27話 野宿やる?
エティーと討伐依頼をしてから1週間がたった。
あれからもちょこちょこ討伐か採取の依頼はやっている。
誰かと一緒に依頼を受けるというのはあれからやってはいないけど、精霊がいるので1人寂しくやっている感じにはならずにすんでいる。
そして採取の依頼を終わらせたある日のこと。
受付のオリアナさんが報酬を渡してくれたが、続けてこんな話をした。
「イオリ、討伐や採取の依頼を最近やってるから、次に依頼を受けたらレベルD試験を受けられるわよ。」
ハンターがレベルをあげるには、定められた指定数の依頼をこなして試験を受ける必要があるらしい。
俺は今レベルEなんだけど、FからEへの試験はなかった。
レベルEまでは言わば初心者がハンターに慣れるまでの研修期間みたいなもんなんだそうだ。
「レベルD試験ってどんな内容?」
「実力試験と野外試験の2つがあるわ。実力試験は試験官と模擬戦をして試験官がレベルD相当か判断するの。野外試験は町の外で魔物と戦ったり野宿している様子を見て判断するのよ。」
「え!?野宿なんて試験にあんの!?」
「依頼はこの町の近くとは限らないし、討伐で指定数の魔物を倒せない時は野宿して探したりすることもあるのよ?ハンターだったら野宿は当たり前よ。」
うーん、レベルD試験は受けたいけど、野宿かあ。
外で寝たことなんてあちらの世界でもなかったなあ。
「そういえばあんたは町の中や近くの依頼ばっかりだったから、野宿したことないんじゃないのかい?」
ギクッ!さすがオリアナさん。鋭い!
「うんそう。やっぱり試験受けるなら1回は経験しといた方がいい?」
「そうだねえ。どんなもんかわからないまま試験受けるのは危ないと思うよ。丁度後1回で試験受けられるんだから、その1回は野宿できるような依頼にししてはどうだい?」
確かになんにも知らないままで試験で野宿やったらなんかミスしそうだし。
「明日早速そうするよ。ありがとう、オリアナさん。」
俺はそう言ってハンターズギルドを後にした。
『イオリ、明日ホントに野宿するのか?』
今日の俺の担当?についてきていた石の精霊が俺の左肩の上でそう聞いてきた。
手のひらサイズの石に足が生えた姿で、小さな半目がついている。
「うん。まあ、町の外も何回か行ってなんとなく慣れた気もするし、経験しといた方がいいかと思って。」
『ははは!1週間前まで町の中の依頼しかしなかったヘタレにしてはいい意見じゃねえか!』
そう言ってきたのは剣の精霊だ。
ナイフのような姿で、刃に鋭い目と口がついていて、口はニタリと笑っているようにいつも口角が上がっていて、柄から2本の腕が生えてて小さなナイフを1本ずつ持っている姿だ。
剣の精霊はフワフワ浮いていて、俺の頭上で言ってきていた。
「とりあえず、これから明日に向けての買い物しとこうかな。明日依頼を受けたらすぐに出発できるように。」
『真面目だな!』
俺は見た目と言動がチャラいだけでもともと真面目なもんでね。
ということで、早速雑貨屋に行って1人用のテントを購入。
店員さんに相談してみて、野宿に必要なものを買っていった。
お金はそこまで出せないので、そのなかでも安いものを購入した。
そして食料は多めに用意した方がいいという店員さんのアドバイスをもらったので、雑貨屋からテイクアウトもできる飲食店へ移動して多めに購入した。
不測の事態とかある場合もあるから、1日の予定でも数日分は用意しといた方がいいらしい。
俺はマジックバッグがあるから数日分なんて余裕で入る。
飲み物は独り暮らしを始めてから一応水筒を買ってるから、それがあるからいいか。
中身は宿屋で超格安で入れてもらえるから問題なし。
それに無くなったりしたら水の精霊呼んで水出してもらったらいいし。
そして宿屋に帰って、店主に相談してみると、明日の宿代だけなしというのはさすがに無理なので、明日で一旦宿を出る形にして町に帰ってきたらまた宿を取り直すことにするか、泊まってなくても通常通りの値段で払い続けるかどちらかと言われてしまった。
店主としては明日で一旦宿を出る形にする方が、オススメではあるらしい。
通常通りの値段で払い続ける方は不測の事態で数日帰ってこなかったハンターもいるのでその分がもったいないのと、一旦宿を出てもらったほうが宿屋としては空きの部屋に次のお客さんを入れやすいのだそうだ。
ということで俺は一旦宿を出て、町に帰ってきたらまた宿をとるということにした。
そして翌日。
ハンターズギルドに朝から向かって、掲示板を見ていた。
『こうして見ると、色々な依頼があるのね~。』
『あらあら!新薬の実験台募集ですって。面白そうね!』
いやいや!面白くないよ!めちゃくちゃ怖いよ!
なんちゅう依頼張ってんだよ!?
今日の俺担当?の花の精霊と水の精霊が呑気にそんなことを言っている。
花の精霊は例によって30センチくらいの大きさで、花の形の頭にクリクリした目が2つついている。
花の形のスカートをはいていて花のスカートの横から手が生えていて片手に小さな花を持っている姿だ。
野宿に必要な水と火の問題で、火の精霊と水の精霊を夕べ「呼声」で「呼んで」事情を話して、今日ついてきてもらうように頼んでいたので、今日は水の精霊がいるのだ。
因みに火の精霊はよく色んなところに呼ばれるそうで、今もどこかに呼び出されているようで、後で合流予定だ。
「うん?おう、イオリ。」
そう言われて振り返ると、グランの姿があった。
だいたい週に1回くらいここでグランにばったり会ったりする。
「あ、グラン。おはよう。グランも依頼?」
「ああ。この時間お前がいるなんて珍しいな。」
グランはいつも朝早くからハンターズギルドに来て依頼を受けている。
俺は朝のハンターの多い時間帯を避けてちょっと遅く来ているのだが、それをグランは知っているようだ。
「そろそろレベルD試験があるから、野宿の練習をかねて依頼を受けてみようと思って。」
そう言うとグランは呆れたような目をしてきた。
「つーかお前、まだレベルEなのか?ヘタレの噂を聞いていたが、マジだったとはな。」
おやおや、グランは余計なことも知っているようだ。
「でも最近は討伐とか採取の依頼やってるぜ。」
「ハンターになって1ヶ月で討伐と採取の依頼が最近って、やっぱりヘタレじゃねえか。」
ぎゃふん!
く、くそう。なかなかいい毒吐くじゃねえかこのやろう!
プークスクス。えーん!女子2人(精霊)に笑われたよお!
「ととと、とにかく野宿が必要な依頼を探してんだよ。」
「そうかそうか。・・・だったらこれがいいんじゃないか?」
そう言ってグランは掲示板にあった1枚の依頼書を指さした。
そこには「レベルE:ヒカリキノコ20個採取依頼」という依頼書が張ってあった。
「ヒカリキノコ採取?」
「ああ、この依頼は飲食店が定期的に出してる依頼で、このヒカリキノコというのはこの町から南に6~7時間歩いたところにある林にだけ生えるキノコで、めちゃくちゃうまいんだよ。」
「へえ、南に6~7時間かあ。」
「このヒカリキノコは見た目が普通のキノコと変わらないからよく間違われるが、夜になると光るのが特徴なんだ。」
「だからヒカリキノコって名前なんだ。あ、だったら採るのは夜がいいってこと?」
「ああ。だからこの依頼を受けたら昼間のうちに林に向かって夜になるのを待って採取してそこで野宿して、朝になったら帰ってくるようにするのをギルドも勧めてんだ。野宿したいんならちょうどよくないか?」
確かに依頼も採取だから簡単そうだし、余裕をもって野宿できそうだからちょうどいいな。
報酬は・・・7000GとなかなかレベルEの採取にしては高いし。
「うん、これにするよ。サンキュー、グラン。」
俺は依頼書を取って受付に向かった。
おや?今日はオリアナさんじゃないのか。
受付には男性職員が座っていた。
この男性職員はオリアナさんと交代で受付にいる人で、もちろんこの男性職員とも俺は顔見知りだ。
「カリュムさん、おはようっす。」
茶髪の天パのフワフワ頭に糸目でいつもニコニコ笑顔の30代くらいの男性職員カリュムさんは俺をかけるとニコニコ返事をしてくれた。
「やあ、おはようイオリ。依頼かい?」
「コレお願いしますー。」
カリュムさんは依頼書を見ると驚いていた。
「本当に採取依頼やるようになったんだね。てっきりフェイクニュースだと思っていたよ。」
なんでそうフェイクニュースと思うかね。
俺が町中の依頼ばっかりやってたせいですかね!すいませんね!
無事依頼が受理されたので俺はとっととハンターズギルドを出て、とっとと南の林に・・・
あ、いけね。
林の詳しい場所がわからん。
『地図買ったら?』
「それな。」




