155話 我が道を行く・・・?
「いやあ、金属の精霊がめちゃくちゃオリハルコンを勧めて来た日がありまして、つってもオリハルコンなんてもらってもなんに使ったらわかんないじゃないですか。だったら防犯のためにも孤児院の建物に使った方がいいかなって思って。そしたらそれをネット・・・じゃなくて、聞きつけた木の精霊が木造部分やりたいって来て、じゃあふたりにと頼んだらあっという間にそうなっちゃったんですよねあ、あはははは。」
俺の呑気な説明を聞いてもなお、皆はまだぽかんが続いていた。
金属の精霊がめちゃくちゃオリハルコンを勧めて来た日、というのはふたりの精霊を掛け合わせることを知ったあの日だ。
実は孤児院に帰った後も金属の精霊がオリハルコンをめちゃくちゃ勧めてきて使い道のわからなかった俺は孤児院に使ってもらったのだ。
そしたらそれを生配信で見ていた木の精霊が『僕もやりたいよお!』と来たのだ。
実はこの事は誰にも言ってないからローエや子供たちはもちろん、グランもアルも知らなかった。
だから国王一家と一緒にぽかんとしてるわけですな。
俺が勝手に皆の防犯のためとやったことだから特に言うことじゃなかったし。
でも前の耐震とかを直すより大規模だったから見ごたえあったなあ。
「・・・お、お前なあ!!」
ポカッ!!
「いだっ!?」
最初にハッと気がついたグランが俺の頭をどついてきた。
さっきもどつかれたのに・・・すぐに手が出る男はモテないぞ!
「なに変なことしてんだよ!?」
「へ、変なことじゃないって!ぼ、防犯だよ!」
「防犯にオリハルコンとか世界樹を使うアホがいるか!!」
ポカッポカッ!!
「いたいっ!!助けてアル!」
どついてくるグランが怖くてアルに助けを求めるけど、アルは頭を抱えていた。
「ごめんイオリ・・・。さすがにやり過ぎだと思う。」
ええっ!?アルまでそんな殺生な!
それから追加でどつかれたのにところでグランが落ち着いてくれた。
「おい、ていうかちょっと待て。もしかしてローエや子供たちにも言ってないのか?」
「え、あ、うん。」
俺はどつかれた頭を擦りながら頷いた。
「オリハルコンや世界樹に変わったのに気づかないわけないよな。」
「多分気づいてないと思うよ。木の質感とか木目の模様とか変えないように言ったし、軋みも完全再現してるから。オリハルコンは基礎に使ってるから壁剥がさないとわかんないと思う。屋根の瓦も元の瓦に混ぜた?ような感じだからわかんないと思うよ。」
「よくそんなことしてバレてねえな。」
「まあ、バレないように時間止めてその間にやっちゃったからねえ。」
「「はあ!?」」
あ、また皆ぽかんした。
「いや、ローエたちびっくりするかなーって思って時の精霊読んで時間を止めてもらって、その間にちゃちゃっとやっちゃった。変わっていく時すごかったぜ!キラキラ光ながら孤児院全体がうねってさあ。」
「この・・・アホが――――――――!!」
「ギャー!?グランの怒り再燃!?なぜに!?」
『なぜにもクソもないと思う。』
ストーカーが珍しく突っ込んできた。
「・・・んまあ、ということで。孤児院の防犯はばっちりなんで今まで通り孤児院に居候したいです。」
俺は昭和のマンガよろしく頭にいくつもたんこぶをつくりながらそう言った。
「だが、建物はいいとして経営者と子供たちの安全はどうする?魔物や魔人が君や建物がダメならと子供たちが拐われる可能性はあるだろう?」
そういえばそうだよな。
俺に直接挑んでくるなら強くても俺が頑張って対処するつもりだけど、最初から子供たちやローエを標的にされることも十分ありそうだよな。
『その点は大丈夫だよ!ヘタレなイオリがそこを気にして自由に動き回れなくなったら面白くないから経営者と子供たちが標的にされないように敵対しそうな奴らの頭いじって情報操作したからね。』
ヘタレは余計だが、なんかこいつ何気に恐ろしいことやってんなおい。
俺は情報の精霊の言葉をそのまま国王に話した。
「うん・・・。君は・・・すごいアレなんだな。」
アレとはなんぞや?
なぜ国王様ったら遠い目をしてんの?
「王城に住ませたらどうなるか・・・いや、なんでもない。・・・聞く限り、建物も守りも十分過ぎて問題ないようだな。君らは勇者様といい関係を築けているようだし、あの魔人を翻弄して腕を吹き飛ばすほどの実力を持つなら信頼できる。そしてなにより、孤児院に住むことが勇者様の希望ならばそうしたらよい。」
なにか最初の方は本音のようなものが聞こえた気がしたけど・・・とにもかくにも!俺は今まで通り孤児院に居候でいいのね!やったー!!
「ありがとうございます!!」
「ただ、全面サポートは変わらないからなにかあったら遠慮せずに王城に来るといい。どうやら娘たちと知り合いのようだし、仲良くしてやってくれ。」
「はい、ありがとうございます!」
チラッとエティーとネフィーを見たらエティーはなぜかちょっと顔を赤くしてぷいっとされたがネフィーは嬉しそうに微笑んできた。
そして国王一家は去っていって、俺とグランはほーっと息をついた。
俺もグランも一応この国の最高権力者と話すってことで無意識に力入ってたのかも。
アルもちょっと息をついてた。
よーし!お祭りが終わったら勇者として好評されちゃうけど、これまで通り孤児院で暮らせるぞ。
そして王城も自由に出入りできるってことだよな!
これが俺が読んできたラノベだったら普通に王城に住むことになってあれよあれよといううちに爵位をもらうことになって姫に好かれて婚約、とかなりそうだけど王城に住むなんて面倒臭い!
姫に好かれて・・・はないだろうな。
だってエティーはロディオータに惚れてるし、ネフィーは人見知りだけどあの容姿だしモテないわけないだろうから俺なんてないだろう。
爵位は・・・あれ、そういえばその話ないなあ。
まあ、もらうつもりはまったくないからそのうち誰かに相談してみようっと。
ここはラノベに似てるんだけどラノベじゃないんだ!
俺は我が道を行くぞーい!
「はー・・・、イオリが勇者様だったなんて・・・。」
「話を聞いてとても強いと思ってたけど、勇者様だなんて思ってもみなかったわね。」
「ほんとね。なんか誰にでも飄々とした態度だし、無自覚で強いのに謙遜するしでなんなのこいつって感じだったけど、勇者様だなんてね。記憶を失ってたとはいえ、勇者様とはまったくイメージ違うわよね?」
「で、でも、わたくしは・・・助けてくれた時から、とても・・・かっこいいと思ったわ。魔人と戦ってる時もかっこよかった・・・。」ポッ
「た、確かに、イオリの戦ってる時の真剣な顔って、か、かっこよかったわよね。」ポッ
ボソッ「「・・・会えたりしないかな。・・・!?」」ハッ
「ちょっと、ネフィー今なんて言った!?」
「エティーこそ!?」
「一緒のことを思って一緒のタイミングで一緒のセリフを言うなんて、ほんと私たち双子ね。」
「ふふふ・・・そうね。」
「・・・あ!そういえば、イベント最終日のお祭りはあるけど、王城のパーティーはないのよね?」
「え?ええ。お祭りは「大群」のお祝いもかねているし、町は被害がなかったからやるそうだけど、魔人の襲撃のあった王城で数日後にパーティーするというのはさすがにってなったって、イオリたちに会う前にちらっとお父様から聞いたじゃない。」
「ということは、お祭りに行ってもいいってことよね?」
「え!?エティー行くの!?」
「もちろん。ネフィーはお祭りの噂を知ってるわよね?」
「!?」
「私たちとで・・・お祭り行かないか、イオリ誘ってみない?」
情報『は!?見逃せないネタが生まれた気配がする!?』




