157話 お祭り大にぎわい
「わあ~!素敵ねえ!」
「とても幻想的・・・!」
お祭りで彩られた町に入ったエティーとネフィーは口々にそう言って目をキラキラさせて辺りをキョロキョロと見回している。
俺も待ち合わせ場所に向かう時に通ったけど、本当に灯りとか飾り付けだけなのにいつもの町の違うと思うくらいきれいなんだよ。
それにしても、エティーもネフィーも初めて見たような反応だ。
もしかしてマジで初めて見たのか?
お姫様だけどお祭りだし、1回くらいは来たことないのかな?
「2人とも、お祭りって初めてなん?」
「そうよ。町でお祭りをしている時は王城ではパーティーをしているから毎年そっちに出ているのよ。」
「お父様主催だからわたくしたちが参加しないわけにはいきませんから。」
なるほど、国王様主催のパーティーやってたんだ。
そういえばローエから王城ではパーティーをやってて町ではお祭りをやってると前にチラッと聞いたような気がするけど、俺にはまったく関係ないだろうとパーティーのこと忘れてた。
パーティーは中止かあ。
まあ、魔人が襲っていまだにバタバタしている王城でやれないよね。
でも確かお祭りだけはお祝いもかねてるからやるって言ってたな。
「そっかー。俺も初めてだから楽しみなんだ。色々と見て回ろうよ。」
「もちろんよ!」
「ええ。」
2人ともニコッと笑ってくれた。
そういえば気がついたら俺の左側にネフィー、右側にエティーが並んで両手に花状態になってた。いつの間に?
まあ、別に嫌じゃないからいいんだけど。
とか思ってたら。
「あ、すいません、・・・あ、うっ。」
俺とエティーは町を歩き慣れてるからいつもより多い多い人混みも難なく避けながら歩けるけど、普段ヒッキーなネフィーはぎこちなく避けたり危うくぶつかりそうになったり周りを眺めているから遅れてきた。
「ネフィー、大丈夫?」
「ご、ごめんなさい。」
俺が声をかけるとネフィーは慌てて追い付いて来るけどちょっとしゅんとしている。
このままだったらはぐれるかもしれないなあ。
「はぐれたら大変だから手を繋ぐ?・・・あ、でもアレか。」
男の俺と手を繋ぐってネフィーは嫌かも。
俺も女子と手を繋ぐなんてレベルの高いこと俺の世界にいた時でもやったことないから緊張するわ。
「腕掴むか、服の裾掴むとかどう?そしたらはぐれないと思うんだけど。」
ネフィーはえ!?と驚いた顔をして顔を真っ赤にした。
ネフィーは人見知りだしちょっとレベル高過ぎたかな?
でもそうしてもらわないと多分はぐれて迷子にしちゃうかもしれないしなあ。
ネフィーはしばらくあわあわして、赤い顔のまま俺の左腕をじっと見てそっと腕を掴んできた。
俺の肘のところに手を回して掴んできてチラッと恥ずかしそうに見てきた。
え、なんすかそれ、かわいいんですけど。
「あ!ネフィー・・・羨ましい・・・。」
見ていたエティーがなにやら呟いた。
「わ、私も、はぐれたらいけないからいいかしら?」
そうエティーが言って俺の右腕をぐいっと掴んできた。
「うええっ!?」
「なによ!?文句あるの?」
ギロッとエティーは睨んできたけど顔が赤くて全然怖くない。
むしろなんだろうね、かわいく見えるよ。
「い、いや、文句ないよ。」
なんだこの状況?
・・・まあ、これで2人ともはぐれることはないだろうからいいけど。
美少女2人に掴まれるってどんな徳だよ、ありがとう。
『うふふっ、2人とも積極的ね。』
『かわいいから応援したくなるよね。』
花の精霊と光の精霊の女子ふたりもなんでか俺の頭に乗ってきてそんなよくわからない話をしていた。
因みにストーカーたちの方からなにやら興奮している声が聞こえてくる。
『くそっ!もうちょっと近づけたら細かい音声まで拾えるのに・・・!』
「両手に美少女・・・はあはあ・・・!」
ウインディやべえって。
それから大道芸人のパフォーマンスを見たりしながらダラダラ歩いて町を歩いた。
「あ、あの露店の串焼き美味しそう。」
エティーは美味しそうな匂いの露店を指差して、俺もネフィーも興味が出て露店に近づいた。
その露店は町にいつもいる魔物肉の串焼き専門の露店でいつもは塩コショウだけなのだが、このお祭りのために特別な甘辛ソースを売っていた。
1人1本ずつ買って歩きながら食べたのだが、ネフィーは歩きながら食べるというのをしたことがなかったようでめちゃくちゃ戸惑っていた。
俺は当たり前に歩きながら食べてて、エティーもハンターをやりに町に来る時によく露店を利用するそうで歩きながら食べるのに慣れていた。
ネフィーは俺たちが食べているのを見て決心したように思いっきりかぶりつき、すぐに美味しさに目をキラキラさせた。
「美味しい?」と聞くとめちゃくちゃ嬉しそうにこくこくと頷いた。
それからはネフィーも他の露店のものが気になったようで次々と見ていって、クレープに似た薄皮の生地に肉や野菜を巻いたものやエクレアっぽいスイーツとかを買い食いした。
一通り見て色々と買ってしまい、歩きながら食べるにはちょっと量が多いしネフィーが疲れたかもと思って、町の中央にある噴水のヘリに並んで座って休むことになった。
エティーは「ちょっと飲み物買ってくるわ」と言ってどっか行ってしまって俺とネフィー2人きりだ。
とはいえだいぶ慣れてきたネフィーは周りの人の多さも気にならなくなってきたようで、買ったスイーツを食べていて俺も色々と食べたので食休み中だ。
「あそこの串焼き美味しかったな。」
「そうですね。あそこのスイーツも美味しかったですよ。」
「あ、あそこのな。いつもはチーズたっぷりのパンを売ってて、それも美味しいよ。」
「わあ、美味しそう。普段の町も来たくなっちゃいますわ。」
普通男女2人っきりならそれらしい会話しそうなもんだよね。
でも俺らは食いものの話ばかりだ。
だってさっきから買って食ってばかりだからね。
っていうか、さっきから食ってばかりなのにネフィーはまだまだ食ってる。
あなた、そんな食って大丈夫なのか?
一体どこに入っていってんの?異空間?
ネフィーはニコニコと俺と会話しながらパクパクと食べている。
「あ、これ美味しい。」
ネフィーが今食べたのはチュロスだ。
チュロスといっても俺の世界の某ランドで食べられるような長細いようなものではなく、お祭り用に一口サイズにカットされたもので、紙でできたカップにいくつか入ってて串で刺して食べれるようになっている。
「イオリも食べます?」
ネフィーは何気なくチュロスの1つを串で刺して俺の目の前には差し出してきた。
・・・え?
俺は思わずチュロスとネフィーを交互に見た。
これは・・・もしかして・・・世に言うアレか?
あーん、なるものか?
ネフィーはまったく気づいてないようで、戸惑う俺に首を傾げている。
いやいやいやいや!!
こんな町の中心部の噴水のとこで!あーんなんて!
いくらなんでもレベル高過ぎだよ!
だ、だけど、ネフィーの様子を見るとそんな意図まったくなくて善意でやってるとしか思えない。
「どうぞ?」
微笑んで来るネフィー。
ええええ、まじで!?
俺、ここであーんすんの!?本気とかいてマジか!?
でもネフィーがせっかくやってくれてるから・・・しょうがないよな。
うぐぐ・・・!はずい!
「・・・じゃ、じゃあ、イタダキマス。」
こんなとこであーんなんて!
知り合いに見られたらどうなるか・・・!
誰も見てませんように!!
えーい!
パクっ
「あ!イオリー!!」
俺がチュロスを口にくわえるのと同時にそう声をかけられた。
くわえたまま・・・声のした方を見ると・・・。
そこには・・・ローエ、グラン、ロック、インカ、アン・・・。
まあ、ようは孤児院の皆がいた。
ミラレタ・・・
風精霊神「ふぉーーーー!!!」
情報『鼻血ふいてるよこの人・・・怖っ』
孤児院の皆に見られてなくてもこのふたりにずっと見られている。




