164話 経営アドバイザーウォーラ
「えええええええ―――――――!?」
皆さんは家に帰ったら水の精霊神がいるなんて想像したことがあるだろうか?
いや、ないだろ!っていうかあってたまるか!
なんでここにいるの!?
「イオリ驚いてないで座ったら?はいお茶。」
ローエはとっても冷静に俺がいつも座っている席にお茶を置いた。
「いやいやいや、なんでローエはそんな冷静なの?聞いた?水の精霊神だよ?」
「私たちさっきすでに驚き済みなの。半信半疑だったけど証拠も見せてもらったわ。」
「証拠?」
「ふふふ、これよ。」
ウォーラはそう言って片手をあげた。
するとあげた片手の周りに水の粒のようなものがいくつも浮かんだ。
あ、なるほど。精霊や呪文なしで魔法を使ってるってことで、本当に水の精霊神だという証拠ってことか。
「それに色々と規格外の人が身近にいるから今さら水の精霊神様だけなら驚かないわ。」
色々と規格外の人?そんな人がローエの身近にいたっけか?
『いや待って、そこで本気で首を傾げないで~。』
え、音の精霊に突っ込まれた。
意外にツッコミ役なんだろうか。・・・そんなことは今はいいか。
「えー、イオリまじでわかんないの?」
「イオリだからしょうがないわ。」
「・・・ドンマイ。」
ロックは信じらんないという感じて言ってきて、インカは呆れたようにロックの言葉に続いて、アンは哀れみの目で俺を見てきた。
なんか地味にアンの哀れみが心にくるぞ。
君たちはお絵描き大会開催中なのだから大会に集中したまえ!
「イオリったら自分が規格外って自覚した方がいいわよ?」
ローエに言われてしまったが、まあ・・・言われてみたら俺って【能力】4つ「契約」1つ、精霊としゃべれるわ「纏技」できるわで規格外だね。
言われてみるまで気づかない俺も俺だけど。ははは。
はっ!今はそんなことはいいんだよ!
俺はいそいそといつもの俺の席に座るとお茶を一口。
よし、落ち着いた。
「それで、ウォーラさん?はどうしてここに?」
「呼び捨てでいいわよ。精霊皆もだけど私も視聴者としてあなたのことをいつも見てるのよ。」
「それは・・・ありがとうと言っときます。」
視聴者ということは、ネットワーク垂れ流しを見られてるのね。
ホント、俺の映像なんて見てて精霊たちはなにを面白いと言ってるのかさっぱりわからん。
まあ、お礼は言っといた方がいいだろうけど情報の精霊が勝手に垂れ流しているだけで、俺は辟易しているから素直には言えなかった。
「それで見ているうちにあなたのことより気になることができちゃって、それで思いきってここに来たの。」
「気になること?」
「ここよ。」
ウォーラは人差し指を下に向けた。
「えと・・・孤児院ってこと?」
「そうそう。そしてもっと具体的に言うと、ここの経営に。」
「「・・・え!?」」
俺とローエの声がハモった!
ローエは驚いた表情でキッチンから顔を出していた。
会話が聞こえていたようだ。
「私って、昔から人間がお金のやり取りをしているのを見てたの。だって人間だけが通貨をもって物のやり取りをしているのよ。物々交換でも面白かったのに、通貨を使う頃から面白いと思って見てたの。」
物々交換から通貨を使うまで見てたなんてめちゃくちゃ暇・・・げふんげふん、こ、好奇心旺盛でらっしゃる。
まあ、水の精霊神だからお金のやり取りとか普段しないだろうから珍しくてそれが面白いと思ったのかな?
「見てたら私もお金のやり取りをしたくなっちゃって、道端に落ちてた1Gを拾ってからそれをやりくりして今では50兆Gまで増やしたわ。」
「ぶぁっ!?」
1Gから50兆G!?なにがどうやったらそんなことになんだ!?
「でも50兆G手元にあったら経済が停滞しちゃったのよね。だからちょっとずつ色んなところで使って経済を安定させてからは増やすのではなく経済とか経営に目がいっちゃって。あ、それでも最低限1億Gくらいは安定的に持てるように資産運用はしてるわよ。」
この精霊神ひとりで経済が停滞とか・・・おっそろしい。
つか、資産運用してんのかよ。
「だからここの経営に興味があるの。ということでローエちゃん、こっちにいらっしゃい。」
ローエちゃんと呼ばれたのかこっちにいらっしゃいといきなりいわれたのか、はたまたその両方かで戸惑った顔をしてローエはキッチンから出てきた。
「ローエちゃん、最近のお金の出入金記録・・・要は家計簿ね、それを見せて現在の資産を教えてくれる?あ、イオリはローエちゃんの代わりにキッチンに立ってて。」
「あ、はい。」
俺は素直にローエと代わってキッチンに立った。
俺は部屋代を払ってここにいるただの居候だからね。
ここの経営のことなんてさすがにそんな踏み込んだこと聞いちゃいけないだろうし、そもそも経営の話をされてもそんな知識だってないからいるだけ無駄だ。
だから戸惑うローエに席を譲ってキッチンに来たわけです。
まあ、うっすら会話の内容は聞こえるけどあえて聞かないでおこっと。
「代わりに立ったがいいが・・・なにしよう?」
ローエはなにか煮込んでたようで、大きな鍋は弱火でグツグツいっている。
中を見たら一口大の肉とじゃがいも、タマネギなどが入っててスープはトマトスープらしくて赤い。
「とりあえずこの煮込み料理見とくか。」
『ついでにイオリもなにか作ったらあ?』
ほう!角の精霊ナイスアイデア!
どうせ食材や調味料はリンクにあるからいつでも取り出せるし、調理器具は使うことになるけど洗ったらローエは許してくれるだろう。
それからウォーラとローエの話し合いはなんと数時間続き、飽きた子供たちはいつの間にか外の原っぱに遊びに行っていた。
夕方になってやっとローエが「いけない!夕食の準備急がないと!」と言ったことでお開きになったようだが、まだまだ話し合いは尽きてないようだ。
「俺暇だったから作ったよ。」
「!!??ありがとうイオリ!!」
俺としては本当に暇だったから作ったんだけど、ことのほかローエが喜んでくれた。
作ったと言ったけれど、和食じゃなくて洋食だ。
残りが少なくなってきたのもあったけど俺が洋食の気分だったからだ。
そして作ったメニューは魔物魚で白身の奴を使ったムニエルとパプリカとトマトと玉ねぎときゅうりのマリネだ。
実は前にローエの作ったマリネのドレッシングがうまくてレシピを聞いていたのを再現してみました。
油とバルサミコ酢と塩こしょうと砂糖でできるから思ってるより簡単だった。
分量はなんとなくでやったけどできたぜ。
後、パンとサラダは孤児院の昼夜には毎回出る。
それらはローエがあらかじめ町の共同窯でとんでもない量のを作るのを俺がリンクに入れてるからいつでも言われたら焼き立てのが出せるし、サラダもとんでもない量のを刻んであるのをリンクに入っているから出してちゃちゃっと皿に盛ったらいいだけだしね。
「本当に助かるわイオリ。もちろん料理ができるってことだけじゃなくね。そもそもイオリがいなかったらあのイベントの時にあんなに爆買いできなかったもの。」
あの時のローエは恐ろしかった。
俺のリンクのせいで爆発したのなら光栄なような気もするがめちゃくちゃ振り回されて疲れたから複雑な気持ちだ。
「ふふふ、そんな頼りになるイオリに相談があるの。」
ウォーラはニコニコしながら話しかけてきた。
「俺に相談?」
「そう。この孤児院の一部改築と畑を作るわよ。」




