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ハザマ~高校生男子は異世界で精霊に愛され無自覚無双~  作者: 木賊
第6章 勇者の剣と記憶
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135話 レベルB試験の結果

ズズズ・・・と頭の吹っ飛んだサンドワームは力なく砂地の上に力なく倒れ、辺りはしーんと静まりかえった。


俺も含めた全員がぽかんしているからだ。

俺はまさか石をぶつけただけで頭パーンするなんて思ってもみなかったから驚いて、俺以外は俺の突然の行動とその結果がとんでもない結果になったことに呆気にとられたというやつだ。

『やー!さすが我らがイオリだねえ!!レベルCを石コロで1発なんてさ!あ、もちろん生配信してるよ。いいねとコメが殺到してるよお!』

あ、約1名ぽかんしてないやつがいやがりました。

俺の肩の上で興奮しているストーカーだ。

っていうか、いいね?コメ?

待って、超有名動画サイトそのまんまか!

なんでお前そんなこと知ってんだ!?


「えっ・・・と、今のは・・・?」

俺がストーカーの言葉に動揺している間に我に帰った男性ハンターに声をかけられた。

「えっと、加勢のつもりで軽く石投げたんすけど・・・すいません。ははは」

俺は苦笑してそう言うと「あれで軽く・・・?」と戦慄されたような気がするが気のせいだろう。きっと。

「ど、どっちにしても助かったわ。ありがとう。」

女性ハンターがそう言ってくれて、まあ結果オーライだったということにしよう。


ガサガサガサ・・・


サンドワームの体は砂地に埋めた方がいいかなという話をしているとそんな音がして、見ると砂地に赤いサソリがいた。

「わっ!サソリ!」

『レッドスコーピオンというレベルDの魔物だよ。』

50センチほどで赤い体に大きな爪で、威嚇してきているのか「シュー!」と鳴いている。

その鳴き声に反応したのか、わらわらとレッドスコーピオンが現れて5匹ほどになった。


『レッドスコーピオンは砂漠によくいる魔物だね。因みにサンドワームの中型や小型もよくいるよ。』

よくいる!?

え、でも俺がこの砂漠を歩いてた時はまったく出会わなかったぞ!?

もしかして奇跡的に出会わなかったのか?

あの時出会ってたら1発であの世行きだったに違いないな。


レッドスコーピオンはレベルも低かったので俺と2パーティで1人1匹ずつとっとと倒して砂地に埋めて、サンドワームも埋めた。

それから町に帰ろうとなって帰りも配置は同じで俺は右側、2パーティは左側、アルドたちは後方を護衛しながら帰った。



帰りは特に魔物が出ることもなくスムーズに帰ってくることができた。


そして無事に町の東側に着くと、元々のリア充の護衛の方数名が待っていてくれていた。

「今日はありがとう。」

「おかげで安全に帰ってくることができましたわ。」

フィルとリリアは馬車から出てきて俺たちに一礼してそう言って来てくれて、俺たちも慌てて一礼した。


「実は私たち、試験の合否の判断を任されていたんですの。」

リリアは急にそんなことを言ってきた。

やっぱり2人は試験官だったんだ。

アルドたちも2パーティもわかっていたようでそれに驚くことはなかったが、それを打ち明けてくるのに少し驚いているようだった。

「本当はこれからギルドに向かって報告する流れなんですが・・・合否の判断を先に皆さんに言っておきますね。」

え、そんなことしていいの!?

ギルマスに怒られても知らないよ?

リリアはニコニコ笑顔のまま、言い切った。


「アルドたちパーティ以外、合格と報告します。」


「「「は!?」」」

「「「えっ!?」」」

は!?はアルドたちのぽかんとした声で、えっ!?は俺と2パーティの本当に!?という意味での声だ。


「え、な、なんでなんですか!?」

「俺たちのことすげえって褒めてくれてたじゃないですか!?」

「私のことも憧れるとか言ってたじゃないですか!?」

アルドたちは慌てて笑顔のリリアにそう言っている。

リリアは動揺する彼らにうふふと笑って何でもないように言った。

「アレはあなた方が褒めるとどんな反応をするかという、試験の内容の一部ですわ。」

「「「はあ!?」」」


「褒めた内容は本心ですけど、でも注目していたのは言った後の返事や反応でした。もし褒められて素直に受け取るようではハンターとしては少々浅はかでありますし、それにより調子に乗るようなことがあったら気の緩みを生むことになりますから護衛中では油断の元になりますから、減点対象でしたわ。」

「君たちは褒めたら明らかに得意気になっていたね。まあ、褒める前から護衛としての動きはあまりよくなかったけどね。サンドワームが出た時に護衛として壁になってくれたのはそこの2つのパーティだったし、馬車に避難するように言ってきたのはイオリだった。君たちはその間も、その後にレッドスコーピオンが出てきても見ているだけだったね。」

リリアの言葉にフィルも追撃した。


「そ、そんなことは・・・。一応、俺たちも動いてて。」

「動いていた?どこがかしら?」

アルドは苦い顔をしながらもなんとか言い訳をしようとしていたら、容赦なくリリアがピシャリと言った。

あれ、よく見たらリリアの笑顔が怖い。

「2つのパーティはよく動いていて、行きの魔物が出た時も馬車の窓から見てましたが危なげなかったわ。これでも何回もこうした試験を任されてますから魔物とハンターが戦う姿は何回も見てますからわかりますの。なのになぜあなた方はあの方々に文句を言っていたの?後方にいたのに加勢もせずに見ているだけだったのに。」

あれあれ、リリアさん、キレてますか!?


「い、いや、俺たちも加勢しようかって思ってたら、戦い終わってて・・・。」

「あら、だったら「いつまでやってるんだ」とか文句言ってたのはおかしくないかしら?あなた方が加勢する前に終わらせたのだったら十分早いと思うのが普通ではなくて?」

「っ・・・。」

恐ろしいくらいにリリアが言い負かしていて、内容が正論だけにアルドたちは言い返すことができずにぐっと苦虫を噛み潰した顔をしたり、反論の言葉も思い付かないように俯いていたりしている。

どうやらアルドたちが文句言っていたのをリア充たちは知っていたようだ。

そういえば、たまにチラッとこっちを見ていたのは気づいていたけど、文句も聞いていたなんてわかんなかったな。


「そもそも10年以上ハンターやっていることを誇ることは悪いことではないしその年月にプライドがあるのもわかりますわ。でもそれを他人と比べて見下すというのはおかしいと思います。だってあなた方と他人とは違うもの。他の人にも色々あってそれぞれのペースで生きているのだから比べるのがおかしいですわ。」

「他人を見下して優越感に浸るのは誰でもできるけど、実際にそう言う言動して人を傷つけてなんになるんだい?あなた方の10年以上ハンターやっているという価値が下がるだけじゃないか。」

リリアに続いてフィルまで正論を言ってきて、アルドたちはあっという間に縮こまっている。

「いや、俺たちは人を傷つけるつもりはなくて・・・、ただ・・・アドバイスを・・・。」

「アドバイスならもっと言い方があったと思うが?君らに言われてしょげた彼らをイオリが励ましてたけど、よっぽどイオリの方が大人だよ。」

ええっ!?俺が2パーティを励ましてたの見られてたの!?

ぎょっとしてフィルを見たらニコッとされた。


リリアはコホンとひとつ咳払いをした。

「言動に護衛としてあまり動けてなかったことなどから今回の試験合格は見送ったというわけですわ。そして合否を先に皆さんに言うことにしたのは、これで会うことはないだろうあなた方・・・アルドたちにどうしても直してほしかったからあえて言いました。あなた方が自らの言動を反省すれば、次は合格できると思いますから。」

「若輩者ながら言わせて頂いたけど、君たちに響くことを願っているよ。」

フィルとリリアは一礼すると馬車に乗り込んだ。

そして馬車はゆっくりと動き出して、ちゃんとした護衛に囲まれて町の中に去っていった。


ものすごい空気の中、なんとなく解散の空気を察知した俺は2パーティにお先の挨拶をして孤児院に帰ることにした。

2パーティもすぐその後に町の滞在先の宿屋にそれぞれ向かったようで、アルドたちはしばらくその場に立ちすくんでいたそうだ。



そして後日、ギルドにいくとレベルB合格と言われてさらに偶然2パーティに会って、男女それぞれコンビだったのがあの後意気投合して1つのパーティになったことを知らされた。

しかも男女それぞれコンビ同士でカップルになったらしい。


く、くそぅ!リア充爆発しちまえー!




ということで、キレたのは意外や意外なリリアでした。


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