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ハザマ~高校生男子は異世界で精霊に愛され無自覚無双~  作者: 木賊
第7章 変わる周囲と集まる仲間
172/202

159話 記憶

新章です。

失っていた記憶の内容で、ちょっと経緯がややこしくそのため長くなりました。

俺が目覚めた時、なにもない真っ白な空間に横たわっていた。


「・・・は?ここは?俺、自分の部屋にいたのに・・・?」

周りの様子を見ながらゆっくり起き上がってみるが、どこを見ても真っ白で誰かがいるような様子ではない。

なんとなく身の回りを見たが、帰ってきてベッドに横たわった時の白のシャツにノースリーブのTシャツにズボンの服装のままで、側に置いていたスマホはなかった。

立ち上がってみようと何気なく足元を見たらなぜか脱いだはずのスニーカーを履いていた。


確か、なんか幻聴みたいのが聞こえてきて返事みたいなのを言ったら天井に渦みたいのができてそこに吸い込まれたような気がするんだが・・・?

アレはなんだったんだ?夢?

そうなってくるとこれも夢なんだろうか?

でも夢にしてははっきり意識はあるだけど・・・。



すると、どこからともなく黄色い光がふわりとやって来て俺の前で止まった。


《はじめまして、私の声が聞こえるか?》


目の前の光から声が聞こえてきた。

でもその声は二重に重なったような聞こえかたで、くぐもっているような声と甲高い声が重なったような声だ。

「ああ・・・、うん。一応聞こえる。」

《そうか。君の魔力と私の魔力の相性がよかったようで、君をここに呼んだんだ。》

「うん?魔力?相性?呼んだ??」

俺は訳のわからない単語に首を傾げて、周りを見回して・・・ハッとした。


「え!?もしかして!ここって異世界とか神様の世界とか!?だったら俺は死んだのか!?」

《いや、君は死んではいない。私が君を召喚したという形で呼んだからね。そしてここは君の言う通り異世界。だけど神様の世界ではないよ。》

「え?だったらあなたは神様ではない?」

《厳密に言えば神だけど・・・ちょっと説明が難しいね。私のいる世界では父なる大神を頂点に30にんの神がいるが、私はそのひとりだ。》

「あ、なるほど。多神教か。俺の住んでた国の宗教も似たようなのあるんでわかる。」

要は神道みたいなもんか、と思うと納得。

《君はとても落ち着いているね・・・。》

「俺の従兄弟が剣と魔法や魔物が出てくるファンタジーなラノベっていうのを勧められていくつも読んだことがあるからこの今の状況とラノベで呼んだ展開と一致しすぎて落ち着いてられるんだも思う。」

《ラノベとは書物かい?・・・君の世界の書物はなかなか変わってるね。》

そうかなあ?


《実はある困ったことがあって、私は召喚出来る者を探していた。私の魔力と相性がよければ声が聞こえるはずで、声が聞こえたらそこを繋がり(・・・)として召喚できると思ったからね。そしてあらゆる世界に声をかけたところ、君だけが答えてくれたから、召喚したんだ。》

「は、はあ・・・。」

《すまない・・・君の意思に関係なくこの世界に巻き込んでしまって。》

光はなんとなく落ち込んでいるような感覚がした。


「あ、あの、その困ったことというのは?」

《ふむ・・・、話は長くなるのだが、いいかな?》

「え、あ、うん。・・・あ、俺は麻生庵。庵が名前ね。」

《イオリか、よろしく。私はヴォルデマル。戦いと勇気の神で、今はある魔人(・・・・)の体に憑依して身を隠している状態だ。》

「よろしくヴォルデマル、・・・で、魔人?憑依?」

《君のいた世界をチラッと見た限りで言うと、私のいる世界は君の世界と大分文化も違って魔法や魔物がいる世界で魔界や天界がある。その魔界で魔物の中でも特に強い者たちはなぜかいずれも人型が多くそれで魔人と言われているんだ。その魔人に私は憑依しているのさ。》

「うえ?でも、魔界にいる魔人ってことは、神様と敵対関係にあるんじゃないの?あ、これはあくまで俺のラノベを読んでの知識なんだけど。」


《ラノベは侮りがたいね・・・。その通りで、我々神と魔人は長年敵対関係にあるよ。といってもお互い魔界と天界から出なければ交戦することはない、言わば冷戦状態という感じだ。だが、魔人たちは生まれた時から破壊衝動とか殺人衝動があるようで、ちょくちょく人間界に現れては人間に危害をくわえてたんだ。人間界に現れたら強大な魔人に人間は抵抗すらできない。だから我々神が魔人の出現を察知したら人間界に行って魔人を魔界に追っ払ったり倒したりしていたんだ。特に私は戦いの神とあってよく人間界に行って魔人と戦った。・・・そしてある日、魔界から魔神という魔人がやって来た。》

「魔神・・・?」

《魔神、とはいっても神ではないよ。あまりに強すぎて魔人から神と崇められて魔神と呼ばれていたそうだ。でも魔神は崇める魔人や魔物すら殺すほど無差別に魔界を蹂躙して、やがて人間界に現れた。》

魔人ですら敵わない人間が魔神に勝てるわけがない。

俺は話に聞き入って魔神という化け物が人間たちを殺し回っている姿を想像してしまってゾッとしていた。


《私は大神の要請ですぐさま魔神を倒すか魔界に追っ払うつもりで人間界に向かった。・・・・・・だが。》

「?」

《魔神を倒すことも追っ払うこともできなかった。やむなく、私は魔神を封印することにした。封印した魔神を地中深くに埋めて、魔神は死んだことにしたんだ。魔神の生存を知られたくなかったのと、封印を解こうとする者が現れないために死んだことにしたんだ。私が魔神を倒したことで、人間たちは私を勇者と讃えてきて、私はそれを利用して自らの愛剣を人間の王に託して天界に戻った。万が一魔神の存在に気づいても私の愛剣が抑止力になると思ってね。愛剣を渡す時に適当に「またこの世界に危機が訪れた時のため、この剣を託そう。この剣は意思を持ち自らの主を決めるだろう。」って言ったら人間の王は次の勇者がきっと現れると思ってイベントまでやるようになったからそれには参ったけどね。》

いやいや、適当に言うには含み持たせ過ぎだって。

っていうかイベントってなんだよ!?


《それからも私は魔人が人間界に現れれば人間界に向かって魔人と戦っていたが、数百年前にある魔人と戦った際に肉体を失ってしまって魂だけになってしまった。これでは魔人と戦うことができないと天界で大神が肉体を造ってもらうのを待っていたところだった。》

「あ、もしかして光の姿なのは・・・。」

《そう。魂だけの存在になったからね。そうして先日まで天界で肉体ができるのを待っていた。だけどそうは言ってられない状況になったんだ。・・・何者かが、魔神の封印体を見つけてしまって生存が知られてしまった。》

え!?それってやばくない?

封印が解けたら対抗できるのはヴォルデマルっぽいのに当のヴォルデマルは魂だけだから・・・。

《私の施した封印はそう易々と解けるものではないが、絶対に解けないものではない。魔神の生存を知った何者かはどうやらその魔神を復活させるために行動したようなんだ。そして魔界からある魔人を召喚して封印を解こうとした。》

「封印を解くのにその魔人が必要だったってことか?なんかその魔人に封印を解く特殊能力があるとか?」

《我々が【能力】と呼ぶのが君が言う特殊能力にあたるんだろうが、その魔人の【能力】は封印を解くものではない。だが、わざわざ魔界から人間が敵わない魔人を喚ぶほどだから何者かはなにか考えがあって召喚したと思う。私は封印が解かれそうなことをいち早く察知してその召喚に密かに邪魔に入った。簡単に言うと、その魔人に憑依して魂を融合してこの狭間の世界に魔人の肉体ごと逃げ込んだんだ。》

え!?ということは、ヴォルデマルが今魔人に憑依しているというのは、封印を解こうと召喚した魔人ということか!


《ここ狭間の世界は見ての通りなにもない空間で時間の影響がないからしばらくはいられるが、召喚されたこいつは魔法の強制力でどうしても人間界に引っ張られている。だが、私は前に勇者として人間界に降りたが、今回は魂だけだから降りることはできない。こいつも魔神の封印を解く存在だから、降ろすわけにはいかない。だったら、誰かにこいつごと憑依して代わりに人間界に降りてもらおうと考え付いて、憑依できやすい魔力の相性のいい者を探してあらゆる世界に声をかけた。》

「あ!そ、それで俺が答えて・・・って訳か。」

《そうだ。・・・本当に申し訳ない。》

本当に申し訳無さそうな声に俺は言葉がでなかった。

そりゃ驚いたし、あまりの情報量に混乱しかけてる。

・・・でも、人間界が危ないということで八方塞がりで苦肉の策でやったということはなんとなく感じた。


《私はこんな状態だから人間界に行くことができないが、君に私の【能力】を貸すことができる。こいつも憑依するからこいつの【能力】も貸せるだろう。・・・だからどうか、私たちの代わりに人間界に行ってくれ。そしてあいつを、魔神を倒して――――――を救ってくれ。》

「え?―――――――を救うってどういうこと?」

《実は・・・―――――――――》


なるほど。そういうことか。


・・・まあ、ここに召喚されて事情を話された時点で「そんなことは知ったことではありません。お断りします。帰してください。」なんて薄情なことを言えないよな。

ちょうどむしゃくしゃしてて両親にも会いたくなかったし学校も億劫だったし。

《あ、もし全てが終わればちゃんと君の世界に帰すことは神の名において誓う。時間も召喚直後に合わせよう。》

え、召喚直後に帰るようにしてくれるの?

「・・・別に時間はどうでもいいのに。」

《え?なにか言ったかい?》

「いや、なんでもない。・・・わかった、ヴォルデマルの代わりに行くよ。」

《そうか!本当にありがとう!》

光は嬉しいようでキラキラと輝いた。


《そうだ。もし必要ならを人間の王に託した愛剣も使うといい。愛剣は意思がある剣で、君の中に私が憑依しているのがわかるはずだから従ってくれるはずだ。愛剣の名は"バロック"。父たる大神が創った唯一の最強の剣だ。》

うわおー!最強の剣が使えるとかチートかよ!

ヴォルデマルと魔人の【能力】も使えるようになるみたいだし、至れり尽くせりチートだな!


《では、君の中に憑依させてもらうよ。》

光はそう言うと俺の周りを何周か回って俺の心臓に向かって体当たりしてきて、そのまま体の中に吸い込まれていった。


「うえええ~~~、・・・おお!」

俺の体全体がキラキラ光だして、なんだか体が軽い感じがする。

と、同時に頭の中に誰かふたりの姿が浮かんできた。

ひとりは長い金髪碧眼の超イケメンで銀色の鎧に白いマントを着た姿で、もうひとりは白い鷲のような頭に筋骨粒々な黒い肌に黒い鎧を着けた人間のような体の姿だ。

「え、もしかしてヴォルデマルと魔人!?」

《そうだ。私がヴォルデマル、そしてこいつが魔人ヨフィテだ。》

金髪碧眼イケメンが微笑んでそう言うと、隣の鷲人間が一礼した。

《ヨフィテはどうやら寡黙なようでほとんど話さないが、私が魂を融合させて召喚を邪魔したことや人間界に降りることなど私と同意している。私らは君の中から見守っているから、君のペースで終わらせてくれ。》

「わ、わかった。」


するとふっ、と頭の中に浮かんでいたふたりの姿は無くなって体のキラキラも消えた。


「・・・・・・え?ここから俺、どうしたらいいの?」

人間界にどうやって行けってんだ???



『はーい!ここからは僕の出番だね!』


突然そんな声が聞こえてきた。

「うええっ!?ど、どこだ!?誰!?」

周りを見回してもなにもない真っ白な空間だけだ。

『僕は空間の精霊だよ!人間には見えないから君が見えなくて当然だよ。今からこの世界と人間界の空間を繋いで、君が人間界に行けるようにするからね!』

「は、はあ。そうなのか、よろしく空間の精霊。っていうか、精霊っているんだ。」

『ふふふ、人間界にも僕ら精霊は普通にいるからね。きっと皆君と仲良くなると思うよ。面白い【能力】持ちだからね。』

面白い【能力】持ち?

ヴォルデマルかヨフィテが貸してくれるという【能力】のどっちかが面白いのかなあ?


『よし、繋がった!んじゃあ、頑張ってね!』

「お、おう、ありが・・・とおあああぁぁぁぁ―――――!?」

お礼を言っていたら急に足元の空間がなくなった。

そしてまっ逆さまに落ちる。

これじゃあ繋がったじゃなくて落とされたじゃねえか――――!!



そして俺は砂漠に落ちて思いっきり後頭部をぶつけるのであった。



誰を救うのかなど一部伏せられているところは後々明らかになります。

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