166話 翌日持ち越し
すいませんお待たせしました。
そしてこれから一部改装だ!・・・というところで日が暮れてしまった。
「急ぐものでもないから明日にしてはどうかしら?せっかくイオリが晩ごはん作ってくれたのでしょう?」
クールなウォーラのそんな一言で一部改装は明日にしようということになった。
「だったらついでにウォーラも晩ごはん食べてく?・・・っていうか、精霊は魔力食べるからいらないのかな?」
あれ、でもフレアは激辛食ってたしウィンディはスイーツ買ってたような。
「ふふ、私たち精霊神も基本的に空気中の魔力を摂取するから食べなくても問題ないんだけど、それではつまらないから皆人間のように食べたりするのよ。それに他の精霊たちと違って私たちは実体化できるから余計に食に興味があるの。イオリの作った料理、食べてみたいわ。」
そういやあ、精霊神たちは普通の精霊たちみたいに俺しか見えないということはないから食べ物も普通に食べられることから食に興味があるのだろう。
必要ないのに食べて果たして内臓とか消化とかどうなってんのと思うが、まあそこはファンタジーなのだからあえて気にしないことにしよう。
ウォーラが晩ごはんを食べていくとなったが、孤児院の料理は大皿に山盛りしたのを好きなだけよそって食べてねというスタイルだからウォーラ1人が増えたところで問題はない。
お皿やカトラリーも子供たちが割っても大丈夫なようにいつも余分にあるからそれをウォーラの分の皿にした。
「ただいま。」
「「「おかえり~グラン兄ちゃん!」」」
広間のテーブルに戻って料理を並べていたらグランが帰ってきた。
キチンと行儀良くイスに座って早く食べたいとそわそわしている子供たちに紛れてウォーラがいて、グランは固まった。
「グランおかえりー。今日の晩ごはんはゲストがいるよ。」
「ゲ、ゲスト・・・?」
「ふふふ、はじめましてグラン。私は水の精霊神ウォーラよ。ああ、あなたからの自己紹介は大丈夫よ。」
「はあああっ!?み、水の精霊神!!??」
さらっと自己紹介したウォーラにグランはすっとんきょうな声をあげた。
「お~、いいねえナイスリアクション。」
「あら、それを言ったらイオリの方が素晴らしいリアクションだったわよ。」
「え、ホント?もしかして俺って芸人に向いてるかな?」
「イオリの性格なら向いてそうね。でもリアクション芸人は奥が深いから向いてるだけではダメよ。」
ウォーラ、あんたなんでリアクション芸人を知ってんの?
さてはあのストーカーの仕業か?
「お、おい待て待て!よくわからない話をするな!なんで水の精霊神様なんてここにいんだよ!?そしてなに普通に飯を食ってこうとしてんだ!?」
ぽかんとしていたグランが俺とウォーラな話につっこんできた。
「まあ、それは食べながら話すよ。はいはい、座ってー。」
促されてグランは戸惑いつつイスに座ってすぐに晩ごはんの準備は終わった。
「じゃあ、食べましょう!」
ローエの号令で晩ごはんは開始となり、子供たちは料理を次々と食べていく。
俺も慌ててパンや自分が作った料理をキープ。
う~ん我ながらうまいな!
「「「おいしいー!」」」
「美味しい!この料理のレシピ、この間ちょっと教えただけなのにこんなに美味しくできるなんてさすがイオリね。」
「へへへ、あんがと。」
子供たちやローエが褒めてくれて照れるね。
グランもうまいという顔で黙々と食べてるぞ。
「ふふ!なんて美味しいのかしら。イオリの作った料理もだけど、ローエちゃんの作ったパンも美味しいわ。」
ウォーラはどこぞの高級レストランのようにきれいな所作でパカパカ食っている。
子供たちが大皿から料理を取るスピードと遜色ないスピードで料理を取って次々と口に運んでいるのに優雅に見える不思議。
「これからもしかしたらイオリが料理をする機会も増えるかもしれないし、ローエちゃんも子供たちの食生活のために料理をもっと振る舞えるように明日は思いっきりやっちゃいましょう。ね、ローエちゃん。」
そのウォーラの発言に俺たちは理解できなかったが、ローエだけは力強く頷いていた。
なんのこっちゃ?
「お、おい、なんの話だ?」
おっと、1番訳がわからないのはグランだったね。
俺はウォーラが来た経緯とウォーラの提案で裏に畑ができて結界を張ったことを話した。
そして明日は一部改装をするらしい、ということも。
「一部改装については俺もまったく知らないから明日になんないとわかんないんだけどね。」
「はあ!?・・・ああ、おう。」
グランはどこに突っ込んでいいんだかわからなくて、むしろ突っ込むのを諦めたような顔をした。
諦めてはダメだ!君はツッコミ役なんだぞ!?
「・・・ま、まあ、ローエがいいならいいが。」
んま!突っ込まずにローエに甘くなっちゃって!
好きなローエがやる気だからかね!?
「おいイオリ、お前変なこと考えてるだろ。つうか、全世界最高硬の結界とかやりすぎだからな。」
ローエには甘いのに俺には厳しい。ぐすん。
ウォーラは食べ終わったら「明日また来るわ。」とどこかに帰って、翌日の昼前にどこからかやって来た。
空気中の水分を介して行き来しているんだって。
説明されてもさっぱりだ!
今日は俺もグランもハンター休みの日で孤児院にいた。
そしてウォーラはゲストを連れてきていた。
「やっほ~!イオリこの間はたくさんの萌えをありがとうね!」
「よおウインディ、その様子だと説教したのに反省してないなこのやろう。」
なんとウインディも一緒に来たのだ。
「あ、イオリ以外の皆は初めまして~!風の精霊神のウインディよ!よろしくね~!」
「「「よろしくね!」」」
「「は、はあ・・・。」」
明るいウインディの挨拶に子供たちは元気に挨拶していたが、ローエとグランは困惑した顔をしていた。
そりゃあね、とんでもねえのが増えたのなら戸惑うわってね。
「皆のことは知ってるから自己紹介なしで大丈夫よー!早速だけどお土産よ!」
ウインディはどこからか大量の紙袋を出してきて広間のテーブルの上に広げだした。
「私が最近ハマってるフルーツタルトにチーズケーキよ!」
フルーツタルトは15センチほどの大きなイチゴが山盛りのものから二口くらいのサイズの小さなものまで10以上あって、チーズケーキはスティック状のが10個あった。
「「「わあああー!!」」」
とんでもないスイーツの量に子供たちは釘付けになってめちゃくちゃ目をキラキラさせている。
「うわー!すげえ美味しそう。どこの店の?」
「隣の国のスイーツ店よ。イオリがそのスイーツ店に行くとなったら馬車でも1ヶ月はかかるわよ。まあ、私は風の精霊神だからどこでも一瞬で行けるんだけどね!えへん!」
ウインディはおちゃらけて胸を張った。
「ええ!そうかー、そんだけ遠かったらさすがに行けねえなあ。ウインディ一瞬で行けるとかめっちゃかっこよくて羨ましいなあ。」
「!?・・・くっ!負けた!」
うえっ!?え?え?なに?負けたとは?
「ふふふ、イオリは気にしなくていいわよ。ウインディがマウントを取ったら返り討ちにあっただけだから。イオリは本当にマウント効かないわねえ。」
ウォーラがよくわからないことを言っていたが、気にしなくていいと言ってたので気にしないことにしよう。
明るい性格のウインディと子供たちはあっという間に仲良くなって一緒になってウインディが持ってきたお土産を食べていて、その様子をローエとグランもほほえましく見れるくらい落ち着いたところで。
さー、一部改装しますよー。
次回ももしかしたら時間があくかもしれません。




