188話 続くインタビュー
遅くなりましたが、今年もどうぞよろしくお願いします。
「では、次の【魔力無限】についてなんですが・・・。」
フランクはそう言うと急にリュックをガサゴソやってなにかを取り出した。
それは透明の石で、俺に近づけると真っ白い光を放った。
あれ?これって見たことあるぞ?
「これって魔力を測る奴だよね?」
グランが俺に疑惑を持っていた時にギルドから借りたとかいう石と同じだ。
「え?これのこと知ってるんですか?」
「うん。グランに疑われてた時にこれ使ってたんだよ。」
「そうなんですね。っていうか、やっぱ白い・・・。」
確か魔力が強さによって色が違って、「聖域」並みに高いところでは白く輝くんじゃなかったっけ。
「白は魔力が無限に溢れているといわれている「聖域」のみとされていたんです。でもこれでイオリは「聖域」と同等の魔力をもっていて溢れているということがこの光でわかります。白くなるほど魔力が溢れているのに今だに魔力切れの様子がないところを見ると本当に魔力が無限にあるってこと証明にもなってますしね。」
へえー、なるほどその証明のために石を出してきた訳だ。
わかってくれて何よりだけど・・・そもそもなんでそんな石を持ってんの?
「この石ってなんで持ってんの?ギルドから借りた奴?」
「いえいえ。僕個人のですよ。」
え?魔力をはかる奴個人で持っててどうすんの?
「研究内容によっては魔力をはかる必要が結構あったりしますから、その度にいちいちギルドに借りるのも面倒になりまして色んな伝を頼って買って持ってるんですよ。」
「へええー。」
「因みに300万Gしました。」
さ、300万Gとな!?
「うえっ!?た、高っ!?」
「え?そうですか?そんなもんでしょう?」
そういやあこの人貴族だった。貴族だったらこれくらい出せるってか!
ケッ!この金持ちめ!
「魔力が無限にあるのはわかりました。次に、魔力操作はできても魔力制限ができないそうですが?」
「なんか魔力ダダ漏れをしないように無理矢理押さえ込んだら俺の体がバーンするんだって。魔力操作は「纏技」に繋がるんだけど、目に魔力を集中するとか、1ヶ所に魔力を集中するのはできるみたい。」
「なるほど、それで「纏技」をすぐできるようになったというわけですか。」
「「纏技」ってめちゃくちゃ魔力使うし操作が難しくって実際にできる人はいないって本に書いてたんだけど、そうなの?」
「僕は「纏技」については詳しくないですが・・・その通りだと思いますよ。調べてる人も研究してる学者もいないんじゃないでしょうか。」
「それは実際にできる人がいないから?」
「ええ。元々「纏技」は誰が開発して命名したのかもわからないもので、できる人もいないので調べようがないという感じです。魔力を全身に纏う方の「魔力鎧」は研究している学者がいるとは聞いたことがありますが、噂で聞いたことがある程度のやつなんですよね。」
ふうん・・・。開発・命名者が不明、ねえ・・・。
っていうか、情報の精霊なら知ってそう。
チラッと情報の精霊がいる感覚がする方向を見てみたら、情報の精霊がクスクス笑いだした。
『教えな~い。』
あ?なんだこいつえらくウザいな。
「情報の精霊が知ってるっぽいから吐かせようか?」
フランクに聞いたらぎょっとされた。
「い、いいですいいです!そんな!精霊に滅相もないです!」
めちゃくちゃ慌てて首振ってきた。
「そんな遠慮しなくていいのに。情報の精霊なんて皆にけちょんけちょんにされてボロ雑巾のように棄てられてなんぼの奴なんだよ。」
『ちょっと待って!僕ってどんな奴なの!?ひどくない!?いや、これはひどい!!そんなひどいこと言う子に育てた覚えはありません!実家に帰らしていただきます!!』
お前に育てられた覚えねえよ。
実家がどこか知らんがけえれけえれ!
「帰るんだったらすべてのカメラをぶっ壊してから帰れよー。」
『この間壊され・・・げふん!じゃなくて、壊れたカメラを直したのに壊すわけないだろ!ということで、カメラ壊したくないので実家には帰りませーん。』
チェッ!残念。
・・・うん、なんだこの会話。
「おっとごめんごめんフランク。ストーカーが変なボケしてきたからつい相手してた。」
「いえいえ、僕としては目の前でイオリと精霊が普通に会話しているのを見れてすごく嬉しいですから気にしないで下さい。ところで、ストーカーってなんですか?」
「相手が嫌がっているのにつきまとったり後をつけたりする犯罪者のことだよ。その筆頭が情報の精霊。」
「・・・。ようは、あだ名みたいなものですか?」
精霊ってのは神聖なものっていうイメージを人間は持ってるから俺がこんなことを言っても信じてはくれないよね。
まあ、あんまり神聖とは思ってないっぽいグランはすぐに信じてくれたけど。
『きゃっ!あだ名だなんて照れるなあ~~!イオリったら恥ずかしがって僕にストーカーなんてあだ名つけてツンデレやってんでしょ?恥ずかしがんなや!このこの!』
情報の精霊はくねくねしながら俺の頬をツンツンしてきた感覚がした。
凄絶にウザい。
風の精霊よ、またカメラ壊してくれませんかね?
「つ、次に行きましょうか。」
俺があまりのウザさに遠い目をしてたらフランクは俺が疲れてきたと思ったようで慌てて話題を次に進めた。
「【魔力譲渡】なんですが、これはそのまま魔力を譲渡できるってことですよね。譲渡の最大量はあるんですか?」
「ないみたい。無制限って書いてたよ。」
「譲渡に距離は関係ないんですか?」
「あるみたいだよ。ある程度近づかないと譲渡できないのがなんとなくわかるんだ。だいたい・・・1メートルくらい近づいたらできるってわかるかな。」
「でもそれでも無制限に譲渡できるってすごいですね!試しに僕にちょっと譲渡してみてもらうことできますか?」
「いいよー。どーぞ。」
俺はフランクに【魔力譲渡】した。
無限にあるからちょっとと言われてもわかんないから適当だ。
「!?・・・おお!魔力増えたの感じます!」
「そりゃよかった。」
「この【魔力譲渡】もすごいですね!確か【魔力無限】と【魔力譲渡】はイオリの中に憑依している魔人の【能力】なんですよね。」
「そうそう。名前がヨフィテっていって、頭が鷲なんだよ。」
「ヨフィテ・・・頭が鷲・・・。」
フランクはそう呟くとなにやら考え込むような仕草をした。
「どしたんだ?フランク」
「うう~ん。僕は魔人について調べる機会があって、結構調べたことがあったんですけど・・・ヨフィテという名前に覚えがないんですよ。」
「え?」
「頭が鷲という魔人も聞いたことがなくて・・・。それがちょっと気になりまして。」
「気になるって?」
「魔人は破壊衝動と殺人衝動を持つと言われています。なので魔界にいるすべての魔人は人間界で最低1回は暴れまわったりしているはずなんですよ。ですが、イオリに憑依している魔人に覚えがないということは、その魔人にはそういった衝動がないのかもしれません。・・・あるいは、その衝動が起きる前に召喚されたか。でも衝動が起きる前ってことは・・・でもそんなことがあり得るのか・・・。」
フランクは俺に話してる途中から自分の考えに入ったのか後半はぶつぶつと呟きだした。
「おーいフランク!もしもーし!帰ってきてー!」
「ぶつぶつ・・・」
「もしもーし!フランクさんはご在宅ですかー?至急こっちの世界に帰ってきて下さーい!」
「・・・何やってんだお前。」
おや、フランクが帰ってこずグランが帰ってきたよ。




