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20話 採取依頼を受ける

宿屋を出て、近くの飲食店でベーコンレタスサンドと飲み物で昼食をすませると、ハンターズギルドに向かった。


あ、因みに今使ってる宿屋は最初に泊まった宿屋じゃない。

最初に泊まった宿屋は町中ではとても安い1500Gだったが、飯がものすごく質素だったので、契約した1週間だけ泊まってすぐ宿屋を変えた。

だって、朝晩食事付きっていっても、朝は信じられないくらい固いパン1枚と具がほとんどないスープだけだよ?

しかも晩は油ギトギトの謎の炒め物とシナシナのサラダと固いパンが、1週間同じメニューだったんだよ!?

それに耐えられるか!?俺は1週間耐えたのが限界だった・・・。


新しい宿屋は2000Gと普通の平均的な価格設定の宿屋ながら、料理も部屋も普通で申し分なかったので、来週分もすでに契約している。

料理は今のところ飲食店を入れても、ローエの料理が1番だな。

ちっ!孤児院を出ていくのは早まったかもしれぬ・・・。



とか思ってたら、ハンターズギルドについた。

因みに俺の左肩には鳥の精霊、右上の空中辺りに水の精霊がいる。


ギルドの中に入ると、昼過ぎなのでやっぱり人はまばらだった。

その方がゆっくり依頼を見れるので、俺はいつもこの時間に来ていてる。

掲示板にいくと何枚か貼られている依頼を吟味している1人のハンターの後ろ姿が見えて声をかけた。


「こんちわ、フィンジさん。」

「お!イオリ。」


声をかけたハンターはにこやかな笑顔でこちらを向いた。

この人はベテランハンターのフィンジさん。

ハンターレベルBで40代半ばのがたいのいい爽やか中年おじさんで、銀の全身鎧を着て黒の短髪に青の瞳で、背中に大剣を装備している。

このおじさんはいつも午前中は自主特訓をして午後から依頼をしているそうで、だいたい午後から依頼をやっている俺と時間帯が被ることが多かった縁でどちらともなく話しかけて仲良くなった。

ベテランならではのギルドの利用するうえでの暗黙の了解やらマナーやら、裏技なんかも教えてもらった、いい人だ。


「なんかいいのありました?」

「あったにはあったが、ソロでやるかパーティでやるか迷ってるとこだ。」

フィンジさんは3人パーティのリーダーだ。

だが後の2人が怠け癖だそうで、困ったもんだと常々俺に愚痴っている。

因みにその2人というのは魔法使いの男と盗賊の女だそうだが、ハンターズギルドに来るのも怠けるレベルだそうで、未だに2人とも俺は会ったことがない。

「今日は討伐の気分だから討伐依頼を見たら、いいのがあったが、ソロでやるには味気ない気がしてきてな。あいつらとはしばらくパーティで動いてないから、ここいらで1回動いてなまってないか見とかないとなって思ってな。」

「いや、なまってないかなんて、怠け癖のある2人なら明らかにじゃないですか?」

「ぐぬ・・・、イオリは手厳しいな。」

フィンジさんはそう言って苦笑した。

まあ、確かに会ったこともない2人に失礼な発言だったなあ。

でもフィンジさんの愚痴をいつも聞いている限りは、そう思っても不思議ではないレベルなんだもん。

魔法使いの男はいつも魔導書ばっかり読んでてその場で動かず、必要なものは魔法で取るほどだそうで、盗賊の女はいつも寝ていて定期的に起こしに行かないとなにも食べないほどだそうだ。

そんな2人とはなんの因果か幼なじみのフィンジさんが世話をしているらしい。お人好し過ぎる。


「フィンジさんがいつもお世話してるから、その2人が甘えちゃってるんじゃないですか?このまま2人の嫁になるんですか?応援しますよ。」

「なんで嫁!?なんで応援されにゃならん!?」

「応援は応援団がいいです?チアはさすがに俺恥ずかしいですが。」

「応援団!?チア!?なんの話だ!?」

『チア知ってるよ!イオリが情報に言って情報がネットワークに晒してた!見てみたい!イオリのチア!』

『いいわね!イオリのチアをネットワークに晒しましょう!』

精霊2人は黙らっしゃい!そんな姿するか!

いや、そもそも俺はなぜ情報の精霊にそんな話をしたんだ!?

なんかの流れでコスプレの話になって・・・。


・・・うん、一旦忘れよう。今関係ないしね。


「・・・んまあ、冗談はさておき。」

「お前の冗談は疲れる・・・。」

フィンジさんすまんね、そんな気分だったもんで。

「んまあ、ソロが味気ないなら、2人の内どっちか誘えばいいんじゃないすか?2人とも誘うの手間そうですし。どっちかと1回ずつ討伐したらある程度の動きわかるかと。」

「ほう、なるほど、それいいな。」

俺の提案にフィンジさんは感心する声をあげた。

そして早速そうすると言ってフィンジさんは目をつけていた依頼を持って受付に行ってしまった。


『人間は色々考えることがあって大変だね~。』

『でも見ていて面白いわね。いつも私たち精霊はそこら辺をただ浮遊しているだけだから、こうやって人間の話や行動を見ることにあまり興味がなかったのよね。』

精霊というのは「自然」そのものであるから、1つ1つの命に興味がなかったようだ。

それが、俺に引っ付くようになったことで、自然と俺の話の内容に興味を持ち、人間の話や行動に興味が出てきた、ということのようだ。


「それがいいことか悪いことか、俺にはわからないなあ。」

俺がそう2人だけに聞こえるように小声で言うと、2人の笑い声が聞こえてきた。

『いいか悪いか、人間らしい考えでいいねえ~。僕らはいいか悪いかなんてどうでもいいよ。大事なのは今何を思ったか、だよ~。』

『私たちはイオリに引っ付いてたら人間の話を聞けた。それがよくても悪くてもそれが全て。例えよくても期待しないし、悪くても後悔しないわ。それが私たち「自然」なのよ。』

「うん、よくわからん。」


話がよくわからん方向に向かい始めたので、俺はさっさと逃げて掲示板に目を向けた。

そうだよ、俺は今日いよいよ採取の依頼を受けに来たんだよ。

忘れかけるとこだったよ。


採取の依頼は2枚あり、そのうちの1つの依頼を受けることにした。

薬草採取の依頼で、町の外で生えている薬草の束5つ採ってきて欲しいというもの。報酬は1600G。

確か薬草の束1つは200Gが平均だったはず。

普通に売ったら5つで1000G、グランデニア照会の道具屋では1束300Gで5つで1500G、そう考えたら依頼を受けたほうがいい。


依頼の紙を受付へ持っていくと、いつも受付にいるおばちゃんが対応してくれた。

「あら、イオリ。今日も来たのね、頑張るわねー。」

「こんちわ、オリアナさん。」

この受付のオリアナさんは最初にハンターズギルドに来たときに色々とハンターのアレコレを教えてくれた人だ。

40代前半で黒髪の長い髪を後ろで束ねた、まさに肝っ玉かあちゃんって感じだ。

ハンターのアレコレを教えてくれた時は丁寧な口調だったが、何回かギルドに行ってるうちに仲良くなって、今では近所のおばちゃんのような口調で話しかけてくれるようになった。

元々はおばちゃん口調が素で、丁寧な口調は初心者限定なんだそうだ。


俺が依頼の紙とカードを差し出すと、依頼内容を見てオリアナさんは驚いた。

「まあ!あんたついに採取の依頼する気になったのね!やっと!」

なんで精霊と同じイジリ方なんでしょうか?

精霊2人がプークスクス言ってるし!うるせえ!


「やれやれ、討伐依頼なんて人気依頼なのに。昨日ハンター登録した子が今日討伐依頼してきたなんてザラなのに、あんたってほんとヘタレだねえ。」

オリアナさんはそう毒を吐きながらカードの情報を依頼の紙に書き込んでカードを返してきた。

「まあ、これも進歩かしら?」

「俺にしたら大躍進ですよ。採取の途中で魔物に出会わないように祈ってて下さい。」

「大袈裟すぎよ。ヘタレ過ぎて出会う魔物が引かないか逆に心配よ。」

オリアナさんは続けてカウンター下から1つの袋を取り出し差し出してきた。

両手で抱えるほどの大きさで、巾着のように口を紐で縛るもので、薄茶色で袋の表面にハンターズギルドの紋章が印字されている。


「これはハンターズギルド専用のマジックバックよ。これに依頼のもの、イオリの場合は薬草を入れるの。で、依頼の薬草を指定の数入れたら、ここに戻ってきて、このマジックバックごと受付へ渡してもらったら、中身をこちらで確認して依頼完了となって報酬が支払われる、という流れよ。」

「なるほど。指定の数以上は入らないんすか?」

「採取用のマジックバックは小さいものを使っているから、そこまで入らないけど、指定の数以上入れられないことはないわ。過剰分はこちらで平均価格で買い取るわ。」

「もしかして、討伐も同じ感じ?」

「そうよ。討伐は討伐用のマジックバックは討伐する魔物と指定の数によって大きく変わるけど。昔は討伐証明部位があれば~とかやってたけど、魔物肉が流通しだしてからは魔物の肉があったほうが流通に回せるってなってね。」

ふむ、商魂たくましいねえ。

ハンターが討伐した魔物で魔物肉にできるものは報酬プラス肉買い取りでハンターたちは懐が潤うし、ギルドもその肉を肉屋に卸せるから潤い、肉屋も潤う。という流れらしい。

因みに討伐したハンターは肉を買い取るか自分の肉にするか自由に決めれるそうだ。

グランはたまにそれで討伐した魔物肉を孤児院の皆で食べてるとのこと(後日グラン談)。


「まあ、薬草なんて町の外に森の近くにいくらでも生えてるはずだから、ちゃちゃっと行ってらっしゃい。」

「ラジャー!行って参ります!」

おどけて敬礼しつつ、採取用のマジックバックを持ってギルドを出た。



町の外は孤児院に行く近辺やゴリラと遭遇したあの沼しか知らない。

だからそこ以外はどうなってるか、ちょっとワクワクしながら俺は精霊2人と町の西へと歩いていった。



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