閑話 因果応報される男たち
連続投稿の閑話2つめです。
ざまぁっぽくなりました。
その頃、町の側の草原にて「魔物の大群」と対峙する騎士たちハンターたちの中に彼らはいた。
「なんだよ!聞いてた話と違うぞ!」
アルドはイラつきそうぼやいた。
「そうよ!魔法使いの私が活躍できるはずなのに!」
ブレンダは悔しそうに叫ぶ。
「俺も防御で見せ場を作れると聞いたぞ!」
ハスウッドは腕を振り回して怒った。
「弱い敵ばかりと聞いたのに違うし!」
コーグも頷きながらむくれている。
そう、アルドたちがいた。
彼らパーティは今回の「大群」の話を聞いて自ら志願して参加したのだ。
彼らはレベルCで基本的にレベルABが「大群」に参加できるのだが、希望すればレベルC以下でも自己責任で参加することができる。
前回の「大群」の話を他のハンターから聞いていたアルドたちは怪我の危険性もほとんどないのに大きな依頼なため報酬が多く出ることもあって参加した。
それだけではなく、「大群」という大きな依頼に関わることで自分たちがこの町での知名度を上げたり自慢できるものがほしかったのだ。
レベルB試験でリリアとフィルに言われた数日は大人しくしていた。
その時は確かに言われたことにショックを受けて落ち込んでいたのだが、日が経つと「あんな奴らになにがわかる」と思うようになった。
言われたのが年下の小娘と小僧。
しかも魔物と戦ったこともない貴族。
そいつらになぜごちゃごちゃ言われなければならないんだ?
俺たちは強くなるために嫌な依頼だってやったし泥だらけになって地に這いつくばって討伐やって、苦労してレベルCまで来た。
それを自慢してなにが悪いんだ?
そうだ、俺たちは間違ってない。
だって今までこれでやって来たんだから。
そうして数日で徐々に元に戻ったアルドたちが次のレベルB試験で受かるにはと話し合った結果、大きな依頼に参加することで知名度を上げることだった。
そうしたら試験で注目されるから、そこで戦いを見せつけたら受かるだろうと思ったのだ。
前回は初めて見た砂漠や砂漠の魔物に戸惑ってしまったが一度見たからにはもう遅れはとらないはずだ。
そういう思惑があって大きな依頼を探していたところに「魔物の大群」の知らせが町に届いてギルドで参加者を募り、内容や前回のことを聞いて「これは楽に知名度を上げられる」と思いアルドたちは参加したのだった。
ブレンダがサイクロンの魔法をかけるメンバーに入ったがゴンゴン魔力はなくなっていくのに魔物はサイクロンに近づいてこない。
ハスウッドは前線に構え、コーグが後ろで槍を構えていたのだが全然魔物が来ない。
コーグの後ろで様子を伺っていたアルドがブレンダの近くにいたので降ってくる岩を剣で叩き割って防いでいたがいくつか欠片が当たって怪我を負っていた。
ほどなく結界が現れて岩の心配はなくなったが聞いた話と違うとアルドは怒りだして、それに続くように3人も文句を言い出した。
ブレンダは魔力が半分以下にまで減ったのでサイクロンを勝手にやめた。
「おい、どうやら作戦変更らしいぞ。」
周囲のハンターの誰かがそう言っていたのが聞こえてきた。
「魔物が対抗策をこうじてきた以上は変更はやむ終えないだろうな。でもどうすんだろうな。」
「やっぱり・・・通常通り戦うんじゃねえか?」
「でもキュクロプスとかタロスとか結構倒すの厄介だぞ。」
ハンターたちはそうヒソヒソと話し、アルドたちは楽できると思っていただけにげんなりした。
「なんだよ、そうなら最初から言ってくれればいいのによ。」
「そうよ、そうじゃなかったらこんなに魔力使わなかったのに。」
「でもまあ、俺らにかかれば楽勝だよな。」
「ああ、俺らだったらすぐにキュクロプスとかいうのとかタロスとかいうの倒せるよな。」
「・・・へえ、そうなのか?」
アルドたちが口々に言うのを聞いていた隣のハンターが話しかけてきた。
20代の黒髪のなかなかのイケメンのハンターで、両手にナイフを持っているところから素早さ重視の盗賊のハンターのようだ。
無表情ではあるが興味があるのかアルドたちを見てきた。
「おお、俺たちはもうレベルBの実力はあるしキュクロプスとかいうのとタロスとかいうのはレベルBなんだろう?余裕だな。」
ハハッと笑うアルドにハンターはそうかと感心しているように呟いた。
「その口振りでは、キュクロプスとタロスを知らないのか?」
「俺たちは別の国から来たから聞いたことねえな。でも見た感じキュクロプスは単なる脳筋でタロスはヒョロヒョロの人形みたいだし、俺の剣で切れるな。」
「ほう、別の国から来たハンターか・・・もしかして、この間レベルB試験を受けたか?」
「え?ああ、受けたぞ。あんたがなんで知ってるか知らないが、あれは受け損だったな。年下の貴族のガキどもにいちゃもんつけられて落とされたんだ。」
「ここの国の貴族って大丈夫か心配になったわ。私たちに理不尽なこと言ってきて。」
「ふうん。・・・理不尽、か。」
ハンターは呆れたような顔をして呟いたのだが、アルドたちは気づかなかった。
「おーい、皆!聞いてくれ!作戦変更だ!」
ギルマスがハンターたちに駆け寄ってきてそう叫んだ。
どうやら騎士団長と話し合って決まったことを伝えるようだ。
「空間魔法とサイクロンで魔物を帰す作戦は対抗策をこうじられたから中止だ!空間魔法を解くからサイクロンやってる魔法使いも解いてくれ!わざわざサイクロン出させたのにすまん!そしてこれからは通常通り向かってくる魔物を倒していくことになった。いいか!レベルの高い魔物もいるからそういうのはレベルAに任すようにして無茶はするなよ!」
「「「はいっ!」」」
ハンターたち全員が気合いの入った返事をして、それぞれ武器を手に取った。
「あと、この結界は・・・まあ、皆わかってると思うがあいつの仕業だ!中にいれば安全だそうだから怪我を負ったり魔力がなくなったらここに避難するように!」
「「「はいっ!」」」
こんなぶっ飛んだことをできるあいつが誰かについてはハンターたちもわかっているのでギルマスはあえて言わなかった。
やがて空間魔法はすうっと消えてサイクロンを唱えていた者たちは魔法を解いた。
「なあ、あんたら。」
隣のハンターがまたアルドに話しかけてきた。
「魔物と戦っていいってことになったんだから、あんたらが先陣きったらどうだ?」
「え?俺らが?」
思ってもいない提案にアルドは戸惑った。
「だって楽勝とか言うくらい強いんだろう?あんたらが倒してくれたら余計な被害がでなくてすむ。」
「は?な、なんで俺たちが・・・」
「倒してくれたら皆すげーってなんじゃねえか?俺はとてもじゃないが迂闊に近づけねえな。でもあんたらならできるんだろ?だってキュクロプスはただの脳筋でタロスはヒョロヒョロの人形なんだもんな?」
そのハンターの言葉の倒しくれたら皆すげーってなるというのにアルドたちはものすごく惹かれた。
なぜなら今回の参加は知名度目当てで参加したアルドたちにとっては願ってもないチャンスだったのだ。
しかもさらに自分たちの自慢のひとつになる。
「わ、わかった。やってやろうじゃねえか!」
アルドたちはそう言って「大群」を見据えた。
魔物たちは空間とサイクロンが消えたことがわかったようでキュクロプスが出した土の壁をキュクロプス自身が叩き割っていて魔物たちはゆっくりとこちらに近づいて来ていた。
「「「・・・。」」」
倒せると豪語して今までの魔物との戦いの経験からそれなりに自信があったが、迫ってくる「大群」のさすがの迫力に自信満々だったアルドたちに躊躇が生まれた。
魔物との戦いの経験があるからこそ、肌で感じる雰囲気や感覚で敵わない相手かもしれないと察した。
「ん?行かねえのか?もしかして威勢だけか?」
ハッと鼻で笑われた気がしたアルドはイラッとした。
「いるよな、そういういざとなったらヒヨる奴。」
「いるいる。まあ、無理しなくていいと思うけど。」
周りのハンターたちもヒソヒソと話しているのが聞こえてきた。
実はアルドたちの文句に周りのハンターたちは辟易していた。
そうでなくてもアルドたちのことはハンターたちの間に地味に知れ渡っていたのだ。
依頼の文句を大声で言い話しかけたら常に自慢してきて、揚げ足を取るし上から目線、その割には実力がそこまで高くない。
周りのハンターたちはアルドたちが参加していることにげんなりして、標的にならないように関わらないようにしていたのだが、明らかに煽っているハンターとアルドたちの会話についつい耳を傾けわざと聞こえるようにヒソヒソ話して煽るのを助長していた。
「はっ!ブレンダ、ハスウッド、コーグ!やってやろうぜ!俺たちがいかに実力があるか見せてやろうぜ!」
「「ああ!」」
「ええ!」
アルドは魔物たちに向かって走りだし、その後をブレンダたちが続いた。
それにぎょっとしたのはなにも知らないギルマスだ。
急にハンターが飛び出して行ったのだから驚かない訳がない。
「あ!?あいつらなにやってんだ!?俺は向かってくる魔物を倒していくって言っただろうが!魔法や弓矢で遠距離攻撃して数を減らそうとしてんのにできねえじゃねえか!!」
ギルマスは怒ってすぐさま戻るように大声で「戻れ!」と叫ぶが、アルドたちは聞こえていないのか無視しているのかズンズン走って行っている。
アルドたちは自分らが先頭に立って後ろからハンターたちがついてきてくれていると勝手に思っているが、実際アルドたちに続くハンターは1人もおらず皆呆れたような冷めた目でアルドたちが突撃していくのを見ていた。
ほどなく「大群」にぶつかったアルドたち。
アルドはキュクロプスのこん棒で殴られて吹っ飛ばされ内蔵をやられた。
ブレンダは空から襲ってきたハーピーの足の鉤爪に髪の毛を捕まれて空中で振り回され骨折と全身引っ掻かれた。
ハスウッドはタロスの灼熱となっている青銅の体に抱きつかれて全身火傷を負う。
コーグはスケルトン集団からボコボコにされて骨折と全身打撲された。
幸いにもやれやれといった感じのハンターたちにすぐさま救助されて、結界内で応急措置の回復魔法をかけてもらって治療院に運ばれた。
後日、回復魔法とポーションで数日で完治した彼らだったが醜聞がハンターたちの間ですでに出回っていてどこに行っても笑われた彼らはすぐに町から去っていったという。
「おーい、グラン。ちょっと用事が・・・って、どうした?そんな呆れた目を魔物の方に向けて。」
「ちょっとアホを煽ってただけだ。お前が話してたアホどもは思ってた以上にアホだったぞ。」
「?」




