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ハザマ~高校生男子は異世界で精霊に愛され無自覚無双~  作者: 木賊
第6章 勇者の剣と記憶
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147話 屋敷に寄り道

「ロディオータさーん、援軍作ってきた。」

「え?――――――・・・・・・。」


ロディオータはこっちを振り返ってたくさんの動物たちを見て無表情になった。

唖然を通り越したようなリアクションで目もなんだか遠い目をしているぞ。

「な、な、なんですか!?これはー!?」

副団長のリアクションで騎士たちハンターたちがこっちに気が付いてぽかんとした。


「えーと、この動物たちが魔法で作った援軍。なんか魔法にない掛け合わせもあるみたいだけど気にせず使ってやってよ。騎士たちハンターたちと一緒に戦ったり守ったりするけど、ロディオータさんの指示にも従うように言っといたから。」

「うん、ちょっと待ってくれる?魔法にない掛け合わせが気になり過ぎて頭にあんまり入らないよ。」

「いやあ、そこはお気になさらずでお願いします。」

ロディオータは頭を抱えた。


「皆さん!配置についてー!」

俺が動物たちに呼びかけると、動物たちはそれぞれ散ってった。

騎士たちハンターたちを守るように周りに囲んで鳥系は空中で旋回している。

騎士たちハンターたちは動物たちに戸惑っていたけど、俺の仕業とわかったらなぜか「やっぱりイオリか」「イオリならしょうがない」と口々に言って動物たちを受け入れていた。


「よし!これで多分心配ないな。んじゃまあ、アルのとこ行って王城に行こう!」

俺が意気揚々と言うとグランは呆れたような顔でやれやれとため息をつきながら頷いた。

「そうだな。・・・お前に自重と無自覚を教えるのは無理かもしれない。」

「ん?なんの話?」

「いや、なんでもない。それより、アルのところに行くんだろう?急がないといけないだろ。」

「んや?そんなに急がなくて大丈夫だよ。」

「あ?王城を心配してなかったか?ほら行くぞ。」

「あ、うん。ロディオータさん!じゃあ、後は頼みます!」


俺とグランはロディオータさんにひと言いって離れて町の方へとしばらく走った。

そしてある程度離れたところで俺はグランを止めて立ち止まった。

「どうした?アルのところに行かねえのか?」

「行くよ。空間の精霊に繋げてもらって。」

『やっと僕の出番だねー!』

実は空間の精霊はずーーっと俺の側にいたのだ!


「グラン、アルの屋敷の場所を頭に思い浮かべて。空間の精霊、こことグランの思ってるところを繋げられそう?」

『う~~~ん・・・!』

空間の精霊がグランの頭の周りをぐるぐる回っている感覚がした。

『よし!大丈夫、繋げるよ!えいっ!』


空間の精霊がそう叫ぶと人1人分くらいの大きさの縦長の空間の渦が目の前にできて、向こう側はきれいな屋敷が見えた。

2階建てでレンガ造りの壁に青い屋根で広そうな庭に高い塀が見えた。

屋敷は孤児院と同じ2階建てながら屋敷の方がでかくて頑丈そうだ。

「グラン、あの屋敷で間違いない?」

「あ、ああ・・・。」

グランはなぜか白目を剥きそうな顔になりながら頷いた。


そして空間を通り抜けてきれいな屋敷の門の前に立つ。

呼び鈴がないので昭和の子どもよろしく「○○くーんあーそびーましょー」と呼び掛けてやろうかと思っていると屋敷から執事っぽい人が出てきた。

王城で見た何人かの執事よりかは燕尾服もシンプルでアルよりちょっと年上くらいの若さの執事だった。

「すいません、アル・・・フレッドさんはいますか?俺ら、仲良くさせてもらってるイオリとグランって言います。」

「アルフレッド様ですね、少々お待ちください。」

執事はそのまま慌てて屋敷の中に入ってって、ほどなくアルが慌てて門にやって来た。

「グラン!イオリ!」

「やあ、アル。」

アルは門を開けて出てきた。


「ごめんよ、父がいるから屋敷の外で話を聞くよ。どうしたんだい?「大群」に参加してたんじゃなかったのかい?」

「うん、ちょっと事情があって。」

俺はかいつまんで事情を説明した。

王城に魔人が出たという最新情報は当たり前だが一子爵が知ってる訳がなくアルはものすごく驚いた。

「は!?王城に魔人が!?そんなことより、結界を張ったり精霊を掛け合わせて魔法にない動物を作ったとは!?っていうかこの空間はもしや!?」

「ああ、うん。これでアルのとこに来たんだ。ほら、空間の向こうに草原が見えるだろ?」

「ほおおおお~!」

「おいおいアル。王城に魔人が出たのをそんなことよりですまして感動すんな。」

アルの精霊への食いつきに乗った俺に対してグランは冷静に突っ込んでいた。


その冷静な突っ込みのおかげかすぐにアルは真面目になった。

「そ、それで、イオリとグランと僕で王城に向かえって精霊が言ったのかい?」

「うん。まあ、情報の精霊は基本的にいつもウザいけど信用はできると思う。このメンバーもなんか考えがあるみたいなんだ。」

『え、僕のことを基本的にいつもウザいと思ってたのかい!?』

説得するのについうっかり本音を言ってしまったぞ。

いやー、うっかりうっかり。

『絶対わざと言ったね!?』


「で、でも、魔人はとても強力だと言われているのに、役に立てるかどうか・・・。」

アルは不安そうにそう呟いた。

「俺はグランとアルは強いとおもってるから大丈夫だと思ってる。情報の精霊は実力もあるけど【能力】も持ってるからとか言ってた。」

「ええっ!?ぼ、僕の【能力】を情報の精霊は知ってるのかい!?」

『へへん!俺には知らない情報などない!』

ドヤアをしているアホは無視だ。


「【能力】持ちだって聞いたけどなんの【能力】かは聞いてないけど、情報の精霊が推すくらいだから役に立つと思うんだ。魔人とかワケわからないのと俺も会いたくないけどさ、アルも一緒に会ったネフィーのことも心配だし。一緒に様子見に行くくらいでどう?」

「いやいやいや、王城に魔人がいるとこに行く誘い文句としては軽すぎるだろ。」

「だって王城に最強の魔法使いのクープーデンいんだよ?それに王族って護衛騎士たちが守っているんだよ?護衛騎士長のカリーナさんに会ったけど強そうな盾を持ってたし、俺たちが行ったところで感がなくない?だったら王城に行けないロディオータさんの代わりに様子を見に行って報告してあげるくらいの気持ちでいいんじゃないかなあと思って。っていうか俺としてはそれくらいの気持ちでいる。」

『ええっ・・・、なにこの子、達観し過ぎじゃない?こういう時、なんやかんやで君が戦う展開になるもんじゃないのかね?』

そんなどっかの漫画やラノベじゃあるまいし、そんな展開あるわけないよ、ははは。


「そ、そっか・・・。まあ、王城の様子も気になるし、イオリとグランが一緒なら心強いしわかった。ついていくよ。あ、でもちょっと待ってて。」

アルはそう言って屋敷の中に戻っていってしばらくして出てきた。

どうやら一緒にハンターやったときに装備していた剣を取りに行ったのと、屋敷の人に外出してくると一言いいに行っていたようだ。

「ごめんね、お待たせ。さあ、行こうか。」

「おう。・・・空間の精霊、ここと王城を繋げられる?」

『できるよー。』

『おっと、空間の。魔人のいるところは特定できているからそこに直接繋いでくれ。場所はゴニョゴニョ・・・』

なにやら情報の精霊は空間の精霊に耳打ちして(渦の姿の空間の精霊に耳があるのかはよくわからん)、空間の精霊はそこに繋げた。


空間の先がどうなっているのかわからず、俺が恐る恐る踏み込むとそこには・・・。



「おう!イオリ、なんじゃわざわざ来たのかのう。」



そこにはボコボコにされ床に突っ伏している魔人とその魔人の上に球体ごと乗っている無傷のクープーデンの姿があった。




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