日の俺の担当?の獣の精霊と土の精霊がそれぞれはしゃいだり応援してくれた。

獣の精霊は子犬を更に丸っこくゆるキャラ風にしたクリクリした目の姿で元気にはしゃいでいて、土の精霊は土や石を全身にまとっている人型の姿をしていてちょっと寡黙な感じだ。


草原に行ってみると、同じ試験を受けるハンターと思われる老若男女がいた。

これは用紙に書いていたのだが、今回のレベルD試験を受けるのは俺を入れて6名とのこと。

見たところ、10代~40代の男3人女3人だ。

皆、表情はそこまで固くないけど緊張しているようで雰囲気がなんか重い。

俺も特に話しかける知り合いがいるわけでもないので、なんとなく近くにいて黙って試験官が来るのを待った。



そして正午ちょうどに、試験官となるハンターズギルド職員と1人のハンターがやって来た。


「あれ、カリュムさんじゃん。」

ハンターズギルド職員はカリュムさんだった。

カリュムさんはニコニコ笑うと、俺たちに声をかけてきた。


「ハンターズギルド職員のカリュムです。レベルD試験を今から開始したいと思います。皆さんお集まりですね?お名前を確認します。」

カリュムさんは1人1人の名前を確認して、試験を受ける全員が来ていることを確認した。

「全員来てますね、ありがとうございます。では早速、実力試験から始めたいと思います。皆さんと模擬戦をしてもらうのは、こちらのレベルBのルビーナさんです。」

カリュムさんは一緒に来たハンターを紹介してくれた。

ルビーナさんと呼ばれたハンターは、20代後半くらいの女性で赤いめちゃくちゃ長い髪をポニーテールにして赤目の凛々しい感じの美女だ。

髪と目と同じ赤い鎧を身に付けていて、腹部や太ももをあらわにしているけど、筋肉がめちゃくちゃついててセクシーというよりはカッコいいスタイルをしている。

武器は細めの大剣クレイモアを背中に背負っていた。


「レベルBハンターのルビーナだ。よろしくね。」

ルビーナさんはニカッと笑った。

しゃべり方といい、姉御肌っぽい感じかな?

「ルビーナさんは防御に徹してもらい、皆さんは1人ずつ彼女に攻撃していってもらって、攻撃後に俺とルビーナさんで判断させていただきます。攻撃方法は問いません。魔法が得意な人は魔法でもいいですし、どんな武器でも構いません。」

そして最初の1人が呼ばれてルビーナさんの前に立って、他の皆は少し離れて見守ることとした。

呼ばれるのはどうやら試験を申し込んだ順のようで、俺は5番目だ。


ルビーナさんはクレイモアで防御する形で構えて、そこに1人目の受験者が剣で切りかかっていった。

そういえばエティー以来、誰とも依頼をやってないから他の人の戦い方って久々に見たな。

なるほど、剣はああ持つのか。

でもなんか動作が遅い気がするなあ。

しばらくして、ルビーナさんの合図で1人目は終了した。


2人目は魔法使いのようで、魔法で攻撃していた。


『数多の精霊がひとり、風の精霊よ!風の力で矢を生み我が前の敵を射て!』


ロックの魔法の練習とは違って、呪文をスラスラ言っていた。

魔法使いの手からは四角形の魔方陣が浮かんでいた。


すると風の精霊がすぐさまやって来た。

『いいわ、風の矢ね。』


『ウインドウアロー!』


風でできた矢が3本魔法使いの頭上に出現して、ルビーナさんに勢いよく飛んでいってクレイモアに当たった。

わあー!すげえ!カッコイイー!


『あら、イオリがいるじゃない。』

おや、風の精霊に見つかったようで、そんな声が聞こえてきた。

『イオリはハンターの試験を受けてるんだよ!』

獣の精霊が勝手に答えてくれた。

『あらやだ、見ていこうかしら。』

見物人が増えたよ。

『ていうか、情報の精霊はいないの?イオリのハンター試験なんて飛んできそうなのに。呼んでこようかしら?』

止めてくれよ!あいつ来たら絶対生配信させられるよ!

ただでさえこの間の変なのを配信されたんだからさあ!

静かに落ち着いて試験受けさせてくれよ!

俺は皆に気付かれないように風の精霊がいるであろう方向に向けて苦い顔をして小さく首を振った。

察してくれたのか『嫌なのね?わかったわ。』という声が聞こえてきた。


よかった。これで落ち着いて試験受けられる。


3人目はナイフで攻撃して、4人目は槍で攻撃し、次はいよいよ俺の番となった。


「次、イオリだね。」

カリュムさんに促され、俺は4人目の人と交代して前に出た。

「・・・あのイオリって、町中の依頼ばかりしていたって噂のハンター?」

俺を見た受験者たちがヒソヒソ話をし始めた。

え、やっぱり俺、噂になってたんすか!?

「多分。最近は採取とかしているらしいぞ。」

「うっそー。ヘタレなんでしょ?どう見ても弱そうなんだけど。」

え、俺ヘタレイメージつきすぎじゃね?


『イオリがんばれー!』

『頑張ってヒソヒソ言ってる人たちを見返してやんなさい!』

『・・・うむ。』

一方精霊たちは激励してくれた。

見返すつもりはないんだけどなあ・・・まあ、頑張ってやるけどね。


「よろしくお願いしまーす。」

俺は腰にさしていた魔剣を抜いて構えた。

構えは先程の1人目の人の構え方を参考にしてみました。

魔剣を見て、ルビーナさんが驚いていた。

「ん!?ちょっと!それ魔剣じゃないのかい!?」

その言葉にカリュムさんも他の受験者たちも驚いて見てきた。

「え?あ、そっす。」

「どうしたんだい!?そんな魔剣持ってるなんて!?」

「えーと、なんとなく?」

「なんとなく!?なんだいそりゃ!?・・・まあ、いいや。それを使いこなせてるか見てやるから、攻撃してきな。」

「あ、はい。」


ルビーナさんが防御の構えをとったので、俺が動いた瞬間に謎現象にまたなった。

俺は構わず駆けて行って、クレイモアに切りつけ・・・ようと思った瞬間に、クレイモアが切れちゃう気がしたので、慌てて寸止めした。


そして解ける謎現象。


「「「・・・は?」」」


ルビーナさんもカリュムさんも受験者も、皆ぽかんとして俺を見つめていた。




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