154話 国王と話し合い
「・・・なるほど、そういうことか。」
国王テオドールはなにやら思案しながら呟いた。
あれからぽかんとしていた国王一家はハッと気がついて国王とエティーとネフィーが俺に殺到。
「そなたは一体何者なのだ!?」「ちょっとイオリどういうことよ!?」「せ、精霊ってどういうことですの!?」とか矢継ぎ早に言われて俺はあわあわしたが、冷静な王妃様とカリーナが止めてくれて国王一家はちょっと落ち着いてくれた。
それから壊れた会場をクープーデンが魔法で直すということで会場を出た俺とグランとアルは応接室へと護衛騎士の1人が案内すると言ってきて、国王一家は後程また会うということで一旦別れた。
俺は王城の魔人がいなくなったので応接室に向かうその前に草原の「大群」がどうなったか気になったので空間の精霊に草原に繋がる空間を出してもらった。
そして空間を通ったらすでに「大群」は倒された後で、魔物の遺体の処理(焼いて埋めたり)をしているところだった。
ロディオータを探したらなぜか結界内で犬まみれになりながら遠い目をしていたのでそっとしておくことにして近くにいた副団長に魔人はいなくなったと伝言をお願いした。
そして他の精霊たちも終わった~と解散していくのが聞こえて、しばらくしたらあらゆる魔法動物たちも消えるだろうとほっといて結界だけ空間の精霊に消してもらって空間を通って王城に戻ってきた。
そして改めて案内されている間に廊下をチラッと見たら壁や窓が壊されてたり血が飛び散っていたりで俺はちょっとひえっとなった。
案内してくれた護衛騎士によると殺された騎士たちの遺体や怪我した騎士たちは救援部隊の騎士たちが回収したそうで、それをクープーデンも手伝ったようで国王一家と合流するのにちょっと遅れたそうだ。
殺された騎士たちは本部に安置所があるそうで、そこで身元を明らかになったものから家族のに知らせていくとのこと。
怪我した騎士たちは本部にある診察室行きとなったが怪我人の数が多くて王城の部屋に急遽収容しているそうだ。
死んだ騎士が出たことに俺はドキッとしたが、護衛騎士によると普通に「大群」や戦争に比べて死人がそこまでで、ほとんどが怪我人というのが奇跡と言えるくらいだそうだ。
因みに「大群」の方は死人ゼロでこれまた奇跡なことだったらしい。
応接室は会場より奥にあったので魔人の影響はなくきれいな調度品や絵なんかがあって促されたソファもふわふわだ。
魔人が去った直後でバタバタしているにも関わらずメイドさんが紅茶を出してくれてそれを飲んだらやっと落ち着いて、怒っていたグランも落ち着いていた。
そしてしばらく待っていると国王一家が来た。
エティーはいつもの鎧姿から姫らしく髪をおろしてきれいなドレス姿で来て、その姿に驚いた。
だってドレス着てきれいにしてるってだけでいつもの印象や雰囲気が変わって王族らしい気品のようなものが出ていて、まさにお姫様!という姿だったからだ。
グランもアルもそう思ったのか俺と同様にエティーを見て驚いていた。
「な、なによ!アホみたいな顔してガン見してきて!」
「あ、いつものエティーだ。」
エティーはちょっと恥ずかしいのか顔を少し赤くしていつものツンを発動させて俺はほっとした。
俺たち3人が並んで座っても余裕のあるでかいソファの対面にあるでかいソファに国王夫婦が座って、国王夫婦の座るソファの横に2人がけくらいのソファがあってそこにエティーとネフィーが座った。
因みにカリーナは他の護衛騎士たちの安否確認とかでいなくて、クープーデンはさっそく魔法で王城を修繕しているそうでたまにゴゴゴとかバリバリガシャーンとか聞こえてきて逆に暴れてるんじゃないかと心配になってくる。
俺は散々「思い出した」と言ってしまってたし目の前で精霊と会話してしまったので、とりあえず思い出した記憶の内容の一部と精霊と話せることだけを話すつもりだった。
記憶の内容も【能力】など全部はさすがに王族とはいえ話す必要はないかなと思ったのだけど、思い出した記憶の内容の一部を全部っぽく話していると「そもそもヴォルデマル神となぜ会ったのか」という質問をされてあれよあれよといううちに俺が異世界から来たのがバレて狭間の世界の存在もバレた。
でも記憶の内容の全部や【能力】が4つあったり「契約」もしてたり「纏技」を使えることは言わなかった。聞かれなかったからね!
そうして俺の話をしたところで国王が上の冒頭の呟きをしたわけだ。
『さて、ここからが問題だ。人間の国王はこれを聞いてどうでるか、だね。』
どうでるか、とはどういうことだろう?
小さく首を傾げていると考え込んでいた国王がこっちを見た。
「君が異世界からヴォルデマル神の御力によって来たというのは信じよう。そうでなくてはその強さと精霊と話せる【能力】は説明がつかないからな。」
あ、精霊と話せるのが【能力】だという説明は特にしてなかったけどそう判断したようだ。
「そうなると君はヴォルデマル神が導いた新たな勇者様ということになる。そうなれば君が勇者様だと公表しないわけにはいかぬ。・・・どうやらあまり目立ちたくないようだがな。」
俺は公表、というフレーズを聞いた瞬間にうげっという苦い顔をしてしまったのを国王は見て苦笑しながら続けてきた。
「これは勇者様には申し訳がない公表しないわけにはいかぬことだ。長年勇者の剣のイベントをやってきてしまっているし、今回をもってイベント終了になるのに説明をしないわけにはいかないからな。」
・・・んまあ、そうかあ。公表しないわけにはいかないよねえ。
国王と謁見するまでハンターたちと商人たちに追いかけ回されていたのが激化しそうでげんなりするんだけどなあ。
でもしょうがないんだよね。
「・・・公表、わかりました。」
「礼を言うぞ。とりあえず、「大群」を退いた後もあって町や王城が落ち着かない数日間はイベントは中止することとなった。まあ、剣もないしな。最終日の祭りだけは「大群」を退いた祝いとして開催することにするゆえ、その最終日を過ぎてから勇者様の公表を行いたいと思っている。勇者様についてどこまで公表するかについてはこの国の宰相に会って打ち合わせてもらえぬか?宰相だけには今聞いた内容は話すが、それ以外は口外しないと国王として誓おう。もちろん王妃も娘たちもあの場にいた者たちにも箝口令をしく。」
「わ、わかりました。それでお願いします。」
俺は何度も頷いた。
「そして、勇者様とわかった以上、国としては君の保護と全面サポートする。ついては今までいた孤児院ではなく王城に住んでもらうことになる。」
「えええぇぇぇっっ!?」
俺はすっとんきょうな声をあげてしまった。
「し、城に住むのはちょっと・・・。」
王城に住むなんてなんか堅苦しいというか、窮屈そう。
それこそ食事するにも何をするにも厳しいマナーがあるだろうし、住むことになったらいくら異世界人の俺でもそれを守らないといけないとかなりそうだし。
まあ、色んなラノベ読んだイメージとして俺がそう思ってるだけかもしれないけど、騎士団の依頼で王城に寄ったりネフィーを訪ねて来たりしててなんとなくイメージ通りな感じがするんだよな。
文化の違う異世界で育った俺に今さら覚えられるとは思えない。
すぐ覚えてさらっとできるほど記憶力よくないし要領よくないしなあ。
まあ、空気は日本人だから読めるけど。
つか、なんてったって俺は孤児院「未来の家」の暮らしをとても気に入ってる。
だってローエの料理めちゃくちゃうまいし子供たちとじゃれるの楽しいし、なにより広間で皆で集まって冗談を言いあってあははと笑ってるのがとても落ち着くんだ。
孤児院の皆が俺の事情を知っているというのも大きいし。
「だがな、そうは言っても勇者様の身にもしものことがあっていかぬ。もしまた魔人か魔物が攻めてきて今度は勇者様のいる孤児院を壊そうと標的にする可能性は高い。」
「えっ!?・・・あ、それは大丈夫です。壊れないです。」
「「え?」」
皆が首を傾げた。
「孤児院の木造部分、全部世界樹ですから。あ、中の基礎とか古くなってたからオリハルコンにして屋根の瓦もオリハルコン混ぜたのにしたんでよっぽどのことがない限り壊れないですよ。」
皆ぽかん。




