187話 フランクと話す
遅くなって申し訳ありません。
「ええええええ――――――――っ!?」
「なんだってえぇぇぇぇぇえっ!?」
「ほおおぉぉぉぉぉっ!?」
上は全部フランクの叫び声だ。
なんでそんな叫び声をあげたかというと、俺が今までのことを話したからだ。
気が付いたら砂漠にいたことから始まり、精霊と普通に話せてこの孤児院に住むことになった経緯や「大群」を2回どうにかしたことや、剣を見て記憶が戻って記憶が抜け落ちていた内容もほとんど話してその間ずっとフランクはリアクションしっぱなしだった。
まあ、グランたちにも言ってないことは話してないけどな。
俺がなんでほぼ全部話すことになったのかは、フランクの説明に誠意を感じたからだ。
純粋に魔法のことが知りたいという興味と好奇心だけで俺に会いに来たフランクに好感が持てて、フランクなら話してもいいかなって思えたんだ。
キラキラした目で見てくるフランクは魔法好きなアルと通じるような一種のやべえ雰囲気を出していなくもなかったが、嘘や適当なことを言って俺を言いくるめて金儲けとかしようとかいう感じがフランクはまっっったくなくて。
・・・まあ、そんな奴は情報の精霊に秒でバレて俺に告げ口されるだろうが、情報の精霊はニコニコして見守っている(カメラを回している)だけだから大丈夫なんだろうと思ったんだけどね。
べ、別に、情報の精霊を信頼してる訳じゃないんだからね!(プイッ)
はっ!いかんいかん、誰得なツンデレになってしまったぞ。
とにかく、俺はフランクを信用して話したって訳。
「―――――――・・・とまあ、そして現在にいたるってところかな。」
そうした話し終えると、目の前のフランクは茫然としていた。
まあそうだよね。俺自身でもどこから突っ込めばいいかわからないよ。
【能力】とか「纏技」とか「契約」とかその上勇者とか、色んな要素ありすぎだよね。
「・・・す」
「す?」
「すすすすすす!すごいいいぃぃぃぃ!!!」
フランクがまた叫んだ。
もう叫び声に慣れてローエなんてキッチンから出てこないよ。
俺ものんびりお茶飲んじゃったりして。
「あああぁぁぁ!落ち着け僕!聞きたいことが多すぎて頭がこんがらがる!アレとアレを聞いて、アレがアレしてアレになったアレをアレして・・・。いや、むしろアレを先に聞くべきでしょうか?アレはアレですか?」
「いやわからんし。っていうかアレの意味がなに一つ心当たりがないしめちゃくちゃアレアレ言ってて怖いよ。俺のわかる範囲で答えるから1個ずつ質問してくれたらいいよ。はい、フランク!深呼吸!」
「はー・・・ひっ、ひっ、ふー・・・!」
いや、それは出産の時のラマーズ法だね。
本当に落ち着こうか。
しばらく強制的にお茶を飲ませたりして、フランクはやっと落ち着いてくれた。
フランクは本格的に聞こうと思ったのか荷物からメモとペンを取り出してきた。
「ま、まずは【能力】からひとつずつ聞いていいですか?【超精霊親和】はなぜ5文字か、イオリ自身はどう考えてます?」
「5文字ってあり得ないんだってね。俺としては超の部分が俺個人のオリジナルか、異世界人特有のものなのかと勝手に思ってる。この超のおかげでサービスしてくれるのはいいけど、過剰サービスの時があるからビックリすることも多いなあ。」
「ビックリすることとはなんですか?」
「えと、インフィニティ・レイやったら光の玉が20出たり、アイスウルフやったら狼10匹出たりしたんだよ。」
「ふえぇっ!?それはすごい!」
フランクはリアクションしつつ手元はものすごい勢いでメモしている。
「そのサービスは制限や断ることはできないのですか?」
「多分制限したり断ることはできると思う。前に世界樹を出した時に大きさを制限できたから。でも断るのはご厚意でサービスしてくれるっていうのをむやみやたらと断るのって気が引けるって思っちゃうんだよ。まあ、魔法をやってもらうことに気を取られてサービスのこと忘れてること多いけどね。」
『むやみやたらと断るのって気が引けるって、そういうところがイオリって日本人ぽいところだよね。』
おい、なぜお前が日本人を知ってんだよ。
「さらっと世界樹が出るのが驚きだけど、そんなすごいサービスを忘れてるのも驚きですね。」
フランクは苦笑しながらまたメモを書いた。
「精霊の声が魔法を使わないで聞こえるのはなぜだと思ってますか?」
「それも超がついてるからかなと思ってる。【精霊親和】だけなら精霊の声ってどうなんだろ?」
『【精霊親和】だけなら魔法を使った際に効果が上がったりサービスしてもらいやすいってだけだからね。声が聞こえるのは確実に超のおかげさ。』
どうりで俺が声が聞こえるってわかった精霊たちがあんだけ騒いでいたわけだよ。
「超のおかげで聞こえてるので間違いないって。情報の精霊が言ってる。」
「へえ!ここに情報の精霊がいるんですね!?情報の精霊はとてもとても貴重で素晴らしい精霊ですよ!」
フランクはキラキラした目で情報の精霊はどこだと周囲を見回しているが、いやいや、情報の精霊はただのストーカーだよ。
そして情報の精霊は褒められて嬉しかったようで俺の頭の上でえっへんしている感覚がするが無視した。
「うう・・・、情報の精霊は気になりますが、次の【能力】の話に進みましょうか。では【武術超越】についてなんですが、これはイオリが戦闘開始すると発動するようですが、発動条件みたいなのはわかっているんですか?」
「いや、なんとなく俺との戦い?とか自動で判断されたら発動するって感じかな?」
前に川で魚をとろうとしたら発動したり、殴ろうとするグランから逃げる時にも発動したりと俺が戦いだと思ってないタイミングで発動したりしたから【武術超越】が自動で判断していると思うんだよな。
「発動した瞬間とかわかるんですか?例えば音が鳴るとか。」
音?例えば某配管工がスターを取ったら流れる音楽とかだろうか。
そんな音楽流れてたら雰囲気は出るかもしれんけど音楽に気が散って躍りながら戦いそうだな。
「ううん、音は生らずに周りがゆっくりになってあれ?ってなって始まったんだってわかる感じかな。今は慣れて戸惑わないけど、最初はめちゃくちゃびっくりしたよ。」
「そうなんですね。【武術超越】発動中は戦い方が自然とわかってその通りに動けるようですが。」
「俺がいた世界は魔物もいない平和な世界だったから戦いってやったことなかったし、殴り合いでも珍しいくらいだったんだ。だから1番最初に発動した時は時間がゆっくりになっただけじゃなく自然と動けることにも驚いた。でもあるあるだったからそれはそういうもんだと思って受け入れたんだよね。」
「あるある?」
「俺のいた世界で異世界転生とか転移とかの本がめちゃくちゃあって、それの中でよくある設定だったからね。こっちの世界に転移来てきたんだってわかってからは本のあるあるがいくつもあったから、それで動けるのもあるあるなんだって思えたんだよ。」
転移とか転生した人がチート持ちなのはよくあることだもんね。
・・・まあ、【能力】4つとか「纏技」とか「契約」とかチートありすぎだけどね!
まさか俺は主人公じゃあるまいし、こんなになんでチート持ってるのかな?
なんかインタビューみたいだね!
そしてこれで今年最後の投稿となります。
来年も楽しく読んでいただけるようにがんばって書きたいなと思っております。
どうぞ来年もよろしくお願いいたします。




